「パスコードは何?亡くなった親のスマホを開けない」、証券口座もサブスクも解約できず…家族を困らせる"終活"の盲点
あなたは親が使っているネット銀行やサブスク、スマホ内の写真、SNSのアカウントをどこまで把握しているでしょうか。
【今すぐチェック】デジタル終活で整理しておきたいものリスト
万一のとき、家族が困るのは「何を契約していたのか」「どこに大切なデータがあるのか」「どうすれば手続きできるのか」がわからないことです。
もちろん、これは親だけの問題ではありません。メールやSNS、ネットショッピングにネット銀行、証券口座、キャッシュレス決済、動画配信、クラウドストレージ、ブログなど、私たちの暮らしは、いつの間にか多くのデジタルサービスの上に成り立っています。
本人が元気なうちは便利な存在ですが、突然の病気や事故で自分が操作できなくなったり、万一のことが起きたりすると、それらは家族にとって「存在すらわからないもの」になりかねません。
紙と違ってネット上の契約は家族には見えない
紙の通帳や契約書なら、家の中を探せばたいてい見つかります。しかし、ネット上の契約は外から見てもわかりません。ログイン方法がわからなければ、契約先の確認も解約も資産の把握も止まってしまうことがあります。
だからこそ、何も起きていないときに、デジタルサービスやデジタル資産を棚卸ししておくことが大切です。一言でいえば、今から始めるデジタル終活です。今回は、平時だからこそ始めたいデジタル終活について解説します。
国民生活センターは2024年11月、スマホの中の「見えない契約」で遺された家族が困らないために、「デジタル終活」に関する情報提供を行いました。消費生活センターなどに寄せられたデジタル遺品に関する相談事例も紹介されています。
例えば、亡くなった兄がネット銀行の口座を持っていたようだが、契約先を確認するためのスマホを開けず、手続きを進められないというケースです。
携帯電話会社の店舗では初期化はできても、画面ロックの解除はできないと言われ、デジタル遺品の確認が止まってしまいました。
少額だろうから放っておけばいい、という話でもありません。相続財産を漏れなく把握することは、遺産分割や各種手続きの前提になります。相続税の申告が必要な場合には、申告漏れを防ぐうえでも重要です。
追加保証金や延滞利息が必要になってしまうことも
本人しか知らない投資口座も要注意です。証券会社がわかっていれば、株式や投資信託などは相続手続きの中で確認を進められます。ただし、そもそもどの証券会社に口座があるのか家族が知らなければ、調査は一気に難しくなります。
信用取引やFX、暗号資産のように価格変動が大きい取引をしている場合は、家族が存在を知らないまま放置すると問題になる可能性もあります。
信用取引やFXでは、相場が大きく動くと追加保証金、いわゆる追証が発生したり、未決済ポジションの清算が必要になったりすることがあります。残高や損益が相続手続きに影響する場合もあるため、万一のときに口座の存在自体が伝わっていなければ、確認も対応も後手に回りかねません。
故人のクレジットカードを解約したものの、ネットサービスなどのサブスク契約を見逃したことで、後日、延滞利息付きの請求書が郵送されてくることも考えられます。クレジットカードはあくまで支払い手段なので、すべての契約を個別に解約する必要があります。
故人のアカウントを突き止めるために手がかりになりそうなのは、本人のパソコンやスマホ、メールアカウント、各種サービスからの通知です。
ところがログイン方法がわからなければ中身を確認できません。カードの明細を見ても、略称で並んだサービス名から正体を突き止めるのは骨が折れます。メールの受信履歴を確認したくても、そのメールアカウントに入れない場合、家族は「何を探せばよいのか」を調べるところからスタートすることになります。
遺族にとっては、この作業がとても大きな負担となっています。親がスマホやネット銀行、サブスクを使っているなら、子ども世代にとっても決して他人事ではありません。
