【70歳代】いまどきシニアの貯蓄額《平均・中央値》家計収支・老齢年金受給事情《データから見る実像》
- 【老後夫婦世帯】金融資産の実態を平均と中央値の違いから読み解く格差の構造
- 【老後夫婦世帯】厚生年金の受給額の水準と平均月額
- 厚生年金《平均年金月額》
- 厚生年金《月額階級別受給権者》
- 【老後夫婦世帯】国民年金の受給額の実態と平均月額
- 国民年金《平均年金月額》
- 国民年金《月額階級別受給権者》
- 【老後夫婦世帯】生活費の支出構造と税・社会保険料の内訳
- 【老後夫婦世帯】物価上昇と年金収入の関係が家計に与える影響
- 物価上昇で増える生活費
- 年金収入と物価の差
- 赤字を防ぐための対策
- 【老後夫婦世帯】赤字を埋めるもう一つの手段 働きながら年金を受け取るという考え方
- 貯蓄だけに頼る家計には限界がある
- 無理のない範囲で収入を補うという選択
- 働くことで得られるのは収入だけではない
- ただし「年金との関係」には注意が必要
- 【老後夫婦世帯】在職老齢年金の改正内容と2026年の変更点の整理
- 「在職老齢年金制度」の見直し
- まとめにかえて:老後資金のバランスはどのように考えるべき?
【65歳以上の無職世帯】夫婦ふたり暮らしなら「生活費・直接税や社会保険料」などは毎月いくらかかる?

【70歳代】いまどきシニアの貯蓄額《平均・中央値》家計収支・老齢年金受給事情《データから見る実像》
物価の上昇が続くなかで、老後資金をどのように確保していくかは、これまで以上に現実味を帯びた課題となっています。
いわゆる「老後2000万円問題」を契機に、年金だけで暮らす難しさは広く認識されるようになりました。ただし、実際の70歳代の夫婦世帯の家計は一様ではなく、資産状況には大きなばらつきが見られます。
十分な金融資産を持つ世帯がある一方で、金融資産をほとんど保有していない、あるいはまったく持たない世帯も一定数存在しています。多くの世帯では、年金収入だけでは生活費をカバーしきれず、不足分を貯蓄の取り崩しで補っているのが現状です。
本記事では、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額の分布や家計収支の実態についてデータをもとに確認するとともに、公的年金の受給水準についても具体的に見ていきます。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【老後夫婦世帯】金融資産の実態を平均と中央値の違いから読み解く格差の構造
J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとに、70歳代・二人以上世帯の金融資産の保有状況を確認していきます。
※ここでいう金融資産には、預貯金に加えて、株式や投資信託、保険商品などが含まれており、日常的な支払いに使う普通預金残高は含まれていません。

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)
同調査によると、70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は2416万円となっています。ただし、平均値は高額資産を持つ世帯の影響を受けやすいため、実態を把握するうえでは中央値も重要な指標です。
中央値は1178万円となっており、多くの世帯がこの水準付近に分布していることが読み取れます。
世帯ごとの貯蓄額分布は以下のとおりです。
・金融資産非保有:10.9%
・100万円未満:4.5%
・100~200万円未満:5.1%
・200~300万円未満:3.7%
・300~400万円未満:3.9%
・400~500万円未満:2.9%
・500~700万円未満:6.4%
・700~1000万円未満:6.7%
・1000~1500万円未満:11.1%
・1500~2000万円未満:6.7%
・2000~3000万円未満:12.3%
・3000万円以上:25.2%
・無回答:0.6%
貯蓄額の分布を見ると、200万円未満の世帯が20.5%を占める一方で、3000万円以上の金融資産を保有する世帯も25.2%に達しており、老後の資産状況にははっきりとした差が確認できます。
また、100万円未満から300万円未満といった比較的少額の層も一定割合存在する一方で、1000万円以上を保有する世帯も複数の価格帯に分かれており、分布のばらつきの大きさがうかがえます。
貯蓄水準は、退職金の有無や現役時代の収入、相続の有無、さらに健康状態など、さまざまな要因によって左右されます。加えて、公的年金の受給額も加入期間や働き方によって異なるため、同じ年代であっても家計のゆとりには大きな差が生じています。
こうした状況のなかで、金融資産が限られている世帯にとっては、年金収入だけで日常の生活費をまかなうのが難しいケースも少なくありません。
そのため、老後を安定して過ごすには、それぞれの状況に応じた計画的な家計管理が欠かせません。体力に余裕のあるうちにパートなどで収入を補う、不動産や金融商品を活用して副収入を得るといった選択肢を早い段階で検討しておくことが、将来の安心につながります。
【老後夫婦世帯】厚生年金の受給額の水準と平均月額
続いて、公的年金の受給水準を確認します。
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、民間企業などに勤めていた人が受け取る厚生年金(第1号)の平均月額は次のとおりです。

