アストンの振動が“突然消えた”F1日本GPの金曜日。新アイテムが効果を発揮も、決勝投入は見送り「ドライバーの頑張りで完走できた」
F1第3戦日本GPで、フェルナンド・アロンソがチームにとっての今季初完走を成し遂げたアストンマーティン。まだまだ課題は多く、チームも喜んではいられないと気を引き締めているが、開幕前は壊滅的とも言えた状況から着実に進歩しているのは間違いない。
長らく大きなトピックとなってきた振動問題についても、確かな進歩が見られている。まずテストで問題となったバッテリーの振動については、開幕戦オーストラリアGP、第2戦中国GPで講じた対策で一定の成果が得られているようで、日本GPに向けてはアップデートしていないという。一方でステアリングからドライバーの手に伝わる振動については未だ問題として残っているが、それでも明るい兆候はある。
中国GPでは、アロンソが振動による手のダメージによってレースを途中棄権するなど、ドライバーの快適性については依然として問題が残っていた。そんな中で迎えた日本GPで、アロンソは予選後に興味深いコメントを残した。
「正直、昨日(金曜日)は完全に普通の感覚で、ほとんど振動はなかった。とてもポジティブだったけど、今日乗ったらこれまでと同じバイブレーションが出た」
このようにアロンソは、金曜フリー走行の際には振動がほとんどなくなったにもかかわらず、予選が行なわれる土曜日には元通りになってしまったのだと説明していた。この時彼は「少し理解に苦しむ。昨夜にした変更を全て振り返ってみないといけないけど、ちょっと偶然っぽい感じもする」と語っていたが、決勝後に取材に応えたアストンマーティンとホンダの首脳陣によれば、金曜には確かに振動対策のアイテムを試しており、それが功を奏したようだ。
ホンダF1のトラックサイド・ゼネラルマネージャーも兼任する折原伸太郎チーフエンジニアは「ドライバーの振動に関して、金曜日に新しい“タマ”をトライしている」と認めた。そしてアストンマーティンのチーフ・トラックサイド・オフィサー、マイク・クラックも、「我々はここでいくつかの対策を施した。セッションの中でテストしたことが小さな改善を示した」としたが、そのアイテムは実戦投入しなかったという。
それこそが金曜に収まった振動が土曜、日曜で“復活”した理由ということのようだ。折原エンジニアも「(決勝レースにおける)ドライバーの振動に関しては、中国から状況は変わっていません。ドライバーの頑張りで完走できました」と話した。
そしてレースでの新アイテム投入を見送った理由については、クラックが信頼性に関する理由であるとしてこう説明している。
「我々は色々なことに取り組んできたが、新しいパーツを取り入れることには常にリスクがある」
「信頼性のことも考慮すると、我々は新しいパーツをレースでは使わないことにした。ただ有望な兆しが見られたと思う」
またバーレーンGPとサウジアラビアGPが中止となったことで、日本GPから次戦のマイアミGPまでは1ヵ月という大きなインターバルがある。クラックまではマイアミまでに振動の問題が一段落することに自信を見せており、「マイアミでは一歩前進し、もうそのことについて話さなくてよくなるはずだと強く信じている」と述べた。
チームとしては、振動問題、そして信頼性の問題を早々に解決し、パフォーマンス向上に取り組みたいところ。アストンマーティンは今週末、新規参戦のキャデラックからも後れを取り、予選では最後列に。決勝でも、ハードタイヤスタートで苦しむキャデラックのバルテリ・ボッタスを従えることはできたが、その他のライバルと張り合うことはできなかった。
シャシー面でもパワーユニットの面でも、近々に大幅なアップデートをすることはできない。アロンソも、パフォーマンスアップのためには開発に数ヵ月が必要であり、大規模アップデートは夏頃になるだろうと予想している。
またPUに関しては基本的には性能アップのアップデートはできないが、ライバルに出力面で劣っているメーカーに対する優遇措置(通称ADUO)が存在するため、対象のメーカーは年に数回のタイミングで都度1回ないし2回の追加開発が可能となっている。
ただそこでの懸念がないわけでもない。アストンマーティンが苦しめられてきたマシンの異常振動は、車体とPUをドッキングさせて実走することではじめて判明することだと言われており、HRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長も、車体にPUを搭載して行なったベンチテストの段階では振動の問題は顕在化していなかったと説明している。アップデートされた新PUを車体に載せると、せっかく対策してきた振動問題が再燃してしまう可能性はないのだろうか?
これについて折原エンジニアに尋ねると、こう語った。
「基本的には、今までやってきた振動対策は効果があると思っています」
「ただその一方で、一般的な話として、エンジンの馬力が上がってくると入力の形態も変わりますし、それぞれの部品にかかる負荷も強くなってきます。新しいエンジンを入れることになれば、信頼性を確認した上で投入することになります」
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