男性の年収中央値は420万円、女性は290万円、今の日本ではフルタイムで働いても「普通」の暮らしができない

「週5日、1日8時間」働けば真っ当な暮らしができる社会ではなくなってきているのか 78design/photoAC

<女性はフルタイムで働いても半数以上が年収300万円未満>

数年前に、『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』という本が話題になった。443万円というのは、日本で働く人の平均年収のことかと思うが、この数値が「フツー」の年収と言えるかどうかは怪しい。

年収のように分布が歪なデータの場合、「フツー」を表す代表値としては平均値よりも中央値が望ましい。日本の全有業者6489万人の年収分布から中央値を計算すると301万円(総務省「就業構造基本調査」2022年)。先述の443万円よりだいぶ低いが、こちらのほうが「フツー」の年収に近いだろう。雇用の非正規化が進んでいるだけになおのことだ。

この中には、扶養の範囲内でのパート労働も含まれているが、自活できるだけの賃金を望むフルタイム就業者に絞ったらどうなるか。上記の資料には、「年間就業日数×週間就業時間×年収」のクロス表が出ている。年間250~299日、週40~44時間働いている有業者を取り出し、年収の分布をヒストグラムにすると<図1>のようになる。

400~500万円台あたりに山があるかと思いきや、そうではない。男性のピークは300万円台、女性は200万円台となっている。女性は最頻階級への集中度が高く、4割近くが200万円台だ。

中央値を計算すると男性が420万円、女性が290万円。週5~6日、1日8~9時間働いているにもかかわらず、この水準とは驚く。特に女性の半分以上が年収300万円未満のフルタイム・ワーキングプアだ。フルタイムで働いても、子どもの卒業や入学の費用も工面できないという、シングルマザーの困窮が報じられるわけだ(毎日新聞、2026年4月18日)。

「女性の場合、賃金が低い仕事に就いている人が多いからではないか」と思われるかもしれない。なるほど、職業の分布を見ると女性は男性と比べて事務、販売、サービスといった仕事をしている人が多い。だが、これらの仕事に対する社会の依存度が高いのも事実だ。

<図2>は職業・年収別の有業者数をグラフにしたもので、円が大きいほど該当グループの人数が多いことを意味する。これによると、年収が低い事務、販売、サービスといった職業に従事する人が多いことが分かる。その多くは女性で、今の日本社会は安い女性エッセンシャルワーカーに支えられている、と言っていい。

保育や介護といったケア労働をイメージすると分かりやすいだろう。需要が多く、かつ資格を要する専門職であるにもかかわらず、賃金は低く抑えられている。「手取り20万円は高望み(ぜいたく)なのか」という声が現場で上がっているほどだ(弁護士JPニュース、2026年5月1日)。公共性が高く、市場原理が賃金に影響しにくい仕事なだけに、公的な補助金が末端の労働者にまで届くよう、指導・監督を強化すべきだろう。

そもそも、どのような仕事であれ、「週5日、1日8時間」働けば、真っ当な暮らしができるだけの賃金が保障される社会でなければならない。「1日8時間働けば、普通の暮らしができる社会を作る」。選挙でしばしば掲げられる公約だが、それだけの富は、今の日本社会は有しているはずだ。

<資料>

総務省「就業構造基本調査」2022年