厚生年金の受給状況
厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されていますが、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下、記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。
※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれています。
厚生年金《平均年金月額》
・〈全体〉平均年金月額:15万289円
・〈男性〉平均年金月額:16万9967円
・〈女性〉平均年金月額:11万1413円
厚生年金の平均月額は、全体で15万289円となっています。
最も多い層は10万円台後半から18万円台で、15万~19万円台に多くの受給者が集中しています。一方で、10万円未満の層も一定数存在しており、受給額には幅があることが分かります。
厚生年金《月額階級別受給権者》
・~1万円:4万3399人
・1万円以上~2万円未満:1万4137人
・2万円以上~3万円未満:3万5397人
・3万円以上~4万円未満:6万8210人
・4万円以上~5万円未満:7万6692人
・5万円以上~6万円未満:10万8447人
・6万円以上~7万円未満:31万5106人
・7万円以上~8万円未満:57万8950人
・8万円以上~9万円未満:80万2179人
・9万円以上~10万円未満:101万1457人
・10万円以上~11万円未満:111万2828人
・11万円以上~12万円未満:107万1485人
・12万円以上~13万円未満:97万9155人
・13万円以上~14万円未満:92万3506人
・14万円以上~15万円未満:92万9264人
・15万円以上~16万円未満:96万5035人
・16万円以上~17万円未満:100万1322人
・17万円以上~18万円未満:103万1951人
・18万円以上~19万円未満:102万6888人
・19万円以上~20万円未満:96万2615人
・20万円以上~21万円未満:85万3591人
・21万円以上~22万円未満:70万4633人
・22万円以上~23万円未満:52万3958人
・23万円以上~24万円未満:35万4人
・24万円以上~25万円未満:23万211人
・25万円以上~26万円未満:15万796人
・26万円以上~27万円未満:9万4667人
・27万円以上~28万円未満:5万5083人
・28万円以上~29万円未満:3万289人
・29万円以上~30万円未満:1万5158人
・30万円以上~:1万9283人
【老後夫婦世帯】国民年金の受給額の実態と平均月額
厚生年金の加入歴がなく、国民年金(老齢基礎年金)のみを受け取る人の平均月額は以下の通りです。

国民年金の受給状況
国民年金《平均年金月額》
・〈全体〉平均年金月額:5万9310円
・〈男性〉平均年金月額:6万1595円
・〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金《月額階級別受給権者》
・1万円未満:5万1828人
・1万円以上~2万円未満:21万3583人
・2万円以上~3万円未満:68万4559人
・3万円以上~4万円未満:206万1539人
・4万円以上~5万円未満:388万83人
・5万円以上~6万円未満:641万228人
・6万円以上~7万円未満:1715万5059人
・7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均月額は5万9310円で、男性が6万1595円、女性が5万7582円となっています。
分布を見ると、5万円台から6万円台が中心で、満額に近い水準の受給者が多い一方、加入期間が短い場合にはさらに低い金額になるケースもあります。
仮に「厚生年金の男性平均月額」を受け取る夫と、「国民年金の女性平均月額」を受け取る妻の夫婦世帯であれば、年金収入は月およそ22万7000円が一つの目安となります。
ただし、実際には夫婦ともに厚生年金を受給しているケースや、双方が国民年金のみのケースなど組み合わせはさまざまです。
この年金水準で、実際の生活費をどこまでまかなえるのでしょうか。次に家計収支の実態を見ていきます。
【老後夫婦世帯】生活費の支出構造と税・社会保険料の内訳
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」をもとに、65歳以上の夫婦のみ・無職世帯の標準的な家計収支を確認します。

