AI需要でメモリー不足深刻化、半導体大手と機器メーカーの株価に明暗
(ブルームバーグ): 人工知能(AI)需要の拡大に伴い世界的なメモリーチップ不足が深刻化し、企業業績と株価動向の明暗が一段と鮮明になっている。
メモリー半導体大手、米マイクロン・テクノロジーと韓国サムスン電子の株価は、堅調な製品価格がけん引した好決算を受け、過去最高値に急伸した。一方、パソコン(PC)・プリンターメーカーの米HPや任天堂など消費者向け製品メーカーは、半導体を巡るコスト上昇に伴う利益圧迫に苦しんでいる。
この需給逼迫(ひっぱく)からは、AIが半導体サイクルを変えつつある様子がうかがえる。メモリーは汎用(はんよう)部材から、重要なボトルネックへと変貌した。世界の株式市場では価格決定力が明暗を分け、供給側は思わぬ利益を上げる一方、デバイスメーカーはコスト上昇と利益率低下に直面している。
こうした危機は最近の決算で鮮明になっている。企業の決算説明会や四半期リポートでは、メモリー価格への言及が今年に入って550回を超えた。ブルームバーグが1999年以降の世界株を対象にまとめたデータでは、通年ベースの過去最多を既に上回っている。

26年、決算でメモリー価格への言及急増
ペッパーストーン・グループ(ロンドン)のシニアリサーチストラテジスト、マイケル・ブラウン氏は「メモリーチップ不足は懸念以上に深刻で、想定より長引くとの見方が強まっている」と指摘。「AI需要の急拡大が続く中、事情に詳しい関係者からは、この不足は何らかの形で2030年ごろまで続く可能性もあるとの声が聞かれる」と述べた。
痛み深まる
メモリーチップを使う企業への影響は広範囲に及んでいる。任天堂は11日、メモリー調達コストの上昇がゲーム機の利益率を圧迫しているとの懸念を示した。これを受けて株価は下落し、年初来の下落率は30%超となった。中国のスマートフォン大手、小米(シャオミ)は今年20%下落し、キヤノンも同様の懸念から10%安となっている。
利益率を守るため、値上げに踏み切るメーカーも増えている。製品需要を損なうリスクがあるにもかかわらずだ。任天堂は先週、「スイッチ2」の値上げを発表。これに先立ち、マイクロソフトの「Xbox」やソニーグループの「プレイステーション5」も過去数カ月に値上げしている。メタ・プラットフォームズは仮想現実(VR)ヘッドセットの価格を引き上げている。
英IGグループ傘下、IGインターナショナルのマーケットアナリスト、ファビアン・イップ氏は「企業各社への影響の大きさは二つの要因に左右される。メモリー調達コストが企業のコスト全体に占める割合と、供給確保や価格転嫁を進める余地だ」と述べた。同氏はスマートフォンやゲーム機事業のリスクは高く、パソコンメーカーやハイパースケーラーのリスクを中程度とみている。
メモリーメーカーにとって、この状況ははるかに明るい。旺盛な需要の中で半導体価格が上昇し、恩恵を受けているためだ。ブルームバーグのメモリー株指数は年初来約120%急騰した一方、家電株指数の上昇率は約3%にとどまる。

メモリー不足で勝者と敗者の格差が拡大
サムスンは先月、四半期の半導体事業利益が48倍に膨らんだと発表し、時価総額が1兆ドル(約157兆円)を超える企業の仲間入りを果たした。同じく高帯域幅メモリー(HBM)を手掛けるマイクロンとSKハイニックスも、好決算を受けて株価上昇が続いている。
「1-3月(第1四半期)の決算シーズンを過ぎても、メモリー市場の勢いは極めて強いままだ」と、BofAグローバル・リサーチの韓国調査責任者でアジア太平洋地域テクノロジー調査コーディネーターのサイモン・ウー氏は述べた。「4月のデータでは、台湾のメモリー関連売上高が急速に伸びているほか、韓国の半導体輸出も前年同月比でなお100%以上増加した」と語った。
恩恵広がる
AI需要がモデル学習中心から、より一般的な用途へと広がる中、恩恵を受ける企業の裾野も広がっている。投資家は今、より汎用的なDRAMチップや各種フラッシュメモリー、ハードディスク駆動装置(HDD)のメーカー株にも買いを入れている。
サンディスク株は、NAND価格の上昇を追い風に利益が市場予想を上回り、年初来で500%超上昇した。同社と提携するキオクシアホールディングス株は15日の決算発表を控え、年初来で360%超上昇している。

供給逼迫でメモリーチップ契約価格が急騰
AI関連株の上昇が続く中、バブルを指摘する声も一部で出ている。イラン戦争に伴う経済の先行き不透明感が続く中ではなおさらだ。米国では12日、ここ最近の急上昇を受けて過熱懸念が強まり、半導体株が下落した。
メモリー株の強気派は、AIが半導体需要に「スーパーサイクル」を生み出し、従来の好不況の波から大きく外れたと主張する。NANDチップの契約価格は9月末以降に600%超上昇し、DRAMチップも400%近く値上がりした。アナリストはこの傾向が続くとみている。
ミクソ・ダス氏らJPモルガン・チェースのストラテジストは10日付のリポートで「メモリー価格の上振れは続くだろう。AI主導の需要が供給を上回り続ける中、在庫は逼迫しており、HBMの供給も複数四半期にわたる価格・数量契約で固定されているためだ」と記した。価格と販売数量は27-28年も増加が続く可能性があるとみている。
原題:Memory Crunch Deepens Chasm Between Stock Winners and Losers (1)(抜粋)
--取材協力:Mayumi Negishi.
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