【ドジャース】ロバーツ監督は名将か? 大谷翔平・佐々木朗希を束ねる指揮官の知られざる重圧と宿命

ドジャースのロバーツ監督(写真:スポーツ報知/アフロ)
勝っても称賛はスター軍団へ向かい、負ければ真っ先に叩かれる――。常勝軍団の宿命を一身に背負わされているのが、ロサンゼルス・ドジャースのデーブ・ロバーツ監督だ。
今のメジャーリーグで、これほど評価の割れる指揮官も珍しい。名将なのか。それとも、豊富な戦力に支えられながら時折、不可解な言動と継投で炎上する「迷将」なのか。答えは簡単に出ない。むしろ、その曖昧さこそがロバーツ監督という存在の本質を浮かび上がらせている。
初勝利ながら内容不安定の佐々木朗希を「今季最高」
象徴的な場面が25日(日本時間26日)、ロサンゼルスのドジャースタジアムで行われたシカゴ・カブス戦後にあった。ドジャースは12―4で大勝。10連勝中だったカブスの勢いを止めた。
先発した佐々木朗希は5回0/3を投げ、7安打4失点、5奪三振1四球。今季最多の99球を費やし、357日ぶりとなる白星で今季初勝利を手にした。
だが、数字だけを見れば快投とは言いがたい。鈴木誠也の一発も含む3本塁打を浴び、毎回のように走者を背負い、強力打線の大量援護がなければ、登板後の空気はかなり違っていた。

4月25日(現地時間)、カブス戦に先発し、今季初勝利を手にした佐々木朗希(写真:スポーツ報知/アフロ)
それでも試合後のロバーツ監督は、佐々木の内容を「今季最高」と位置づけた。空振りを奪えていたこと、ストライクゾーンで勝負できていたこと、全球種に前進が見られたことを理由に挙げ、表面上の成績だけでは投球の良さは伝わらないとの見方を示したのである。
確かに過去4登板に比べれば、改善の跡はあった。初球から攻める意識は見え、変化球の使い方にも修正はあった。
だが先発として本当に軌道に乗ったかと問われれば、そこには大きな留保がつく。今季通算は1勝2敗、防御率6.35、WHIP 1.81。被弾と走者を背負う回数の多さは、まだ先発ローテーションの軸となる主戦投手の投球とは呼べない。
佐々木のポテンシャルを疑う者は少ない。160キロ台の直球、打者の視界から消えるようなスプリット、そして昨季ポストシーズンで見せた救援適性は、ドジャースの中でも特別な素材であることを示している。昨季終盤にはブルペンへ回り、短いイニングで出力を上げることで新境地を開いた。
だが、本人がこだわる先発では、メカニクスとピッチデザインの細部がまだかみ合っていない。球種が早く見える癖、直球のリリースのばらつき、本来の伸びを欠く軌道、スラッターの質。修正されれば支配的な姿は戻るにしても、現時点で「覚醒」という言葉を使うには早い。
にもかかわらず、ロバーツ監督は佐々木を守る。
若い才能に対し、メディアの前で逃げ場をつくることは監督の重要な仕事でもある。とりわけドジャースのように全米、そして日本からも視線を浴びる球団では、言葉一つが選手の心理に直結する。
だが、擁護が過ぎれば「過大評価」と映る。厳しい現実を包みすぎれば「肩入れ」と見られる。佐々木をめぐるコメントには、その境界線の危うさがにじむ。
口にする言葉に見え隠れする「危うさ」
この危うさは、佐々木だけの問題ではない。ロバーツ監督は以前から、言葉の出し方と勝負どころの采配で賛否を招いてきた。
1月31日(同2月1日)、ロサンゼルスでのファンイベント「ドジャーフェスト」では、大谷翔平が第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で投手としては出場せず、打者専任になる見通しを早々に明かした。

