なぜ日本代表は崩れないのか? イングランド撃破の裏にあるCB進化論

日本代表 写真:アフロスポーツ
2026年3月28日、サッカー日本代表はスコットランドに完封勝利を収めた。続く同月31日には、サッカーの聖地ウェンブリーでイングランドを1-0で撃破。この歴史的快挙には、国内外から大きな称賛が寄せられた。
その原動力となったのが、センターバック(CB)陣の活躍だ。かつて弱点とされてきたこのポジションが、なぜここまで進化したのか。ここでは、欧州での経験、育成環境の変化、戦術理解の向上という視点から、その理由を紐解いていく。

冨安健洋 写真:アフロスポーツ
欧州で鍛えられたセンターバックたち
日本代表のCB進化を語る上で、冨安健洋(アヤックス・アムステルダム)の存在を避けて通ることはできない。アビスパ福岡で頭角を現し、その後、ベルギー、イタリア、イングランドと着実にステップアップ。188cmの長身でありながら快速アタッカーに走り勝ち、ビルドアップの起点にもなれる万能性は、日本人CBに対する世界の評価を大きく塗り替えた。
板倉滉(アヤックス)はドイツでの経験を経て、守備のリーダーへと成長。いまや中盤まで持ち運び、決定的なパスを供給する“現代型CB”の象徴となっている。さらに、190cmの左利きという特徴を持つ町田浩樹(TSG1899ホッフェンハイム)は、ベルギーでのプレーを経て、空中戦で欧州の屈強なFWを圧倒する強度を手に入れた。
そして、伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)の存在も大きい。町田や伊藤のような左利きCBが揃ったことで、日本代表はビルドアップの出口を左右に確保できるようになった。
現在の彼らにとって「個で制圧し、攻撃の起点となること」は、それぞれの所属クラブで当然の役割だ。欧州の高い強度に身を置くことで、日本代表における“世界基準”はもはや特別なものではなくなっているのだ。

板倉滉 写真:アフロスポーツ
育成が生んだ「多機能型センターバック」
もう一つ重要なのが選手の育成過程だ。冨安はもともとサイドバック、板倉はボランチとしてプレーしていた経歴を持ち、こうした経験が現在のプレーに大きな影響を与えている。
板倉は広い視野を活かして前線へ縦パスを供給し、時には自ら持ち上がる。一方の伊藤は、左足からの展開でビルドアップの出口となる。
従来の「守ることが主な役割」というCB像から、「攻撃の起点となる存在」へと変化した背景には、こうした育成の変化がある。さらに、瀬古歩夢(ル・アーヴル)のように、スピードとカバーリング能力を兼ね備えた現代型CBも台頭しており、この流れは途切れていない。
また、近年のJリーグアカデミーが守備戦術を重視してきた点も見逃せない。ボールを奪うタイミング、体の向き、カバーリングの優先順位といった「個人戦術」が、10代のうちに徹底されるようになった。
その結果、高井幸大(ボルシア・メンへングラートバッハ)のように、20代前半にして欧州のトップリーグから注目を集める完成度の高いCBが、継続的に輩出される好循環が生まれている。

谷口彰悟 写真:アフロスポーツ
組織守備を支える戦術理解
個々の能力に加え、日本のCBは戦術理解の面でも進化を遂げている。かつての日本代表では、中澤佑二や田中マルクス闘莉王(いずれも2019年引退)のように、強力な個の力で守備を支えるスタイルが主流だった。もちろん彼らの貢献は大きいが、守備はどうしても個人に依存しやすい側面もあった。
現在の日本代表は、組織として守る意識が徹底されている。誰か一人が飛び出すのではなく、最終ライン全体が連動し、スペースを緻密に管理する守備が共有されている。
この安定感を支えているのが、谷口彰悟(シント=トロイデンVV)のような経験豊富なリーダーだ。Jリーグでの実績と海外経験を併せ持つ彼のラインコントロールは、若手の「個」を組織の中で機能させる役割を担っている。
特にイングランド戦のような強豪相手の試合では、相手のシステム変化に応じ、3バックと4バックを使い分ける柔軟性も示した。この「考えながら守る力」の高さこそが、日本の守備が崩れない最大の理由である。

Jリーグ 写真:アフロスポーツ
Jリーグと海外の循環が生んだ成長構造
日本のCBが「層の厚み」を維持できている背景には、国内と海外をつなぐ明確な成長の流れがある。Jリーグで戦術の基礎を身につけ、20代前半でベルギーやオランダといった中継的なリーグへ渡る。そこで当たりの強さや試合強度に適応し、さらに上位リーグへとステップアップしていく。
こうした流れによって、現在の日本代表には常に高いレベルの競争が生まれている。町田や瀬古、高井といった選手たちが切磋琢磨することで、特定の主力が不在でも守備の質が落ちにくい体制が整ってきた。
FIFAワールドカップ2026を控えた今、日本のCB陣は「誰が出ても世界と戦える」と言えるだけの充実した選手層を備えている。

FIFAワールドカップトロフィー 写真:アフロスポーツ
進化した日本代表守備は北中米W杯で通用するか
日本代表のCBは、フィジカル面だけでなくプレーの質そのものを向上させてきた。もはや守るだけの存在ではなく、試合を安定させ、勝利の土台を築く重要な役割を担っている。
環境、育成、そして戦術。そのすべてが噛み合った現在の日本代表において、守備は確かな自信へと変わった。強豪相手にも崩れないこの安定感は、北中米W杯に向けた大きな武器となるはずだ。
世界の舞台で、日本は守備から勝利を引き寄せることができるのか。その答えは、進化を続けるCB陣のパフォーマンスが示していくことになるだろう。
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