トヨタは減益、日産もホンダは軒並み赤字なのに、なぜスズキだけ「過去最高」だらけなのか

自動車メーカー各社が決算を発表した。

国内自動車メーカーの決算が出揃った。

ホンダ、日産の赤字決算や、米国の関税影響などもあり減益となったトヨタなど、日本の大手自動車メーカーが軒並み調子を落とす中、1社だけ異なる挙動を示している企業がある。

スズキだ——。

日本車メーカーが関税と電動化の重みに喘ぐなか、スズキだけは売り上げ、純利益が過去最高となった。その理由を辿ると、行き着くのはインドの大衆車市場であり、その先にあるアフリカへの道だ。実はスズキは2025年9月、南アフリカで1100台のジムニーを集めてギネス記録も更新している。

「一人勝ち」ではない、しかし「最も傷が浅い」

一番人気のアルト

「スズキ一人勝ち」という言葉が2026年春の決算シーズンに踊った。スズキの2026年3月期通期決算は、売上収益が前期比8.0%増の6兆2930億円で過去最高純利益も5.6%増の4393億円で過去最高を更新した。一方、営業利益は6229億円で3.1%減と4期ぶりの減益となったが、スズキ自身は減益の理由を「持続的な成長に向けた人財や技術への投資を拡大したことから」と説明している。需要が崩れた減益ではなく、攻めの投資で目先を抑えた"前向きの減益"だ。しかも中期経営計画の初年度として、営業利益率9.9%(目標10%)、ROE13.8%(目標13%)と、いずれも中計目標水準にほぼ到達もしくは上回った(スズキ「2026年3月期 決算短信」)。

2027年3月期こそ、原材料高の影響などで純利益は7年ぶりに減益となる13%減の3800億円と予想しているものの、実質的には“勝って”いる。

画像:スズキ2026年3月期決算説明会資料より引用

他社と比較してみると、スズキの異質さがよく分かる。

トヨタは2026年3月期通期で営業利益21.5%減の3兆7662億円、北米セグメントは前期1043億円の黒字から2986億円の営業損失へ転落した。米国関税政策による営業利益減益影響は通期で1兆3800億円にのぼる(トヨタ自動車「2026年3月期 決算短信」)。

ホンダはさらに深刻だ。通期での営業損失は4143億円。前期の営業利益1兆2134億円からの差は、実に1兆6278億円にもなる。四輪事業単独の営業損失は1兆4111億円にのぼり、EV戦略の見直しに伴って減損損失5214億円、除却損失3314億円、EV関連の引当金繰入6674億円などを一気に積み上げた格好だ(本田技研工業「2026年3月期 決算短信」)。

日産は通期で売上高4.9%減の12兆79億円、営業利益16.9%減の580億円、当期純損失は5331億円となった。決算短信では「米国関税及び為替変動影響の多くをコスト削減活動により相殺した」と説明している(日産自動車「2026年3月期 決算短信」)。

ディーラー在庫12日分、受注残19万台

スズキの決算を牽引したのは、インド市場だ。

スズキは、1981年にインド政府との合弁としてMaruti Suzuki India(マルチスズキ)を設立。いまや、インドの乗用車シェアを長年4割超で握る最大手となっている。「マルチスズキ」はインドの国民車の代名詞であり、スズキ本体の連結業績の屋台骨でもある。

そのマルチスズキの2026年3月期(FY2025-26)の決算が、ほぼ全ての面で上向きだった。

画像:スズキ2026年3月期決算説明会資料より引用

販売台数は総販売242万2713台で過去最高、国内197万4939台と輸出44万7774台もそれぞれ過去最高。売上収益は前期比20.2%増の1兆7437億ルピー(約2兆9640億円※ルピー=約1.7円換算)、純利益は1445億ルピー(約2456億円)で、こちらも過去最高。販売、売上、利益のすべてが揃って史上最高水準を記録した。スズキ本体の2025年暦年世界生産も342万3403台で5年連続増、うちインドだけで225万4449台、海外生産の9割超を占めた(スズキ「2025年12月および年間 四輪車生産・販売・輸出実績」)。

3月末には、販売店の在庫がわずか約12日分まで減り、約19万人の客が納車を待っている状態にあった。うち約13万台が税率18%のGST税率帯の小型車。世界中の自動車メーカーが売れないことに困っているなかで、スズキは売る車が足りないから困っていたのだ。(Maruti Suzuki India「Financial Results for FY2025-26」)。