プロ野球「ファーム施設」への投資の波、ついにヤクルトまで…「先行事例を“パクる”ことで成功できる」と小林至氏

 3月27日にプロ野球がついに開幕。今シーズンはどんな熱戦が繰り広げられるのか。昨季のリーグ覇者であるソフトバンクと阪神の2球団を中心に、各球団の経営戦略と現在地を「モノ」から分析する。AERA 2026年4月6日号より。

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 近年行われたモノへの投資でもっとも規模が大きいのは、23年3月に開場した日本ハムの新本拠地・エスコンフィールドHOKKAIDOだ。建設費は約600億円。営業利益は開業初年度から札幌ドーム時代の4倍となっており、翌年以降も増収増益が続いている。

 日本ハムは収益構造が改善したことで、選手獲得にも資金を投下できる組織になった。FAや外国人選手の補強、また主力選手の流出阻止を実現したことが、一昨年、昨年のリーグ2位という成績に繋がったと考えられる。

 日本ハムほどインパクトは大きくないが、DeNAも16年に本拠地・横浜スタジアムを買収。外野の後方に新たにウィング席を増設するなど収益構造の改善を図っている。一昨年、26年ぶりの日本一を達成しているが、この投資による成功も大きいだろう。

 ただこうした動きは今に始まったことではなく、過去の事例を参考にしたものだという。東大からロッテに入団し、ソフトバンクでは編成育成部長などを歴任した小林至・桜美林大学教授はこう話す。

「日本におけるファーストペンギンとされるのは、ソフトバンクが12年にヤフードーム(当時)の所有者になったことです。そして日本ハムらがその後を追いかけた。ちなみに阪神の甲子園球場も古くから親会社の阪神電鉄が所有していて、事実上の一体運営となっています。プロスポーツビジネスというのは世界的にも真似っ子ビジネスなんです。他球団がうまくいった先行事例を“パクる”ことで成功できる」

 ロッテもZOZOマリンスタジアムの老朽化に伴って、34年をめどに隣接する幕張メッセ駐車場エリアに新球場を建設する方針を発表。東京ドームを本拠地としている巨人も築地市場の跡地に新球場を建設する構想があると言われている。こうした動きは今後も続くだろう。

 また、本拠地となる球場以上に近年目立つのがファーム施設への投資だ。そしてここでも球界をリードする動きを見せたのはソフトバンクだった。16年3月にHAWKSベースボールパーク筑後を開場。その背景を当時球団内部で主導した小林氏はこう話す。

■2軍施設拡充の意義

「常に優勝を争うチームを作るためには、充実した育成環境が不可欠です。ただ、育成は結果が出るまでに4~5年はかかる。そのためファームへの投資は後回しにされがちでした。私が3軍の必要性について話をしたときも本社筋は腹にストンと落ちた感じではありませんでしたが、私の直属の上司だった王(貞治・ソフトバンク球団)会長が『常勝軍団構築のためには不可欠だ』と後押ししてくれました。そしてソフトバンクに続くように、強いチームから広がっていった」

 小林氏の言うとおりオリックス、巨人、阪神など、多くの球団が新たな地にファーム施設を開場。ヤクルトも27年に茨城・守谷への施設移転が決まっている。日本ハムと中日はファーム施設を受け入れる自治体を募っている。選手育成において、2軍施設の拡充はもはや避けては通れない印象だ。

 一方、こうした本拠地とファーム施設の移転については地域密着という文脈もあるという。

「全国にチームを置いたJリーグの影響もあり、プロ野球が地域密着のローカルエンターテインメントだと気づいたことが大きいと思います。Jリーグの開幕は93年ですが、ダイエーは89年に福岡・平和台に本拠を置き、93年から福岡ドームに移した。当時の関西には南海に加えて、阪神、オリックス、近鉄がありました。その飽和状態からマーケットを見極めたうえで福岡移転を決め、一定の成功を収めた。そして巨人と同じ東京ドームを本拠地にしていた日本ハムは札幌ドームへ行き、収益性を格段に高めた。球界再編騒動で地域密着にめざめたパ・リーグは、千葉ロッテも千葉に根差すようになりました」(小林氏)

 NPB全体で見ると24年からオイシックスとハヤテがファーム球団に参入。それぞれ新潟と静岡を本拠地としており、仮に1軍にも参入となれば当然スタジアムの建設や拡充の話も出てくるはずだ。エスコンフィールドHOKKAIDOを見ても単なる球場ではなく、試合がない時にも来場者を呼び込む工夫、施策が見られている。その意味でも、地域と球団を繋ぐ施設としてのモノへの投資が今後も重要になるだろう。

 さらに近年のトピックとして触れておきたいのが、球場のコンパクト化だ。その目的は、公式球の仕様変更などを背景とした極端な“投高打低”を是正し、本塁打数の増加とエンターテインメント性の向上を図ることだ。バンテリンドームと楽天モバイル 最強パーク宮城は今季から外野フェンスを前に出す。

■一番面白いのは計9点

「昨季のNPB各チームの1試合平均得点は3.29点でホームランが0.64本です。プロ野球は興行なので、これだけ点数が入らないと厳しい。メジャーは平均4.25点でホームランは1.01本。メジャーは1試合で両チーム合わせて9点、ホームラン3本が興行として一番面白いという前提で、そうなるよう、ボールの反発係数を変えることも含めて、あらゆる施策を講じています」(小林氏)

 メジャーでは23年に導入済みだが、今季からは日本でも一~三塁のベースサイズが約38センチから約46センチへと大型化されている。走者と野手の接触による負傷軽減と、盗塁成功率アップが目的だが、こうした動きが野球の魅力をより高めていくことを期待したい。

(ライター・西尾典文)

※AERA 2026年4月6日号より抜粋

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