75歳以上「後期高齢シニア夫婦」ふたり暮らしのリアルな家計簿。支出の中で見落とされがちな項目とは?《医療費窓口負担1割~3割も解説》
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】二人暮らしの家計はなぜ赤字になりやすいのか?
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯:毎月の収入と支出
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】支出の中で見落とされがちな介護費の実態
- ゆとり生活との差額に注意
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】年金と物価上昇が家計に与える影響
- 年金は緩やかにしか増えない
- 生活費はじわじわと押し上げられる
- 問題は「赤字額」よりも購買力の低下
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】年金はいくら受け取れるのか?
- 【年金一覧表】75歳~90歳以上「厚生年金・国民年金」5歳刻みの平均年金月額
- 年金からも天引きされるお金がある!
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】貯蓄は安心材料といえるのか?貯蓄額をグラフで見てみる
- 資産寿命を延ばすために
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】平均では捉えきれない老後格差の現実
- 「平均」は実態より高く出やすい
- 赤字を補える期間に差が出る
- 生活の選択肢にも影響する
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】資産は何年もつのか?資産寿命の詳細と老後支出
- 想定に含まれていない「老後特有の支出」
- 「平均があるから安心」とは言えない
- 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】医療費はどこまで増えるのか?負担割合は?
- 負担割合と判定基準
- まとめにかえて:老後家計の現実を踏まえた見通し
「手元にいくらあるか」よりも「この先何年持つか」」が大切。老後家計の現実を踏まえた見通しを

75歳以上「後期高齢シニア夫婦」ふたり暮らしのリアルな家計簿。支出の中で見落とされがちな項目とは?《医療費窓口負担1割~3割も解説》
新緑がまぶしく、初夏のさわやかな風を感じる季節となりました。大型連休(ゴールデンウィーク)が明けて生活のペースが落ち着きを取り戻したこの5月中旬は、ご自身やご家族の「これからの暮らしとお金」について、ゆっくりと見直すのに適したタイミングです。
日本は現在、ひとつの大きな転換点を迎えています。2026年には「団塊の世代」がすべて75歳以上となり、社会の重心が本格的に「後期高齢期」へと移りました。もはや高齢化は遠い未来や統計上の話ではなく、日々の家計や家族のあり方に直結する身近な現実となっています。
「年金だけで生活は成り立つのか」「蓄えてきた資産はどれくらいの期間持つのか」——こうした切実な問いは、シニア世代のみならず、将来に備える現役世代にとっても避けて通れないテーマです。
本記事では、公的データをもとに「75歳以上の夫婦世帯」に焦点を当て、生活費・年金・貯蓄の実態を具体的な数値から読み解いていきます。
あわせて、75歳以上の全員が加入する「後期高齢者医療制度」の基本についても整理し、老後家計のリアルを立体的に捉えていきましょう。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】二人暮らしの家計はなぜ赤字になりやすいのか?
