老後は年金だけで生活できる?70歳代の貯蓄「中央値」と家計収支データから見る老後資金の現実

老後は年金だけで生活できる?70歳代の貯蓄「中央値」と家計収支データから見る老後資金の現実
5月から6月にかけては、自動車税の納付書や住民税の決定通知書などが手元に届き始める時期です。こうした「お金に関する公的なお知らせ」を目にする機会が増えると、ふとご自身の年金や老後の備えについて気にかかることはありませんか。
物価や社会保険料の負担が気になるなか、「老後はいくらあれば安心できるのか」と不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
長寿化により、年金を受け取りながら暮らす期間は20年以上に及ぶ可能性があります。
一方で、実際の年金額や貯蓄状況には大きな個人差があり、平均値だけでは見えにくい現実もあります。
本記事では、日本人の平均寿命を起点に、70歳代の金融資産の実態や年金の受給水準、家計収支の状況を整理しながら、老後のお金について考えていきます。
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日本の平均寿命は男性81歳、女性87歳
老後の年金を考えるうえで、まず意識しておきたいのが「どのくらいの期間、年金を受け取りながら生活する可能性があるのか」という点です。
厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性81.09年、女性87.13年でした。前年と比べると、男性は横ばい、女性は0.01年下回っています。

日本の平均寿命
平均寿命だけを見ると、「男性は81歳、女性は87歳くらいまで」と受け止めがちです。しかし、年金生活を考える場合は、平均寿命だけで判断するのは十分とはいえません。
年金は、原則として65歳から受け取る人が多い制度です。仮に65歳から年金を受け取り始めると、平均寿命まででも男性は約16年、女性は約22年の年金生活が続く計算になります。
さらに、平均寿命はあくまで0歳時点の平均余命であり、65歳まで生きた人がその後どのくらい生きるかを示す「65歳時点の平均余命」とは異なります。
実際に、令和6年簡易生命表では、65歳時点の平均余命は男性19.47年、女性24.38年となっています。
つまり、65歳男性は平均で84歳台まで、65歳女性は89歳台まで生きる見込みがあるということです。
この点を踏まえると、老後生活は「65歳から80歳前後まで」と短く見るよりも、20年から25年程度続く可能性を前提に考える必要があります。
特に女性は男性より平均寿命が長く、配偶者に先立たれた後の生活費や住居費、医療・介護費をどう見込むかも重要です。
【70歳代・二人以上世帯】金融資産保有額の平均と中央値
老後生活が長く続く可能性を考えると、生活費や医療・介護費に備えるためにも、一定の貯蓄を確保しておくことが大切です。
では、現代の70歳代シニアは、どのくらいの金融資産を準備できているのでしょうか。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」から、70歳代の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)を見てみましょう。
※なお、これから確認する金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

「60歳代・70歳代」二人以上世帯の金融資産保有額
金融資産保有額の平均値・中央値
・70歳代:平均値2416万円、中央値1178万円
金融資産保有額の平均値を見ると、70歳代では2416万円と、いわゆる「2000万円」を上回っており、老後も比較的安定した生活が送れそうに見えます。
しかし、中央値は1178万円にとどまっており、実際には「平均ほど資産を持っていない世帯が多数派」であることがわかります。
さらに、60歳代から70歳代にかけて中央値が減少している点からは、退職後に貯蓄を取り崩す生活へ移行している実態も読み取れます。
貯蓄ゼロ世帯の割合
また、一定割合で「貯蓄ゼロ」と回答する世帯も存在します。
70歳代ではおよそ1割の方が該当し、年金や生活保護を頼りに生活しているケースも少なくありません。
高齢期は働く機会が限られるため、収入が公的年金にほぼ依存するケースも多く、家計の余裕は世帯によって大きく異なります。
こうしたデータを見ると、70歳代の家計は「平均貯蓄額」だけでは実態を把握しにくいことが分かります。
国民年金・厚生年金の平均月額
老後に取り崩せる資産が少ない場合、生活費の大部分を公的年金等の収入に頼ることになります。
では、現代のシニアはどのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金のみを受け取る場合と、国民年金+厚生年金を受け取る場合の平均月額を見てみましょう。
【国民年金の平均月額】

国民年金の平均月額
・全体 5万9310円
・男性 6万1595円
・女性 5万7582円
【厚生年金の平均月額】

厚生年金の平均月額
・全体 15万289円
・男性 16万9967円
・女性 11万1413円
※国民年金部分を含む
国民年金の平均月額は5万9310円、基礎年金部分を含む厚生年金の平均月額は15万289円となっています。
ただし、年金額は現役時代の収入や加入期間によって大きくばらつきます。
厚生年金を含めても、受給額は1万円未満から30万円以上まで幅広く分布しており、平均値だけでは実態をつかみにくいのが実情です。
【70歳代・二人以上世帯】家計収支の内訳
続いて、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、二人以上の世帯のうち70歳代・無職世帯の家計収支を見てみましょう。

【二人以上世帯】65歳以上の無職世帯の家計収支
【70歳〜74歳】家計収支の内訳
・消費支出:28万5844円
・非消費支出:3万9127円
・実収入:28万7725円
・収支:ー3万7245円
【75歳以上】家計収支の内訳
・消費支出:24万8460円
・非消費支出:3万1563円
・実収入:25万2798円
・収支:ー2万7225円
70歳〜74歳では月平均で約3万7000円、75歳以上でも約2万7000円の赤字となっており、いずれの年代でも支出が収入を上回る状況が見られます。
年齢を重ねるにつれて外出や消費活動は減少する傾向があるため、75歳以上では支出水準がやや下がり、赤字幅も縮小しています。
ただし、それでも年金収入だけで家計を黒字にするのは簡単ではありません。
今後、平均寿命の延びに伴って老後期間が長くなると、日常生活費に加えて医療費や介護費などの負担が増える可能性も考えられます。
こうした支出に備えるためには、一定の貯蓄を確保しておくことが重要です。
あわせて、資産を預貯金だけで保有するのではなく、状況に応じて資産運用を取り入れることも視野に入れておきたいところでしょう。
まとめにかえて
長寿化により、老後生活は20年〜25年に及ぶ可能性があります。一方で、年金収入だけでは家計が赤字となるケースも多く、貯蓄の取り崩しを前提とした生活が現実となっています。
また、金融資産の平均と中央値には大きな差があり、十分な資産を持つ世帯ばかりではない点も見逃せません。
年金額も個人差が大きく、平均値だけで安心するのは難しい状況です。
老後の生活を安定させるには、年金だけに頼るのではなく、貯蓄や資産運用も含めて備えておくことが重要です。
早い段階から自分の収支を把握し、長期の視点で資金計画を考えておきましょう。
参考資料
・厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
・厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
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