ドジャースの大谷翔平とロバーツ監督(写真:AP/アフロ)
所属球団の監督として選手の状態を把握し、発信する権限があるのは当然だ。
だが、侍ジャパン側からすれば、代表の戦略情報をなぜドジャースの監督が先に表に出すのか、という違和感が残った。邪推を呼ぶ余地をつくった時点で、情報管理としては粗かったと言わざるを得ない。
超強力戦力を束ねる者にかかる重圧
采配でも同じである。2018年のワールドシリーズ第4戦では、ボストン・レッドソックス戦で好投していたリッチ・ヒルを交代させた判断が大きな批判を浴びた。試合後には当時就任一期目だったドナルド・トランプ大統領までが口を出し、全米規模の騒動になった。
2019年のナ・リーグ地区シリーズではワシントン・ナショナルズに敗退。2022年はレギュラーシーズン111勝を挙げながらサンディエゴ・パドレスに地区シリーズで敗れ、2023年もアリゾナ・ダイヤモンドバックスに3連敗で姿を消した。
強すぎる戦力を預かっているからこそ、敗れた時の責任はすべて監督へ向かう。
昨季も同じ構図だった。
ブレイク・トライネン、タナー・スコットらブルペンの起用を巡っては、終盤戦からポストシーズンにかけて疑問の声が繰り返し上がった。勝ち試合を落としかねない継投、引っ張りすぎ、代えるタイミングの遅れ。ドジャースファンは勝利に慣れている分、采配への許容範囲が極端に狭い。
仮に地区優勝を逃し、短期決戦で早々に敗れていれば、アンドリュー・フリードマン編成本部長らフロントが監督人事を再考するとの見方が強まっても不思議ではなかった。
しかし、ロバーツ監督は最後に勝つ。ここが“厄介”であり、同時に最大の強みでもある。
2024年はニューヨーク・ヤンキースとのワールドシリーズを制し、2025年はトロント・ブルージェイズとの第7戦を延長11回、5―4で勝ち切って連覇を達成した。大谷、山本由伸、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンらスター軍団の力があったのは間違いない。
だが、スターを束ね、故障者と不調者を抱えながら、162試合とポストシーズンを最後まで走らせる仕事は、外から見るほど単純ではない。
ロバーツ監督は2015年にサンディエゴ・パドレスで一時的に代理監督を務めた後、同年11月にドジャース監督就任が発表され、2016年から正式に指揮を執っている。就任1年目にナ・リーグ西地区を制し、最優秀監督賞を受賞した。
以降、2025年まで10年連続でポストシーズンへ進出。5度のリーグ優勝、2020年、2024年、2025年の3度のワールドシリーズ制覇を成し遂げた。昨年3月には2026年から2029年までの4年契約延長で合意し、監督としては破格の待遇も手にした。数字だけ並べれば、疑いようのない名将である。
皮肉なのは連覇を成し遂げた2025年のナ・リーグ最優秀監督賞投票で、ロバーツ監督に票が入らなかったことだ。
これは、彼の仕事がどれほど評価されにくいかを物語る。限られた戦力で勝ち星を積み上げれば、采配の妙は見えやすい。
だが、ドジャースのような巨大戦力を率いる監督は、勝利が当然視される。負ければ采配ミス、勝てば選手層のおかげ。ロバーツ監督は、その構造的不利の中で評価され続けている。
それでも、なぜここまで評価が割れるのか。理由は明快だ。
ドジャースの監督には「勝って当たり前」という圧がある。大谷、山本、佐々木が加わった今、その圧は米国内にとどまらない。日本のファンもロバーツ監督の一言一句を追う。佐々木への甘さ、大谷をめぐる情報発信、山本の起用法。すべてが日本語圏でも即座に議論される。勝てば選手の力、負ければ監督の責任。これほど割に合わない立場もない。
加えて、他の米国人監督とは異なる物語もある。
能力に対する疑念を「結果」で払拭してきた指揮官
1972年5月31日、沖縄県那覇市生まれ。父は米海兵隊員、母は沖縄出身。2024年12月5日には那覇市特別栄誉賞を受けた。日本で生まれ、日本にルーツを持つ人物が、米国最高峰の人気球団を率い、大谷、山本、佐々木という日本野球の象徴的存在を束ねている。その構図だけでも、日米野球史の中で特異な位置にいる。
しかも、その特異性は温かな称賛だけを呼ぶわけではない。2024年3月15日、開幕シリーズのために韓国・仁川国際空港へ到着した際に、卵を投げつけられる騒動もあった。
幸い直撃はしなかったが、ドジャースの監督という立場がどれほどむき出しの感情にさらされるものかを示す出来事だった。勝利の象徴である一方、批判と揶揄の受け皿にもなる。それがロバーツ監督の置かれている場所である。
だからこそ、ロバーツ監督を「名将」か「迷将」かの二択で裁くのは、いかにも粗い。失言はある。継投ミスもある。佐々木への評価には甘さも見える。
だが、10年にわたってドジャースをポストシーズンへ導き、3度も世界一にした監督を単なる戦力任せと切り捨てることもできない。むしろ巨大戦力の重圧を一身に浴び、勝っても疑われ、負ければ叩かれる役回りを引き受け続けてきた。
3連覇を目指す2026年、ロバーツ監督への視線は一段と厳しくなる。佐々木を先発として我慢し続けるのか。大谷の投打二刀流をどこまで管理するのか。山本をどの局面で投入するのか。答えを誤れば、また「迷将」と揶揄される。だが、最後に頂点にたどり着けば、批判の多くは過去と同じようにかき消される。
ロバーツ監督とは「名将」と「迷将」の間で揺れながら、それでも勝利という結果だけで自らの居場所を守ってきた指揮官である。その答えは肩書や世評ではなく、ドジャースが再び秋の頂点に立てるかどうかでしか示されない。
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