デジタル終活で整理すべきなのは端末ではなく「契約とデータ」
デジタル遺品と聞くと、パソコンやスマートフォンといった機器そのものを思い浮かべがちです。しかし、その中にあるデータや、ネット上で契約しているサービス、オンライン上の資産のほうが重要です。
ネット銀行やネット証券、FX、暗号資産、キャッシュレス決済、ポイント、クレジットカード、SNS、ブログ、動画配信、クラウド上の写真や書類。さまざまなサービスのサブスク契約もそうです。お金と思い出、人間関係などが、端末やクラウドの中で混ざり合っている状態なのです。
家族が困る理由は、まず、存在や入り口がわからないこと。ネット銀行やサブスクは紙の通知が届かないことも多く、本人が利用していた事実すら家族に伝わっていないケースが珍しくありません。また、スマホの暗証番号やパソコンのパスワードなどがわからなければ、そもそも端末を調べることさえできません。
デジタル終活というと重く聞こえるかもしれませんが、実際にやることはアカウントの棚卸しです。
今は親世代でも、スマホ決済やネット銀行、動画配信、写真のクラウド保存などを日常的に使う人が増えています。もちろん、働き盛りの世代も多くのアカウントを使い、サブスクに加入し、ネット上でお金やデータを動かしています。
整理しておけば、毎月の支出をいつでも見直せます。使っていないアカウントを減らしたり、金融資産やポイントの全体像を把握できるといったメリットもあります。
放置したままだと、使っていないサービスに課金が続いたり、家族が大事な口座を見つけられなかったり、不正ログインに気づきにくくなったりします。終活というよりも、今の自分のためのアカウント整理と考えれば、働き盛りの世代にも取り組みやすくなります。
おすすめは「お金、サブスク、写真、ログイン情報」の順に整理
そもそも、デジタル終活では何を整理しておけばよいのでしょうか。ネット銀行や暗号資産といった金融資産から、サブスク、写真や動画、SNS、仕事のデータ、端末そのものまで、ジャンルは多岐にわたります。
下のリストは代表例ですが、当てはまるものを拾い出すだけでも、自分が使っているデジタルサービスや資産の全体像が見えてきます。

デジタル終活で整理しておきたいものリスト
優先して整理したいのは、お金に関係するアカウントです。ネット銀行やネット証券、暗号資産、キャッシュレス決済、電子マネー、ポイント、クレジットカード、ローン、保険などです。一度、メモ帳やスプレッドシートにまとめてみましょう。
最初からIDやパスワードをすべて一覧にする必要はありません。むしろ、金融機関の暗証番号やクレジットカード情報、パスワード管理アプリのマスターパスワードを紙にまとめて放置するのは危険です。
まずは「どのサービスを使っているか」を可視化することから始めましょう。書き出す項目はサービス名と用途、登録しているメールアドレスです。「給与受取口座」「投資用」「ほぼ未使用」「毎月引き落としあり」といった家族向けの一言メモがあるだけで、家族はぐっと動きやすくなります。
親に確認する場合も、いきなり「パスワードを教えて」と切り出す必要はありません。まずは「どの銀行や証券会社を使っているか」「毎月引き落とされているサービスはあるか」といった、契約先の確認から始めるだけでも十分です。
次は、毎月または毎年自動で支払いが発生するサービスです。動画配信や音楽配信、電子書籍、クラウドストレージ、セキュリティソフト、学習アプリ、ゲーム課金、生成AIサービス、ニュースアプリ。
サブスクは契約者が亡くなったとしても、解約手続きをしない限り請求が続くことがあります。事業者が死亡の事実を自動で把握できるわけではないため、家族が気づかなければ対応が遅れる可能性があるのです。
クレジットカードの明細や銀行口座の引き落とし、携帯電話料金、アプリストアの購入履歴、メールに残った領収書を確認すると、思っていた以上の数のサブスクが見つけられるでしょう。
お金と並んで重要なのが、写真や動画、SNS、ブログ、メール、チャットといったコンテンツとアカウント類です。