まずは、後期高齢シニア夫婦の家計全体の姿を見ていきましょう。
参照するのは、総務省「家計調査 家計収支編(2024年)」です。対象は75歳以上の無職・二人以上世帯で、平均世帯主年齢は80.8歳、持ち家率は95.4%となっています。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯:毎月の収入と支出

【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯の生活費
実収入: 25万2506円
・うち社会保障給付(主に公的年金給付): 20万7623円
実支出:27万3398円
・消費支出: 24万2840円
・非消費支出: 3万558円
毎月の家計収支
・実収入:25万2506円
・実支出:27万3398円
・家計収支:▲2万892円(赤字)
・黒字率:▲9.4%
・平均消費性向(※1)109.4%
・エンゲル係数(※2):31.3%
収入と支出を差し引くと、月々の家計収支は▲2万892円となります。
75歳以上の後期高齢シニア夫婦では、平均すると毎月およそ2万円を貯蓄で補っている計算になります。
年金を中心とした収入だけでは生活費を完全に賄うことは難しく、継続的に貯蓄を取り崩すことが前提となっている状況が見て取れます。
赤字額そのものは大きく見えなくても、これが長期間にわたって続けば、家計への影響は確実に積み重なっていきます。
家計調査では、次のような指標も示されています。
・※1 平均消費性向:109.4%
・※2 エンゲル係数:31.3%
平均消費性向は、可処分所得を上回る支出が続いていることを示し、エンゲル係数は、生活費の中で食費が占める割合を表します。
これらの数値からは、限られた収入の中で支出の調整余地が小さくなっている家計の姿が浮かび上がります。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】支出の中で見落とされがちな介護費の実態
後期高齢シニア夫婦の家計を詳しく見ていくと、現役世代とは異なる特徴的な支出構造が見えてきます。特に注目したいのが、「住居費」と「将来に備える費用」の2点です。
支出の特徴1:住居費が低め
75歳以上の後期高齢シニア夫婦世帯では、持ち家率が95.4%と非常に高く、住宅ローンを支払っている世帯は1.6%にとどまっています。
多くの世帯がすでに住宅の取得を終えており、家賃やローンといった大きな固定費をほとんど抱えていない点が特徴です。
このように住居費の負担が軽いことは、年金中心の家計を支える重要な要素といえます。一方で、他の支出が増えた際に調整できる余地が限られているという側面もあります。
つまり、「住居費が低いから安心」と単純には言い切れない構造でもあるのです。住居費については、次の段落でさらに詳しく見ていきます。
支出の特徴2:介護費用が含まれていない
もうひとつ押さえておきたいのが、家計調査で示される支出は、あくまで日常生活を前提としたものであるという点です。
訪問介護や施設利用といった介護サービスにかかる費用は、原則として含まれていません。
介護が必要になった場合、支出は一時的に増えるだけでなく、長期間にわたって継続する可能性があります。その結果、すでに見られる月2万円前後の赤字はさらに拡大し、貯蓄の取り崩しペースを早める要因となります。
ゆとり生活との差額に注意
生活水準の目安として、生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」では、夫婦2人世帯の老後生活費を次のように示しています。
・最低限の日常生活費:月23万9000円
・ゆとりある老後生活費:月39万1000円
一方、後期高齢シニア夫婦の平均的な収入は、月25万円前後となっています。
これは「最低限の生活費」をわずかに上回る水準にとどまり、「ゆとりある生活」を想定すると、毎月およそ13万円の差が生じる計算になります。
この差をどのように捉え、どの水準で生活設計を行うかによって、老後の満足度や安心感は大きく変わってきます。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】年金と物価上昇が家計に与える影響
ここまで、75歳以上の後期高齢シニア夫婦の家計を見ると、平均では毎月およそ2万円の赤字となっていることがわかりました。
しかし、月々の赤字額の他にも注目すべきなのは、物価の動きが家計に与える影響です。
年金は緩やかにしか増えない
公的年金は、物価や賃金の動向を踏まえて改定される仕組みですが、その変動は緩やかなものにとどまります。マクロ経済スライドによって調整されるため、物価が上昇しても同じペースで受給額が増えるとは限りません。
そのため、名目上の年金額が大きく変わらなくても、日々の生活に使える実質的な価値は徐々に低下していく可能性があります。
生活費はじわじわと押し上げられる
一方、食料や光熱費、日用品など、日常生活に欠かせない支出は、物価の影響を直接受けます。

消費者物価指数CPI:2026年(令和8年)3月分
・総合指数は2020年を100として112.7(前年同月比は1.5%の上昇)
・生鮮食品を除く総合指数は112.1(前年同月比は1.8%の上昇)
・生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は111.9(前年同月比は2.4%の上昇)
消費者物価指数からも分かる通り、物価は着実に上昇を続けています。
このような環境下では、削減の余地が小さい支出から先に負担が重くなっていきます。その結果、これまで月2万円程度だった赤字が、気づかないうちに拡大していく可能性もあります。
問題は「赤字額」よりも購買力の低下
重要なのは、家計簿上の赤字額そのものだけではありません。年金という安定収入があっても、その金額で購入できるモノやサービスの量が減っていけば、生活水準は実質的に低下していきます。
老後の家計を考える際には、「いくら受け取っているか」ではなく、「その金額で何がどれだけ賄えるのか」という実質購買力の視点が欠かせません。
物価上昇は一度に家計へ大きな影響を与えるものではなく、時間をかけて徐々に負担を増やしていきます。その影響は、貯蓄の取り崩しペースにも直結します。だからこそ、「資産寿命」を考えるうえでも、この前提を踏まえておくことが重要です。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】年金はいくら受け取れるのか?
