自動車業界 ニュースの見方 第45回 自動車業界で“一強”のトヨタが難局でも3.7兆円の利益を叩き出せる理由
トヨタ自動車が5月8日に2025年度(2026年3月期)の決算を発表した。原材料費の高騰、中東の情勢不安、トランプ関税などが重なる難局にあって、連結売上高は50兆6,849億円(前期比5.5%増)と日本企業初の50兆円超えを達成。本業の儲けを示す営業利益は3兆7,662億円(前期比21.5%減)と過去3番目の高水準をキープした。逆風下でもトヨタが強い理由とは。
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レクサスの新型車「TZ」
逆風下の自動車業界でトヨタが強さを発揮できる理由は?
EV大減速! やっぱりトヨタが正しかった?
自動車産業界には逆風が吹いている。トランプ政権が打ち出した関税政策が重荷となったことに加えて、米国で電気自動車(EV)の税額控除が廃止となったことなどによりEV推進戦略の転換を迫られ、自動車OEM各社の減損損失が相次ぐ。さらに足元では、中東危機による部材などの調達リスクが高まっている。
ホンダや日産自動車は、この2026年3月期決算で巨額赤字を計上する見通し。海外でも米国のゼネラルモーターズ、フォード、ドイツのフォルクスワーゲンなどが厳しい業績となる見込みだ。これらの競合に比べると、トヨタの業績は底堅い。
トヨタの2025年度における世界販売は1,047万台(前期比2%増)で過去最高だった。
競合がEVに集中する戦略を重視する中で、トヨタはハイブリッド車(HV)やEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)に燃料電池車(FCEV)と幅広い選択肢を提供する「マルチパスウェイ」(全方位戦略)を世界各地域で展開してきた。EV需要が減速してもHVの販売を強化することで、市場変化に対応してきたのだ。HVも含めたトヨタの電動車販売は504万台で、初めて500万台を超えた。
EV戦略も「トヨタ流」で商品戦略を進める。決算発表会見前日の5月7日には、高級車ブランド「レクサス」の新型EV「TZ」を公開。TZはレクサスのEVとして初の3列シートSUVとなる。EVでも廉価な車種だけでなく、高級車も含めた全方位での商品展開を推進しているわけだ。

レクサスの新型車「TZ」
レクサスの新型車「TZ」。EVの3列シートSUVは同ブランド初
同日にはレクサスのセダン「ES」を全面刷新し、2026年6月に発売することも発表した。パワートレインはEVとHVの両面展開で、独自のソフトウェア基盤「アリーン」を採用する。「TZ」と新型「ES」は主力の米・中市場に狙いを定めるが、日本でも2026年冬にはTZを発売する予定だという。
トヨタの近健太社長は「大きな環境変化となる中でも3.8兆円の営業利益を上げることができた」と2026年3月期業績を総括した。近社長は2026年4月に就任したばかりだが、経理部長や最高財務責任者(CFO)のキャリアを積んできているだけに「稼ぐ力」へのこだわりが強く、損益分岐台数を下げることを重視する。

トヨタの近社長
トヨタの近社長
「大番頭政治」復活で稼ぐ力を追求
今期(2027年3月期)の売上高予想は51兆円(前期比0.5%増)、営業利益予想は3兆円(前期比20%減)を見込む。3期連続の営業減益となるが、それでも3兆円は高水準だ。これをベースにどれだけ改善できるか、である。
自動車業界の逆風は続く。例えば中東情勢の緊迫化は、6,700億円の利益押し下げ要因になるとトヨタは予想する。すでに4月には、「ランドクルーザー」など中東向けの生産を1万8,000台減産しており、5月から11月ごろにかけては、中東向けを中心にピックアップトラックなど海外生産を3万8,000台減産する方針だ。
経理・財務畑を歩んできた近新社長は「稼ぐ力」への舵取りを強みとする一方で、豊田章男会長の社長就任時から8年間も社長秘書を務めたキャリアも持つ豊田会長の忠臣であり、「影武者」的なトップであるとの見方もある。
かつて石油危機に直面したトヨタは、「カイゼン」や「トヨタ生産方式(TPS)の徹底化」などで利益を生み出す体質を強化してきた。当時の豊田英二社長時代から豊田章一郎社長時代につながる「大番頭政治」の復活が、近社長が率いるトヨタ新体制の本質なのでは、というのが筆者の見方である。
【フォトギャラリー】レクサスの新型3列シートSUV「TZ」























佃義夫
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