佐藤輝明&森下翔太が侍ジャパンから持ち帰った財産 大谷イズムが連覇のエキスとなる

【阪神-巨人】九回、左越えへダメ押しの1号ソロを放ち、佐藤輝明(右)と喜びを分かち合う阪神・森下翔太=2026年3月29日、東京ドーム(水島啓輔撮影)
〝大谷翔平イズム〟が佐藤輝明内野手(27)と森下翔太外野手(25)に大きな影響を与え、いずれ虎の体内にも染み渡るはずです。阪神は開幕カードの巨人3連戦(東京ドーム)に2勝1敗で勝ち越しましたが、際立ったのは森下&佐藤の攻守における存在感です。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表「侍ジャパン」の一員として、ドジャース・大谷翔平選手(31)とともにプレーし、クラブハウスでも濃密な時間を共有したことが2人の野球人生の財産となり、野球観やゲーム感を磨いたはずです。2人と接する阪神ナインも目指すべき高みを知ることとなります。

【阪神-巨人】八回、決勝の2点適時内野安打を放ち、ガッツポーズする阪神・木浪聖也=2026年3月29日、東京ドーム(水島啓輔撮影)
開幕カード勝ち越し

侍ジャパンの練習で、ノックを受ける佐藤輝明(左)と森下翔太=2026年3月12日、ローンデポ・パーク(松永渉平撮影)
阪神は開幕戦こそ巨人の新人・竹丸和幸投手(24)=鷺宮製作所=に6回を1得点に抑えられ、プロ初登板初勝利を献上しましたが、2戦目はプロ9年目で初めて開幕ローテーション入りした高橋遥人投手(30)が9回3安打無失点の快投で、自身5年ぶりの完封勝利。カード最終戦は12-6で乱打戦を制しました。昨季、17勝8敗と勝ち越した巨人に対し、敵地でまずまずのスタートを切ったといえるでしょう。

【阪神-巨人】九回、ダメ押しの1号ソロを放つ阪神・森下翔太=2026年3月29日、東京ドーム(佐藤徳昭撮影)
まずまずの…というところが昔と今の大きな違いです。弱いころの阪神であれば、東京ドームの巨人戦で2勝1敗なら「今年はいけるかも!?」と大騒ぎしていたかもしれません。ですが、リーグ連覇を目指す今の阪神なら勝ち越すのは当然で、1敗したのが少々残念…というニュアンスなのが正直なところですね。
どの時代と比べてんねん…と虎党に叱られそうですが、暗黒時代は東京ドームで一つ勝つのにヒーヒー言っていましたね。巨人に1勝しただけでチーム宿舎で祝杯を挙げ、浮かれた空気になっていた頃が妙に懐かしいです。
開幕カードを振り返ってみると、投打にさまざまな修正点があったのも事実です。まず石井大智投手(28)がアキレス腱(けん)断裂で不在となったリリーフ陣。3戦目は先発の伊藤将が不調で、3回途中に降板。早川→湯浅→ドリス→及川→モレッタとつなぎ、最後は岩崎で締めたのですが、ドリス以外のリリーバーはピリッとしないマウンドでした。これで本当に大丈夫?
打撃陣では、リードオフマンの1番・近本が初戦から4打数ノーヒット、2戦目が4打数ノーヒットの3三振、3戦目が5打数1安打で、しめて13打数1安打です。もともとスロースターターですが、阪神打線の真骨頂は近本が出塁し、中野がつないで森下、佐藤、大山でかえすパターンです。近本が本調子に戻れば、さらに阪神打線は勢いを増すことでしょう。
チームへの献身
そんなこんなの3試合を俯瞰(ふかん)してみると、際立っていたのは3番・森下と4番・佐藤の存在感です。侍ジャパンの一員としてWBCで戦った2人は、まるで大リーガーがマイナーリーグの選手たちを見下すかのように巨人の選手たちを見ていたのではないか…とも思えました。ある球界関係者はこう分析していました。
「やはり大谷や鈴木誠也、吉田正尚ら大リーガーとクラブハウスで時間を共にして、ゲームに臨む姿勢や気持ちの持ち方を近くで見たことが大きいよ。世界のトップはこんな取り組み方をしているんだ…と肌で感じたはず。グラウンドの中では試合展開を読む力が随分とついたのではないか。ゲームの中での視野が広がったはず。プレーの中で随所にそれを感じられる場面があった」
もちろん、開幕前のミーティングで藤川球児監督(45)が「チームで束になっていこう」とナインに方針を伝えていたことも背景にあったはずですが、森下も佐藤もチームが掲げる目標達成のために、個人が自分の役割を理解し、貢献しようとするフォア・ザ・チームのプレーを見せました。
顕著なシーンは3戦目の八回です。5-6と逆転を許した直後の攻撃で、先頭打者の佐藤は左腕・北浦の初球を強引に引っ張らず、流し打って左前打。攻撃の起点となると、阪神はこの回3点を奪って逆転し、最終的には6点差に広げました。
佐藤は「先頭打者だったので塁に出られてよかった。(逆転は)みんながつないでくれた」と声を弾ませました。七回、巨人・泉口に勝ち越し本塁打を打たれた直後でも、一発で帳消しに…と力むことなく、まず出塁を心がけた。大きな成長を示したヒットですね。
森下も開幕戦で3安打猛打賞を記録すると、2戦目は一回1死三塁から左犠飛。貴重な先制点をもたらしました。3戦目は九回1死から石川の甘いチェンジアップを左翼席に運び、今季1号本塁打。2安打4出塁の大活躍でした。「まず勝ち越せたのでよかった。まだ3試合しかやっていない。シーズンは長いので、一喜一憂することなくやります」と冷静沈着に話していました。
世界で戦った経験値
2人ともWBCの大舞台に出場したのは初めてのことです。侍ジャパンは東京ドームで行われた1次リーグで4連勝を飾り、C組を首位通過しましたが、米マイアミのローンデポ・パークでは準々決勝でベネズエラに逆転負けを喫しました。傷心の帰国後、阪神に再合流したわけですが、世界の舞台で戦った経験値は大きな財産になったはずです。大谷と一緒に戦い、世界のトッププレーヤーの姿勢を学び、ベンチ内でのゲーム感覚を肌で吸収できたことは大きな学びになったでしょう。巨人に対しても「どこからでもかかっておいで」というどっしりとした態度にも結びついていたように見えました。
森下&佐藤の背中を間近で見続ける阪神ナインもまた、彼ら2人から今後、多くのことを学ぶはずです。ひと昔前、プロ野球選手の目標は国内のトッププレーヤーでしたが、今は違います。大リーグでトッププレーヤーになることを目指す時代です。森下も佐藤もきっとそうでしょう。
より高みを目指すことで、練習に対する姿勢も、日常生活での戒めも、過去とはレベルが違ってきます。大谷とじかに接し、2人はそれを改めて認識したはずです。そして、2人が在籍する阪神の〝体内〟にも高い意識が浸透するはずですね。侍ジャパンから持ち帰った2人のお土産が、阪神のリーグ連覇へのエキスとなるはずです。
◇
【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。