65歳以上の生活費
《収入》25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円
《支出》28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
・食料:7万6352円
・住居:1万6432円
・光熱・水道:2万1919円
・家具・家事用品:1万2265円
・被服及び履物:5590円
・保健医療:1万8383円
・交通・通信:2万7768円
・教育:0円
・教養娯楽:2万5377円
・その他の消費支出:5万2433円
■うち非消費支出:3万356円
・直接税:1万1162円
・社会保険料:1万9171円
《家計収支》
・ひと月の赤字:3万4058円
・エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%
・平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%
この世帯の平均月収は25万2818円で、その中心は公的年金などの社会保障給付となっています。一方、支出は28万6877円に達し、食費や光熱費、医療費といった消費支出に加え、税金や社会保険料などの非消費支出も3万356円と一定の負担になっています。
その結果として、毎月3万4058円の赤字が発生しており、不足分は貯蓄を取り崩すことで補う必要があります。
収入を大きく増やすことが難しい高齢世帯にとって、この赤字状態が続けば、貯蓄残高への影響は決して小さくありません。次の段落で詳しくシミュレーションしていきます。
【老後夫婦世帯】物価上昇と年金収入の関係が家計に与える影響
物価の上昇は、高齢世帯の家計に直接的な影響を与えます。
年金収入を主な柱とする場合、物価上昇によって支出が増え、生活費を十分にカバーできなくなるリスクが高まります。ここでは、インフレが家計に与える影響を具体的に確認します。
物価上昇で増える生活費
以下は、2026年2月分の消費者物価指数です。

消費者物価指数CPI:2026年(令和8年)2月分
・総合指数は2020年を100として112.7…前年同月比は1.5%の上昇
・生鮮食品を除く総合指数は112.1…前年同月比は1.8%の上昇
・生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は111.9…前年同月比は2.4%の上昇
食料品や光熱費、日用品といった生活必需品の値上がりにより、高齢世帯の支出は増加傾向にあります。とりわけ食費や医療費の上昇は、年金生活世帯にとって重い負担となります。
年金収入と物価の差
前述のとおり、厚生年金の平均月額は約15万円、国民年金は約6万円です。
しかし、生活費が上昇する環境では、年金だけで必要な支出をまかなえないケースが増えています。支出が収入を上回る場合、貯蓄の取り崩しや短時間の就労を検討せざるを得ない世帯も少なくありません。
赤字を防ぐための対策
支出の増加に備えるためには、早い段階からの資金計画が重要になります。
短時間の就労による収入の補完や、投資・不動産などを活用した副収入の確保、さらには年金の繰上げ・繰下げ受給の検討など、各世帯の状況に応じた対策を講じることが、老後の安定につながります。
【老後夫婦世帯】赤字を埋めるもう一つの手段 働きながら年金を受け取るという考え方
年金と貯蓄だけで家計を維持することが難しい場合、一つの選択肢として浮上するのが「働きながら収入を補う」という考え方です。実際、多くのシニア世帯では、貯蓄の取り崩しに加えて就労収入を組み合わせることで、家計の安定を図っています。
貯蓄だけに頼る家計には限界がある
毎月数万円の赤字であっても、それが長期間続けば貯蓄は確実に減少していきます。とくに物価上昇が続く環境では、支出が想定以上に増え、取り崩しのペースが早まる可能性があります。
一方で、老後は収入を大きく増やすことが難しいため、「今ある資産を減らしながら生活する」状態に不安を感じる人も少なくありません。こうした状況を背景に、収入源を一つ増やすという発想が現実的な対策として注目されています。
無理のない範囲で収入を補うという選択
近年は、体力や生活スタイルに合わせて働き方を選ぶシニアが増えています。
・短時間のパート勤務
・これまでの経験を活かした再雇用
・自営業やフリーランス的な働き方
こうした就労によって月数万円の収入を得るだけでも、家計への影響は小さくありません。たとえば月3万円の収入があれば、平均的な赤字をほぼ解消できる計算になります。
「フルタイムで働く」のではなく、「不足分だけを補う」という考え方が現実的なポイントです。
働くことで得られるのは収入だけではない
就労のメリットは収入面にとどまりません。