スマホやクラウドの中には、家族との写真、子どもの成長記録、旅行の動画、お世話になった人とのやりとりなど、お金には代えられない記録が積み重なっています。本人が亡くなったあと、こうしたデータは家族にとってかけがえのない思い出になります。
そこで、家族に残したいものを意識して書き出しておきましょう。子や孫に見せたい写真フォルダ、保存してほしい動画、思い出を共有しているSNSアカウント、大切なやりとりが残ったメールなどです。
保存場所と、可能ならフォルダ名やアルバム名まで控えておくと、家族はピンポイントでたどり着けます。ブログや動画投稿サービスのような外部で公開している発信物も、残してほしいか削除してほしいかを書き添えておくと、家族が判断に迷わずに済みます。
最後に用意したいのが、緊急時に必要な情報へたどり着くための「手がかり」です。端末のロック解除方法やパソコンのログイン方法、メインのメールアドレス、パスワード管理アプリの開き方など、家族が必要なときに確認できる形で残しておきます。ただし、銀行の暗証番号やクレジットカード情報を紙にそのまま書いて放置しないようにしてください。
すべての情報を丸ごと共有する必要はありません。たどり着くための手がかりを安全な形で残すことが目的です。国民生活センターは、名刺サイズの紙にロック解除に必要な情報を書き、修正テープで隠して保管する方法を紹介しています。普段は見えず、万一のときにだけコインなどで削って読み取れるため、低コストながらよく考えられたやり方です。

国民生活センターが公開しているデジタル終活についてのパンフレットに、修正テープを使ったテクニックが紹介されている(画像:国民生活センター)
Apple、Googleなど主要サービスもチェックを
主要サービスの生前設定もチェックしておきましょう。Appleには「故人アカウント管理連絡先」があります。iPhoneやMacのApple Account設定から、死後にアカウント内の一部データへのアクセスを申請できる連絡先を指定できます。
Googleには「アカウント無効化管理ツール」があります。一定期間Googleアカウントを利用していない状態が続いた場合に、指定した相手へ通知したり、一部のアカウントデータを共有したりできる仕組みです。
非アクティブと判定する期間は3カ月、6カ月、12カ月、18カ月から選べ、データを受け取る相手は最大10人まで指定できます。
Facebookには、亡くなった後のアカウントを「追悼アカウント」として扱う仕組みがあります。生前に追悼アカウント管理人を指定しておくと、アカウントが追悼プロフィールになった後、管理人がプロフィール写真やカバー写真の変更、固定投稿の作成、新しい友達リクエストへの対応などを行えます。
すべてのサービスを一度に設定する必要はありません。日常的に使っているメール、クラウドストレージ、写真、SNS、動画投稿、収益が発生しているサービスから手をつけるのが現実的でしょう。

Facebookのアカウントセンターで死後に追悼プロフィールにするか、削除するかを設定しておくことができる(画像:Facebook)
デジタル終活は、家族のためだけでなく自分のためにもなる
デジタル終活というと面倒に聞こえますが、実際にやることは、それほど難しくありません。まずは、使っているサービスを一覧化するところから始めましょう。
若い人にとっては、これは終活というより、不要アカウントの見直しにもなります。使っていないサービスを解約でき、お金の流れがクリアになり、放置アカウントのリスクも下がります。
そして万一のときには、家族が途方に暮れずにすみます。親に対して「終活をしておいて」と言うと重く聞こえるかもしれませんが、「使っているネット銀行やサブスクだけ、一度整理しておこう」と話せば、家計やスマホの見直しの延長として切り出しやすくなります。
デジタル終活は、人生の終わりに向けた準備だけではなく、いまの暮らしを見える化する作業でもあります。自分のアカウントを棚卸ししながら、親や家族とも、必要な手がかりをどう残すか話してみてはいかがでしょうか。