デザイン「攻めすぎ」 日産「新型JUKE EV」は成功するのか?――「3期ぶり黒字」見通しで反転攻勢、再生の旗印となるか

欧州戦略の核となる新型JUKE

 日産は2026年4月中旬、欧州向けの新型「JUKE(EV)」を公開した。第3世代となる同モデルは完全電動化され、2027年春に欧州市場へ投入される予定である。プラットフォームには「ARIYA」や「LEAF」で実績のあるCMF-EVを採用し、英国サンダーランド工場で生産される。新型JUKEは日産の欧州電気自動車(EV)ラインアップの中心モデルと位置付けられ、MICRA、LEAF、ARIYAに続く車種として加わる。

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 また日産は2026年3月、位置情報を活用し周辺の店舗や施設情報を提供するアプリ「Nissan Deals」の提供を開始した。当面は英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの5か国での展開となるが、Googleシステム搭載車であれば、車載Google Playから直接アプリをダウンロードして利用できる。

 こうした動きから、同社の欧州EV展開が進んでいる状況が読み取れる。ただし新型JUKEのデザインについては「攻めすぎ」との見方もあり、欧州市場では評価がわかれている。

直線基調へ激変した新デザイン

 現行モデルは丸みを帯びた形で親しみやすさを打ち出していたが、新型JUKEはそれとは対照的に、直線を基調とした近未来的な姿へと大きく方向を変えた。

 従来の特徴であった曲線による独特の外観や、丸いヘッドランプは姿を消し、平面を組み合わせた多角形的な造形へと改められている。ヘッドランプも丸型から六角形に変わり、全体としてやや冷たい印象を与える仕上がりとなっている。

 この大きな変更については、「進化」と見る意見と、「やりすぎ」と受け止める見方がわかれている。ただし初代JUKEも2010(平成22)年の登場時には賛否がありながら、結果として個性ある小型スポーツタイプ多目的車(SUV)としての立場を築いてきた経緯がある。今回の新型JUKEが引き継いでいるのは形そのものではなく、「新しさ」を打ち出す姿勢だといえる。

 もっとも、電動化へ全面的に移行するなかで、従来の持ち味が失われるおそれもある。外観や見せ方の見直しがブランドとしての価値を保つことにつながるのか、それとも従来との断絶と受け取られるのかが問われている。

熾烈を極める欧州小型EV市場

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新型「JUKE(EV)」(画像:日産自動車)

 欧州市場は、2020年ごろの見通しほど急速なEV化にはなっていないものの、中国メーカーが販売を伸ばしており、EV市場の競争は着実に激しくなっている。新型JUKEが属するコンパクトSUVのEV領域は、現時点では競合が多くないが、2026年秋にはVWが新型モデルの投入を予定しており、競争環境が大きく変わる可能性が高い。

 このクラスの価格帯は、エントリーモデルで3万ユーロ(554万円)前後となる。つまり、これまでとはEVの買い手層が異なり、選ぶ際の基準も変わってきている。航続距離や室内の広さといった基本性能に加え、「見た目」と「操作画面や使い勝手」が競争力を左右する要素になりつつある。

 今後の競争を見据えると、かつて「見た目で市場を開いた代表的なモデル」であるJUKEを再び投入する日産の判断には一定の合理性がある。新型JUKEは過去の延長ではなく、感情面の価値を軸にEV市場へ戻るモデルと位置付けられる。

聖域なき国内外拠点の構造改革

 新型JUKEの生産拠点であるサンダーランド工場は、日産の欧州戦略の中心を担う施設である。同工場は2013年からリーフの生産を続けてきたが、「EV36Zero」プロジェクトの一環として2025年に生産ラインを見直し、2025年12月からは三代目LEAFの生産も始めている。敷地内には、中国のエンビジョングループ傘下のバッテリー企業AESCの大規模工場もあり、EV生産を一体で支える体制が整っている。

 一方で、こうした投資の流れとは別に、工場の運営は大きな転換期を迎えている。日産は2025年5月に公表した経営再建策「Re:Nissan」に基づき、サンダーランド工場の2本ある生産ラインを1本にまとめ、実質的に生産能力を半分にする方針を固めた。あわせて欧州全体で従業員のおよそ10%にあたる900人の削減にも踏み切る。背景には欧州での日産のシェア低下がある。2015年に3.9%だったシェアは2025年には2.2%まで下がった。これに対し、上海汽車集団の2.3%や比亜迪(BYD)の1.4%など中国勢が存在感を強めている。結果として工場の稼働率は2025年実績で45.5%にとどまっている(『日本経済新聞』2026年5月7日付け)。

 この「選択と集中」の動きは日本国内にも及んでいる。日産は2027年度末までに、国内の主力拠点のひとつである追浜工場(神奈川県横須賀市)での車両生産を終え、生産機能を日産自動車九州へ移すことを決めた。同工場で働く約2400人のうち、九州への移動が難しい従業員については、近くに拠点を持ついすゞ自動車やIHIが採用する意向を示すなど、異例の形で受け皿づくりが進んでいる。欧州のサンダーランド、日本の追浜といった主力拠点を縮めてでも、固定費を減らし効率を高める判断を迫られているのが現在の日産の状況である。

