絶好調のソフトバンクが「AI投資は収穫期」と意気込む新戦略。PayPay上場や携帯料金値上げで地盤固める

ソフトバンクは2026年度から始まった新中期経営計画で「Activate AI for Society」という戦略を打ち出した。

ソフトバンクが5月11日に発表した2025年度通期決算では、売上高が前期比8%増の7兆387億円と初めて7兆円の大台を突破した。

営業利益は5%増の1兆426億円、純利益は5%増の5508億円といずれも過去最高を更新。同日公表した新しい中期経営計画では、2030年度に連結営業利益1.7兆円、純利益7000億円を目指す方針を示した。

今後同社のビジネスの中核になるのは「通信」ではなく「AI」となる。11日の説明会に登壇したソフトバンクの宮川潤一社長は「AI領域で種まきを行ってまいりましたが、ついに収穫フェーズに移っていく」と断言した。

通信キャリアのソフトバンクが今後どのような企業に変わろうとしているのか。また、AIへの挑戦を支える基幹事業の動向を含めて解説する。

売上7兆円突破。AI投資は「収穫期」へ

宮川氏は「グループ内に兆円単位の事業が4つ存在する」と2025年度の通期売上を振り返った。

2025年度はソフトバンクのすべてのセグメントにおいて増収となり、特に法人向け事業の「エンタープライズ」事業と、ICT商材等を扱う「ディストリビューション」事業の2つのセグメントの年間売上が初めて1兆円の大台に乗った。また、PayPayを含むファイナンス事業の売上も4045億円で、前年度比の成長率では最も大きなものとなった。

LINEヤフーを含む「メディア・EC」事業と、個人向け通信の「コンシューマー」事業は売上で前年度比の成長率2%と、ほぼ横ばい。ただ、メディア・EC事業についてはアスクルへのランサムウェア攻撃の影響で326億円の減益要因を抱えている。

宮川氏は前中期経営計画の期間だった2023年度から2025年度までを振り返り「値下げ、戦争、円安、物価高など事業環境が激しく変化した中期経営計画であったが、収益基盤を毀損することなく最高益を達成できた」と自己評価した。

2023年度から2025年度までの前中期経営計画を振り返った。

そして、2026年度から始まった新しい中期経営計画については「積極的に打って出たい」(宮川氏)とし、以下に挙げるような数字や方針を打ち出している。

  • 2030年度に連結営業利益1.7兆円、純利益7000億円を目指す
  • 新戦略を「Activate AI for Society」と名付け、全事業でAIの社会実装を推進する。
  • 2026年度から2028年度までの3年間で1兆円の戦略投資を実行する。堺・苫小牧のAIデータセンターや革新型バッテリー製造ラインなどが対象となる。
  • 2030年度までのカーボンニュートラル達成目標を堅持し、今後5年間の継続増配も目指す

新中期経営計画の概要。

今後のソフトバンクのビジネスの中核となるのは、大阪・堺のAIデータセンターだ。

同データセンターは敷地約45万平方メートルにAIの計算処理を担う「AXファクトリー」と、新型バッテリーや太陽光パネルの製造設備「GXファクトリー」を整備する。

大阪・堺のAIデータセンターはAXファクトリーとGXファクトリーの2つの設備が用意される。

AXファクトリーが持つAIの計算能力は110エクサフロップス、NVIDIA H200換算で約10万枚相当の規模となり、2027年度に完成させる見込みだ。

そんなAXファクトリーに隣接する形で設置するGX(Green Transformation)ファクトリーで手がけるのは、今回の決算と同時に事業参入が発表された独自開発の「亜鉛-ハロゲン電池」だ。

ソフトバンクは「亜鉛-ハロゲン電池」を革新型バッテリーと呼ぶ。

ソフトバンクによると、同社の亜鉛-ハロゲン電池は電解液に真水を用いるため発火リスクが低く、最新のリチウムイオン電池と比べてエネルギー効率も10%以上高いとしている。

2027年度に100MWh規模で製造を開始し、2028年度に1GWh、2029年度には2GWh体制まで拡張する計画。電池事業の売上高は2030年度までに1000億円規模を目指す。

製造した電池はまず自社のAIデータセンターやモバイル基地局で活用した上で、家庭用や電力系統用として外販する見通しだ。

ただ、宮川氏は自身の野望として「最終的には海外展開で数千億円規模の売上を目指す」とする。「ソフトバンクは内需で生きている会社。これ以上(業績を)伸ばすとお客様にしわ寄せがいく。新たにやれる範囲でチャレンジしたい」と長期的な目標ながらも意欲的に語った。

AI投資を支える通信事業は値上げで足場固め

ソフトバンク代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏。

そんな1兆円規模の戦略投資を支えるのが、稼ぎ頭であるモバイル通信を主とする「コンシューマー事業」と、成長を続ける「ファイナンス事業」の収益力だ。宮川氏も両事業について「継続的な成長」と、他の事業よりやや抑えたトーンで期待を示した。

コンシューマー向けの通信事業については、ソフトバンクにとって安定的なキャッシュを生む基盤だ。AIデータセンターや新型電池のような先行投資を進めるには、通信事業で安定した収益を確保し続けることが欠かせない。