トラの「代打の神様」が適応力の高さに太鼓判 森下翔太が侍ジャパンの切り札になる

阪神との強化試合で、中前に2点適時打を放つ森下翔太。侍ジャパンの代打の切り札となりそうだ=3月3日、京セラドーム大阪(中井誠撮影)

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で連覇を目指す野球日本代表「侍ジャパン」にとって強力な切り札となりそうだ。6日の1次リーグ初戦となる台湾戦(東京ドーム)を前に、日本の井端弘和監督(50)は森下翔太外野手(25)=阪神=の起用法について「ランナーを置いた場面で代打で使いたい」と言及したのだ。

代打で2点適時打

侍ジャパンの練習中、井端弘和監督(右)と話す森下翔太=2026年2月26日、バンテリンドームナゴヤ(甘利慈撮影)

森下は大会前最後の強化試合となった3日の阪神戦(京セラドーム大阪)で、3-0で迎えた七回2死二、三塁から9番・中村悠平(ヤクルト)の代打として打席へ。阪神のチームメート、湯浅京己(あつき)に2球で追い込まれながらも、4球目の外角直球を中前にはじき返した。チームの勝利を決定づける2点適時打に「2ストライクからでも簡単に終わらないというのは自分の武器。初球からいきますけど、追い込まれたときには何かを起こして、今日みたいなタイムリーを打てたら最高の結果かなと思います」と声を弾ませた。

侍ジャパンの練習中、阪神で同僚の佐藤輝明(右)とウオーミングアップする森下翔太=2026年2月26日、バンテリンドームナゴヤ(甘利慈撮影)

指揮官は「ランナーを置いた場面で代打で使いたいなと思っていた。その通りに(代打で)出たところで何となく(起用の)イメージが湧いたのかなと思っています。本番でもどんな当たりでも打ってくれれば」と話し、森下を1次リーグのみならず、一戦必勝となる準々決勝以降(米フロリダ州マイアミ)の戦いでも、チャンスで代打起用する考えを示した。

勝負強い打撃で〝代打の神様〟とあがめられた阪神・八木裕=1999年5月8日、横浜スタジアム(春名中撮影)

バースに次ぐ勝利打点20

勝負強さは折り紙付きだ。昨季セ・リーグ史上最速の優勝を果たした阪神では、主に「3番・右翼」で全143試合に出場。打率2割7分5厘、23本塁打、89打点といずれもキャリアハイの数字を残した。特筆すべきは、1985年のバースの22に次ぎ球団史上2位となる勝利打点20をマークしたことだ。

阪神のチームメートで同じく侍ジャパンに選出された佐藤輝明内野手(26)は、過去5シーズンにおける代打成績が21打数1安打11三振、打率0割4分8厘と振るわない。3日の阪神戦では、六回に大谷翔平の代打で登場したが3球三振。次打席も一邪飛に倒れた。阪神では今季も3、4番を担うとみられる両者だが、代打としての適応力は対照的といえる。

阪神OBで〝代打の神様〟と呼ばれた前日本ハム打撃コーチの八木裕氏は、2人の違いをこう分析する。

「森下は途中からの出場でも、試合の生きている空気や流れに飛び込んでいける能力があるのでしょう。打席に入る姿が生き生きとしてみえる。逆に佐藤は試合の流れに入っていくときに、誰もが感じる異様な緊張感にうまく適応できていないように見える。違和感を覚えながら打席に入っていることが見受けられる」

代打への適応能力は経験さえ積めば磨かれるのだろうが、WBCは決勝まで勝ち進んでも7試合しかない短期決戦だ。これから経験を積むだけの時間的な余裕はない。つまり、代打で起用されても試合の流れに乗っていける森下の異才ぶりは、日本にとっては得難い武器となる。

難敵ぞろいの1次リーグ

1次リーグ突破は間違いなし…といわれる侍ジャパンだが、初戦で戦う台湾には国内組で臨んだ2024年のプレミア12決勝で敗れた過去がある。徐若熙(シュールオシー)(ソフトバンク)ら強力な投手力は侮れない。また、第2戦でぶつかる韓国も打線に破壊力があり、一筋縄ではいかない相手だ。

井端ジャパンの米マイアミ行きを決めるのは、シーズン中とは違って一振りに懸ける「代打・森下」のバットかもしれない。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。