高齢者が仕事を続ける理由
「収入のため」に働いているシニアが多いですが、仕事を通じてやりがいを感じたり、社会と関わりを持ち続けることで孤独に陥りにくく、そして健康にも気を遣うという方も多くいる傾向があります。
高齢者の就労は、
・社会とのつながりを維持できる
・生活リズムが整う
・健康維持につながる
といった側面もあり、結果的に医療費や介護リスクの抑制につながる可能性もあります。
老後の生活を支える手段として、「働くこと」を前向きに捉える人が増えている背景には、こうした複合的なメリットがあります。
ただし「年金との関係」には注意が必要
一方で、就労収入を得る場合には、公的年金との関係を理解しておくことが欠かせません。
給与や賞与の額によっては、年金の一部が支給停止となるケースがあるためです。特に厚生年金を受給している場合は、収入とのバランスによって受給額が調整される仕組みが設けられています。
そのため、「働けば働くほど得になる」とは限らず、制度の仕組みを踏まえたうえで働き方を考えることが重要です。
こうした就労と年金の関係を具体的に定めているのが、「在職老齢年金制度」です。次章では、その仕組みと最新の見直し内容について詳しく確認していきます。
【老後夫婦世帯】在職老齢年金の改正内容と2026年の変更点の整理
2025年6月に成立した年金制度改革関連法により、2026年4月から在職老齢年金制度の見直しが実施されます。
今回の改正は、多様な働き方やライフスタイルに対応することを目的としており、パートなどで働く人の社会保険加入対象の拡大(いわゆる「106万円の壁」の見直し)や、遺族年金制度の変更なども含まれています。
ここでは特に、高齢就労者への影響が大きい在職老齢年金制度の変更点を確認します。
「在職老齢年金制度」の見直し

在職老齢年金制度
在職老齢年金制度とは、60歳以降に老齢厚生年金を受給しながら働く場合、年金額と給与・賞与の合計が一定基準を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる仕組みです。
(※老齢基礎年金は対象外で全額支給されます)
この基準額は毎年度見直されています。
・2022年度:47万円
・2023年度:48万円
・2024年度:50万円
・2025年度:51万円
・2026年度:62万円
2026年4月からは、この基準額が51万円から62万円へと大きく引き上げられます。厚生労働省の試算では、この変更により新たに約20万人が年金を全額受給できる見込みです。
基準の引き上げによって、年金減額を意識して就労を控えていた高齢者にとっても、より柔軟に働き方を選びやすい環境が整うと考えられます。
まとめにかえて:老後資金のバランスはどのように考えるべき?
物価上昇が続くなかで、老後の家計管理の重要性は一段と高まっています。
70歳代・二人以上世帯の貯蓄状況を見ると、資産に余裕のある世帯とそうでない世帯の差は大きく、公的年金だけで生活費をまかなうことが難しいケースも少なくありません。不足分を貯蓄で補う構造は、多くの世帯に共通する傾向といえるでしょう。
その一方で、2026年4月からは在職老齢年金の支給停止基準額が引き上げられ、一定水準までの収入であれば年金を減額されずに受給できる可能性が広がります。働きながら年金を受け取るという選択肢は、これまで以上に現実的なものになっていきます。
制度の変化も踏まえながら、自身の貯蓄や収入見通しを把握し、家計のバランスを見直していくことが、安定した老後生活を支えるポイントになるでしょう。
参考資料
・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
・厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
・総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)3月分」
・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
・内閣府「令和7年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向」
・日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
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