 こうした厳しい環境を乗り切る手段として、欧州では余った設備を中国の奇瑞汽車などと共同で使う構想も出ている。固定費を抑え工場を維持するうえでは現実的な案だが、欧州市場で競合する中国勢の後押しにつながる可能性もある。

 環境規制の見直しが進む一方で、中韓メーカーとの価格競争は一段と強まっている。部品供給網を維持し、拠点の役割を保つには、新型JUKEの投入に加え、他社との関係も含めた難しい判断が続くことになる。

需要に応じた多角的駆動戦略

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新型「JUKE(EV)」(画像:日産自動車)

 新型JUKEは、現行のラインナップに新たに加わるモデルである。まず欧州の車種構成を整理すると、以下のようになる。

・EV:新型JUKE、MICRA、LEAF、ARIYA

・クロスオーバー:二代目JUKE、Qashqai、X-TRAIL

新型JUKEの投入によって、EVラインナップで不足していた部分が補われる形となる。ただし注目すべき点は、EVではないクロスオーバー群も同時に残り続ける点である。二代目JUKEはエンジン車とスプリット型ハイブリッドを採用し、QashqaiとX-TRAILはマイルドハイブリッドやe-POWERを組み合わせている。EVだけでなく、ハイブリッドやe-POWERなど複数の方式が併存する構成になっている。

 この状況は、EV移行期における一時的な対応とも見られるが、地域ごとのEV普及の差を踏まえれば現実的な対応ともいえる。日産は全面的なEV移行に踏み切るのではなく、各市場の需要に応じて複数の選択肢を残す方針を取っている。

付加価値を生む次世代車載アプリ

 新型JUKEと並ぶ注目点として、車載ソフトの進化がある。日産は新型JUKEの発表に先立つ2025年3月20日、4screenと提携し、英国やドイツなど五つの欧州市場で「Nissan Deals」を開始していた。

「Nissan Deals」は、位置情報をもとに飲食店や小売店、給油や充電の設備などの情報をその場で表示するアプリである。Googleシステム搭載車が前提となるが、これによりスマートフォンに近い操作感で車内サービスを利用できるようになる。

 さらに先を見れば、Googleが車内の情報・娯楽分野への関わりを一段と広げる可能性も指摘されている。現時点では複数の仕組みが組み合わさった状態にあるが、車両全体のソフト面の統合が進めば、競争の軸は走行性能などのハード面から、使い勝手などのソフト面へと移っていくとみられる。

 新型JUKEは、こうした「車とソフトの結び付き」を示す存在になり得る。

 新型JUKEの評価の軸は大きく三つにわけられる。第一に大胆な見た目、第二にGoogleを土台とした車載ソフト、第三にコンパクトSUV市場での競争力である。

 このモデルが属するBセグメントは、入門向けで近距離利用を前提とするAセグメントや、40000ユーロを超えるCセグメントとは明らかに狙う層が異なる。価格と使い勝手の両立を重視する利用者が中心となる領域だ。

 EVへの移行の進み方が当初の見通しほど速くないなかで、各社とも車種の拡充に踏み切りにくい状況が続いている。そのなかで、競合が出そろう前に新型JUKEを投入する意味は小さくない。

再生の命運を握る2027年の真価

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新型「JUKE(EV)」(画像:日産自動車)

 日産は新型JUKEの発表と同じ時期に、長期の方針も公表している。そのなかで新型JUKEは、事業を支える中心モデルとして位置付けられている。

 経営面でも、2026年5月13日に発表された2027年3月期の連結業績予想では、最終損益が200億円の黒字と、3期ぶりの黒字化を見込む。前期まで計上されていた構造改革にともなう巨額の減損損失やリストラ費用が一巡し、ようやく反転攻勢の準備が整った形だ。イバン・エスピノーサ社長が「今期も一貫して取り組みを徹底する。業績改善から持続可能性へと軸足を移す」と強調するように、新型JUKEはこの「持続可能な成長」への転換を象徴する役割を担うことになる(『日本経済新聞』2026年5月13日付け)。

 JUKEは2010年の登場以来、欧州で150万人を超える利用者に支えられてきた。2024年の実績では、欧州での販売38万台のうち約3割にあたる10万台を占めており、同地域での主力車種として役割を果たしてきた。

 その中心的な車種を、ブランド全体の立て直しを視野に入れた形で進化させたことになる。一方で、やや前に出た見た目やソフトへの依存が強まることで、他社との差が見えにくくなる懸念もある。

 うまくいけば、「感情面の価値とソフトの一体化」による新しいEV像を示すことになるが、失敗すれば欧州で築いてきた立ち位置を失うおそれもある。強い見た目の演出にすぎないのか、それとも戦略として必然なのか。その評価は2027年の市場が下すことになるだろう。