村上宗隆、三振・四球・特大本塁打だけの強打者

エンゼルス戦で3ラン本塁打を放つ村上宗隆

シカゴ・ホワイトソックスは昨冬に日本の強打者・村上宗隆と契約した際、憂慮すべき頻度で三振する彼の傾向を十分認識していた。球団が期待していたのは、それを埋め合わせるのに十分な数のホームランを打ってくれることだけだ。30本前後なら十分だろうと。

それは問題にならないようだ。今のペースなら、学校が夏休みに入る前にその目標に到達する可能性がある。

26歳の新人一塁手である村上は、今シーズン既に12本のホームランを放っている。シーズン開幕から1カ月がたつ4月30日を迎えた時点で、メジャーリーグ(MLB)の最多ホームラン数でアーロン・ジャッジと並んでおり、年間63本ペースだ。しかも安っぽい本塁打ではない。

「ウォールスクレイパー(フェンスをぎりぎりで越える本塁打)は1本もない」とホワイトソックスのゼネラルマネジャー(GM)を務めるクリス・ゲッツ氏は語る。

しかし、村上の華々しい活躍を支える才能はまた、彼を異質な存在にしている。実のところ、外野席の一番深いエリアへ壮大な飛球を放つ以外は、彼はあまり大きな働きをしていない。

二塁打と三塁打をまだ1本も放っていないのだ。村上は少なくとも1900年以降で、MLBでのキャリア開始から本塁打以外の長打を記録する前に10本以上の本塁打を打った初めての選手になった。単打はわずか14本で、打率は2割3分6厘。太平洋の向こう側から伝えられていた通り、あきれるほど三振が多い。現時点の三振数は46で、このままいけば年間240三振と驚異的な数に達するペースだ。

これら全てをまとめると、このスポーツで最も魅力的かつ最も不可解な選手が浮かび上がる。現代野球の美しさとひどくゆがんだ部分の全てを完璧に抽出した存在だ。

村上の打席の61%は三振・四球・本塁打のいずれかで終わっている。この割合がシーズンを通して58.8%を超えた者は歴史上いない。打率が低下し、ホームランと三振が史上最多に近づいている時代において、村上はいかなる犠牲を払おうともパワーを追求し続ける野球を体現する究極の存在だ。

それは必ずしも人々を最も満足させる野球ではない。ゲッツ氏でさえ、村上のような選手ばかりがそろっていたら「見るに堪えない」だろうと認める。しかし、その独特なスキルセットにもかかわらず、村上のいちかばちか的なアプローチはうまくいっている。OPS(出塁率と長打率を足した数値)は0.939と、MLBで特に生産性の高い強打者の中でもエリートの部類に入る。

ホワイトソックスのデレク・ショーモン打撃コーチは「確かにいらついている人もいると思うが、彼は現在、MLBで0.9を超えるOPSを記録している男だ」と言う。

三振の多い村上は年間240三振のペースだ

村上に似たタイプの選手は過去にもいた。デーブ・キングマンとロブ・ディアーは、打率が低く、三振が多かったものの、本塁打を量産したことで着実なキャリアを積み上げた。2人は、同じ傾向を持つアダム・ダン、ジョーイ・ギャロのような近年の選手に道を開いた。こうした選手の価値は長年議論の対象になってきた。

しかしこれまでのところ、村上については議論の余地がない。同種の選手の中で、村上が二つの理由で究極の異端児だからだ。一つ目は明らかで、とんでもない数の本塁打を打っているということ。低打率で本塁打30本を打つのと、低打率で本塁打50本を打つのとでは話は違う。村上は後者の偉業を達成してもおかしくない勢いだ。

より重要なのは、村上の見事な選球眼だろう。スイングすれば空振りか本塁打になる傾向にある。スイングしない時の球はたいていボールだ。四球を選ぶことが多いため、出塁率は3割7分5厘と、ホワイトソックスの選手の中で最も高い。

「これは理想とする典型的な形ではない」と、ホワイトソックスの村上獲得で中心的役割を果たしたデービッド・ケラー氏は語る。

だからこそ米国の球団は当初、村上の価値に懐疑的だった。彼が2022年にヤクルト・スワローズで56本の本塁打を放ち、日本生まれの選手として王貞治氏の記録を破ったにもかかわらずだ。

村上がスイングすれば空振りか本塁打になる傾向にある

村上は当初、長期で9桁(1億ドル以上)の契約を期待していた。だが、こうした打撃成績の選手に大金を払うことを各球団がためらったため、争奪戦にはならなかった。日本野球の比較的遅い球への対応に苦労していた村上が、90マイル台後半(160キロ近く)の速球を連投されたらどうなるのかと懸念されていたのだ。

ホワイトソックスも同様の懸念を抱いたが、2年総額3400万ドル(約53億円)の契約を結ぶ賭けに出る準備はできていた。ホワイトソックスはそれまで、日本のスター選手の獲得競争で有力な存在になったことはなかった。「われわれがムネ(村上)にそこまで深く関与できるチャンスがあるとは思っていなかった」とケラー氏は話す。だがホワイトソックスが妥当な金額で村上を獲得できることが判明すると、状況は一変する。

そこでケラー氏はスカウティングリポートを提示した。確かに村上は三振するだろうが、本塁打や四球でチームに十分貢献すると同氏は確信していた。

「彼にできると私が信じたことに焦点を当てたかった」とケラー氏は語る。「恐らく彼の能力を過小評価していた」