WBC連覇ならず、課題山積の侍ジャパン 代表選考、国際ルールへの対応に一考の余地あり

ベネズエラとの準々決勝で、九回に内野フライに倒れ、最後の打者となった大谷翔平=2026年3月14日、ローンデポ・パーク(松永渉平撮影)

米マイアミの地で、佐藤輝明内野手(27)と森下翔太外野手(25)=ともに阪神=は大きな自信を得る一方、日本球界は多くの宿題を突き付けられました。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2連覇を狙った日本代表「侍ジャパン」は15日の準々決勝でベネズエラに5-8で敗れ、6大会目で初めてベスト4を逃しました。三回に同点適時二塁打を放った佐藤、一時は勝ち越しとなる3ランを放った森下は将来の糧を得ましたが、日本代表にとってはさまざまな問題点が浮き彫りに…。単なる采配批判に終始していては次も勝てませんよ。

ベネズエラとの準々決勝で、三回に勝ち越し3ランを放つ森下翔太=2026年3月14日、ローンデポ・パーク(福島範和撮影)

虎戦士2人は躍動

ベネズエラとの準々決勝で、三回に勝ち越し3ランを放った森下翔太(右)を迎える佐藤輝明=2026年3月14日、ローンデポ・パーク(福島範和撮影)

世界の大舞台で虎戦士2人が躍動しました。阪神贔屓(びいき)のコラムゆえ、彼らのプレーには〝盛った〟表現が多くなるのですが、今回ばかりは佐藤、森下が躍動した…と大いに胸を張ってもいいと思います。

15日に米マイアミのローンデポ・パークで行われた準々決勝。1次リーグC組1位の日本はD組2位のベネズエラと対戦し、5-8で逆転負けを喫しました。しかし、1点を追う三回には、大谷翔平選手(31)=ドジャース=が申告敬遠で歩かされた後、「2番・右翼」でスタメン出場した佐藤が右翼線を破る同点のタイムリー二塁打。さらに3番の森下が、一時は勝ち越しとなる3ランを左翼席にぶち込みました。

佐藤は「僕ら以上に向こうの打線が上回っていたということ。もっと打ちたかったですけど、ベネズエラが強かったと思います。勝ちたかったので気持ちは悔しいですけど、楽しめました」と悔しさをにじませましたが、それでも「本当に(この経験を)つなげていかなくちゃいけない」と前を向きました。

ベネズエラとの準々決勝に敗れ、厳しい表情の大谷翔平(中央奥)ら侍ジャパンの選手たち。大会連覇はならなかった=2026年3月14日、ローンデポ・パーク(松永渉平撮影)

一回に二盗を試みた際に右膝を負傷した鈴木誠也外野手(31)=カブス=の代わりに「3番・中堅」に入った森下も「自分なりの100%を出そうとした結果が、すごくいい形につながった。ああいうところで打つことを求められて、このWBCに選ばれたと思う。最後の最後でしっかり打点というところを見せられてよかった」と話しました。

スタメン固定

準々決勝では、メジャーリーガーがずらりとそろうベネズエラの強力打線にリリーフの隅田知一郎(ちひろ)投手(26)=西武、伊藤大海(ひろみ)投手(28)=日本ハム=がのみ込まれました。打線は村上宗隆内野手(26)=ホワイトソックス=や岡本和真内野手(29)=ブルージェイズ、吉田正尚外野手(32)=レッドソックス=らメジャー組がいまひとつ存在感を発揮できなかった一方で、佐藤&森下は世界の大舞台で爪痕を残したと思います。

虎の2人には将来に向けての糧を得た試合だったといえるでしょうが、5-2の3点リードから逆転負けを喫し、WBCでは初めてベスト4入りを逃した侍ジャパンにとって、いや日本プロ野球界にとっても宿題を突き付けられたことは事実です。

まず考えなくてはいけないのは、井端弘和監督(50)が自ら招集した大リーガーとの関係性です。野手は大谷、吉田、鈴木、岡本、村上の5人。投手は山本由伸(27)=ドジャース、菅野智之(36)=ロッキーズ、菊池雄星(34)=エンゼルス=の3人です。特に野手を5人も呼び寄せたことで、スタメンが固定されました。指揮官とすれば、大リーグ球団と交渉して選手を招いたため、彼らがどれだけ不振でも先発から外すことが難しくなった。途中で代打を送ることも躊躇(ちゅうちょ)せざるを得なかったでしょう。

選手側が遠慮なく自由に使ってほしいと思っていても、井端監督にしてみれば、さまざまな人たちに骨を折ってもらって召集した大リーガーたちをベンチに置いておくわけにはいきません。結果として小園海斗内野手(25)=広島=はわずか1試合の出場。周東佑京外野手(30)と牧原大成内野手(33)=ともにソフトバンク=も、それぞれ4打席しか立てませんでした。ベネズエラ戦では、負傷交代した鈴木に代わって二回から中堅守備についた森下のほか、途中出場した選手は九回に代打起用された近藤健介外野手(32)=ソフトバンク=だけでした。負けているのに、ほとんど9人野球だったとは…ですよね。

ピッチクロック違反から

今後の世界大会でも大リーガーを呼ぶこと自体はいいのですが、指揮官が精神的な圧迫を受けないで済むようなシステムを考えるべきでしょう。代表メンバーの選考や招集システムに一考の余地あり…と思いますがどうでしょう。井端監督は今大会で退任の意向を示していますが、監督が誰に交代しても同じ問題が横たわっています。

グラウンド内での課題も浮き彫りになったといえます。投球間の時間制限「ピッチクロック」と、サイン伝達機器「ピッチコム」の使用、牽制(けんせい)は1打者につき2回まで-というWBCの新ルールへの適応です。

ピッチクロックは無走者の場合は15秒以内、走者がいる場面では18秒以内に投球動作に入らなければならず、違反すれば1ボールが加えられます。打者も残り8秒までに準備を整えねばなりません。大リーグでは2023年シーズンから導入されているルールに、日本の選手たちはあまりにも不慣れでした。

六回からマウンドに上がった伊藤は、先頭打者のトーバーに2球目を投じる際にピッチクロック違反を取られると、連打を浴びて無死一、三塁に。ここでアブレイユに痛恨の逆転3ランを浴びてしまいました。

「伊藤はピッチクロック違反を取られて明らかに投球のリズムが単調になり、投げ急いでいたよ。そこからボールが甘くなって、あっと言う間に逆転された。今後のWBCやオリンピックなどでもピッチクロックなどが採用されるだろう。そうした国際基準に慣れていかないと、今後も同じ悲劇を目の当たりにすることになる」

ある球界OBの指摘です。ピッチクロックやピッチコム、牽制球の制限などは一刻も早くプロ野球でも導入すべきでしょう。世界基準でゲームをしていかないと完全に立ち遅れ、北米や中南米の強豪には勝てなくなります。喫緊の課題ですね。

日本は23年の前回大会で3度目の世界制覇を成し遂げましたが、あれから3年がたち、世界のパワーバランスは変わりました。いつまでも世界の頂点にいると勘違いしていてはいけません。紆余(うよ)曲折のあった監督選びから、選手選考や招集システム、国際ルールの国内への導入など、多くの宿題がマイアミから届けられたといえますね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。