「辞める可能性があっていい」 陸上界の新星・青木アリエ、「引退」も視野に 挑む学生ラストシーズンの覚悟

大学での現役引退も視野に入れる青木アリエの思いとは【写真:中戸川知世】
陸上・青木アリエ単独インタビュー
昨年、陸上界の新星として注目を集めた青木アリエ(日体大4年)。静岡国際の女子400メートルで日本記録を上回る51秒71を記録し、9月の東京世界陸上で日本代表も経験した。学生ラストシーズンとなる今季、現役引退の可能性も口にする。単独インタビューで21歳の思いを聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)
陸上界を驚かせたのは1年前だった。昨年5月、静岡国際の女子400メートルで51秒71を記録。当時はペルー国籍だったため、日本記録にはならなかったが、大記録と共に、「フロレス・アリエ」の名が一躍広まった。
翌6月に日本国籍を取得し初出場した日本選手権は、大会前に右手人さし指を骨折するアクシデントがありながら、3位表彰台。「青木アリエ」に改名し、9月の東京世界陸上混合4×400メートルリレーで初めて日の丸を背負った。
本番はメンバー落ちで悔しさを味わったものの、まだ大学4年生。当然、周囲は24歳になる2028年ロサンゼルス五輪での活躍も期待する。ただ、昨年12月30日、自身のインスタグラムに記したのは意外な一文だった。
「来年は学生ラストシーズンもしかしたら、陸上人生のラストシーズン(?)」
「?」をつけながら突然示唆した競技人生の区切り。その言葉の真意とは。
「中学で陸上を始めたのも軽い気持ちだった。中学で辞めようと思ったら高校の先生と出会って、高校で辞めようと思ったら日体大の大塚(光雄)先生と出会って。進路を考えるタイミングで、出会いがあって続けてきた。(出走できなかった)世界陸上のことがあっても、なくても、大学で辞める可能性があってもいいんじゃないかなと思います」
卒業後の進路は「未定」。現役を続けるかもしれないし、一般就職するかもしれない。
「結果よりも、自分の気持ちを大事に。自分のやりやすい環境があれば、続けるかもしれない。進路を陸上1本に絞っているわけではないので、教育実習も行きたいなって。(5月21~24日の)関東インカレの次の日からなので、結構大変(笑)。体育の先生にも興味があって、陸上を教えることもいいかなって」
この選択に青木らしさがある。

THE ANSWERのインタビューに応じた青木【写真:中戸川知世】
「アスリートっぽくないけど…」 青木が“目標を決めない”理由
静岡・浜松出身。東海大翔洋高で2年生にしてインターハイの女子400メートル6位入賞を果たした。一時はスランプに陥るも、8キロ減量の肉体改造に取り組み、日体大2年で関東インカレ、日本インカレを制するなど復活。サングラスでスタートラインに立つ姿はオーラすら感じさせる。
ただ、取材では度々、メンタルの弱さを口にしてきた。1年後、3年後……と中長期の目標を設定する選手は多いが、「アスリートっぽくないけど、あんまり大きい目標を決めたことがない」と話す。自身に過度なプレッシャーを与えないためでもあるが、その裏には強い覚悟が見える。
「自分はダラダラするのがあまり好きじゃない。あと何年もあると思うと、中途半端な気持ちになってしまう。『今年で最後かもしれない』という気持ちでやった方が、結果もついてくるのかなと思います」

大学ラストシーズン、青木は感謝の思いを胸に走る【写真:中戸川知世】
嬉しさも悔しさも味わった1年を経て、学生ラストシーズンへ。9月には名古屋でアジア大会が開催されるが、自分のペースで進んでいく。
「一つ一つの大会をこなしていけたら、結果がついてくると思う。あと1年間、アスリートとして、日体大の学生として、たくさん支えてもらった人たちに、恩返しできる結果を出したい」
本種目の女子400メートルは5月3日の静岡国際が今季初戦。感謝の思いを胸にスタートラインに立つ。
■青木アリエ / Arie Aoki
2004年6月4日生まれ。静岡県浜松市出身。父はペルーと日本、母はペルーとイタリアにルーツを持つ。中学で陸上を始め、東海大翔洋高2年には女子400メートルでインターハイ6位入賞。日体大では2年から関東インカレ200&400メートルで2年連続2冠、日本インカレ400メートルで連覇。昨年6月に日本国籍を取得し、初出場した日本選手権は3位。9月の東京世界陸上で混合4×400メートルリレーのメンバーに選出された。
THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe
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