後期高齢者夫婦の家計において、最も大きな割合を占める収入源が公的年金です。ここでは、75歳以上を対象に、年齢階層ごとの平均的な年金月額を確認していきます。
年金額は、
・国民年金(老齢基礎年金)のみ
・厚生年金(老齢基礎年金を含む)
の2つに分けて整理します。
厚生年金には複数の区分がありますが、ここでは民間企業等に勤務していた人が受け取る「厚生年金保険」(※)を指しています。※厚生年金は第1号から第4号まで区分があります。この記事では、民間企業などに勤務していた方が受け取る「厚生年金保険(第1号)」を「厚生年金」として解説します。
なお、厚生年金の金額には、老齢基礎年金分が含まれている点には注意が必要です。
【年金一覧表】75歳~90歳以上「厚生年金・国民年金」5歳刻みの平均年金月額

公的年金「年齢階層別」平均年金月額
厚生年金
・75歳~79歳:15万1377円
・80歳~84歳:15万7689円
・85歳~89歳:16万5486円
・90歳以上:16万4027円
国民年金
・75歳~79歳:5万9346円
・80歳~84歳:5万8454円
・85歳~89歳:5万9066円
・90歳以上:5万5633円
例えば、夫が厚生年金、妻が国民年金を受給している夫婦世帯の場合、75歳時点での合計年金額は月およそ21万円(※)がひとつの目安となります。
※75歳時点の平均月額厚生年金15万1377円+国民年金5万9346円の合計額 がひとつの目安となります。
この水準は、家計調査における「社会保障給付」(20万7623円)とほぼ一致します。
年金からも天引きされるお金がある!
ただし、この金額がそのまま生活費として使えるわけではありません。年金からは所得税や住民税に加え、介護保険料や後期高齢者医療保険料などがあらかじめ差し引かれます。
現役を引退した後も、税金や社会保険料の負担は形を変えて続いていきます。老後の家計を考える際に重要となるのは、年金の額面ではなく、天引き後に実際に使える「手取りベース」の収入です。
次の章では、こうした収支構造を前提として、75歳以上世帯がどの程度の貯蓄を保有し、どのように取り崩しているのかを見ていきます。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】貯蓄は安心材料といえるのか?貯蓄額をグラフで見てみる
年金収入だけでは不足する生活費を補う役割を担うのが、これまでに蓄えてきた貯蓄です。総務省「家計調査 家計収支編 2024年〔二人以上の世帯〕」(第3-2表)をもとに、その実態を確認していきましょう。
ここでは、75歳以上の後期高齢シニア世帯がどの程度の資産を保有しているのかを見ていきます。対象世帯の平均世帯主年齢は80.6歳です。

【グラフ】75歳以上「後期高齢シニア」二人以上世帯の貯蓄平均は2362万円
貯蓄:2362万円
金融機関:2357万円
・通貨性預貯金:752万円(31.8%)
・定期性預貯金:815万円(34.5%)
・生命保険など:350万円
・有価証券:440万円(18.4%)
・貸付信託・金銭信託:6万円
・株式:238万円
・債券:41万円
・投資信託:155万円
金融機関外:5万円
負債:23万円
資産寿命を延ばすために
資産構成を見ると、預貯金が全体の約66%を占める一方で、株式や投資信託などの有価証券は2割弱にとどまっています。
元本の安定性を重視した配分である一方、老後が長期化するほど新たな課題も見えてきます。
物価が上昇する局面では、預貯金は額面上は減らなくても、実質的な購買力は徐々に低下していきます。
そのため、老後資金を考える際には、「貯蓄額」だけでなく「資産寿命をどう延ばすか」という視点が欠かせません。
リスクを抑えつつ資産を分散する工夫や、自宅を活用したリバースモーゲージなども含め、資産全体でインフレに備える考え方が、老後の安定につながります。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】平均では捉えきれない老後格差の現実
