「就職エージェント」までもが学生を脅す…就職活動をやめさせる「オワハラ」横行 金銭を要求したケースも
企業の内定を得た学生に就職活動の終了を迫る「オワハラ」を巡って、本来は学生の取り組みを支援すべき仲介業者によるトラブルが頻発している。憲法が保障する「職業選択の自由」を侵害する行為にあたるが、金銭を要求するなど恐喝まがいの悪質な事例も発生。大学側が文書で注意喚起する事態となっている。(中根政人)
◆人材を紹介する契約を結んだ企業に内定者を送り込むために
「オワハラ」とは、「就活終われハラスメント」を略した言葉。厚生労働省は、自社の内定や内々定と引き換えに、他社への就活をやめるよう強要するといった事例を挙げる。
元々は、企業が大学の新卒予定者を囲い込むなどの行為が中心だったが、近年は、就活の専門知識を持つアドバイザーが学生をサポートする「就職エージェント」の事業者が、人材紹介の契約を結んだ企業にまとまった内定者を送り込むために、学生側に強圧的な対応を示すケースが問題視されてきている。
政府は3月24日、2028年春に卒業予定の学生の就活に際して、経済団体や業界団体に採用ルール(原則、大学4年時の6月1日に採用選考を開始、10月1日以降に内定)の順守を求める文書を発出。その中で、オワハラが行われることのないよう要請している。

◆「学生が内定を辞退するとエージェントの努力が水の泡」だから
大学側も、就職エージェントによるオワハラの問題に危機感を強める。中央大は3月中旬、「金銭的な脅しを伴う極めて悪質で、法的な根拠も乏しい威嚇行為が確認されている」として、不当な要求を受けた場合は、内容や日時、担当者名などをメモや録音で記録に残すなど、注意を呼びかける文書をホームページに出した。キャリアセンターの松村祐明副部長は「オワハラの関係で文書を出したのは今回が初めて」と述べた上で「学生の多くがエージェントを使って就活をするのが実態」と説明する。
立教大のキャリアセンターも、同時期にX(旧ツイッター)で、悪質な就職エージェントに宛ててオワハラをやめるよう求める投稿をした。担当者は「今年に入って、特に相談が増えた。かなり新しい傾向だ」と分析する。

オフィスが密集する東京都心(資料写真)
少子化に伴い、各企業による大学新卒者の採用競争は激化している。企業の採用活動に詳しい「人材研究所」ディレクターの安藤健氏は、オワハラの背景について「就職エージェントは、紹介した学生が(契約相手の)企業に内定・入社して初めて成功報酬を得る。報酬は学生1人当たり平均で100万円程度。メーカーなどは成功報酬が高い。学生が内定を辞退した場合、エージェントの努力が水の泡になってしまう」と解説する。
就職エージェントを含む人材紹介企業の業界団体「日本人材紹介事業協会」の担当者は、是正を求めようにも悪質な事業者へのアクセス自体が困難と明かす。
◆おかしいと思ったら要求に応じず、大学などに相談を
オワハラを抑止していくためには、どのように対処すべきか。就活の事情に精通する進路指導アドバイザーの倉部史記氏は「大学側は、就職エージェントの業務の仕組みなど、早い段階で学生に必要な情報を伝えるべきだ。学生は、何かおかしいと思った時にはエージェントの要求に応じず、大学などに相談することだ」と訴える。
法政大の田中研之輔教授(キャリア開発)は「学生はこの問題に1人で対応せず、外部と情報共有する姿勢が大事だ。自分が置かれた状況を個人的な問題としてとらえるのではなく、就職活動という仕組みの中での自分の現在の位置を俯瞰(ふかん)的・客観的にとらえる視点も重要になってくる」と呼びかける。

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