平均貯蓄額2362万円という数字は安心感を与える一方で、実際の家計のばらつきまでは反映していません。後期高齢期の暮らしは、平均から想像される姿よりも大きな差が生まれています。
「平均」は実態より高く出やすい
貯蓄の分布では、高資産世帯が全体の平均値を押し上げています。そのため、多くの世帯にとっては平均より低い水準に位置しているケースも少なくありません。
赤字を補える期間に差が出る
平均では毎月約2万円の赤字ですが、それをどれだけカバーできるかは資産額によって大きく異なります。さらに医療費や介護費が加わると、その差はより広がります。
生活の選択肢にも影響する
資産の違いは、日々の支出だけでなく、住まいやサービス利用など生活の選択肢にも影響します。同じ年齢でも、暮らしの余裕には見えにくい差が生じます。
重要なのは平均との比較ではなく、自分の資産でどれだけの期間生活を維持できるかという視点です。次に見ていく資産寿命の考え方は、この個人差を前提としたものです。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】資産は何年もつのか?資産寿命の詳細と老後支出
これまで見てきたように、75歳以上の後期高齢シニア夫婦の家計は、平均すると毎月約2万円の赤字となっています。
この不足分は、貯蓄を取り崩すことで補われています。
月2万円の赤字は、年間では約24万円に相当します。この水準が続くと仮定した場合、平均貯蓄額2362万円は単純計算で約98年分にあたります。
しかし、この試算をそのまま当てはめるのは現実的とは言えません。
想定に含まれていない「老後特有の支出」
家計調査の支出には、次のような費用は十分に反映されていません。
・入院や手術に伴う自己負担
・介護サービスの利用料
・施設入所時の初期費用や月額費用
こうした支出が発生すると、赤字額は一時的に数万円、場合によっては十数万円規模に膨らむこともあります。
その結果、貯蓄の取り崩しペースは大きく加速することになります。
さらに、2362万円という数値はあくまで平均値です。貯蓄が平均を下回る世帯では、赤字を補える期間はより短くなります。
「平均があるから安心」とは言えない
老後の家計を考える際には、月々の収支だけでなく、貯蓄が何年分の赤字に耐えられるのかという時間軸の視点が欠かせません。
平均値を前提にした楽観的な見通しではなく、自身の家計条件に即した現実的なシミュレーションを行うことが重要です。
【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】医療費はどこまで増えるのか?負担割合は?
75歳以上のすべての人が加入する後期高齢者医療制度では、前年の所得に応じて医療費の自己負担割合が決まります。
原則は1割負担ですが、医療費の増大に対応するため、2022年10月から一定以上の所得がある人は2割負担となりました。
負担割合と判定基準

後期高齢者医療制度の窓口負担
・1割:現役並み所得者、2割該当者に該当しない方
・2割:一定以上の所得がある人:下記1、2の両方に該当する場合
・3割:現役並み所得者
2割負担への移行を緩和する特例措置は、2025年9月末で終了しています。今後は医療費の自己負担が増える高齢者世帯がさらに増えると見込まれます。
医療費の負担増は、貯蓄の取り崩しを早める要因の一つになります。
家計管理や老後資金の計画を立てるうえでは、自身の負担割合を定期的に確認しておくことが重要です。
まとめにかえて:老後家計の現実を踏まえた見通し
老後の家計を見通すうえで、最も大切にしたいのは「手元にいくらあるか」という金額そのものではなく、「その資産がこれからの暮らしを何年支えられるのか」という“持続性(資産寿命)”の視点です。
後期高齢期の世帯では、預貯金を中心とした安全性の高い資産構成が一般的です。元本が減りにくいという安心感がある一方で、物価上昇が続く現在の経済環境下では、お金の「実質的な価値(購買力)」が少しずつ目減りしていくリスクも孕んでいます。
さらに、後期高齢者医療制度における2割負担の特例措置(配慮措置)が2025年9月に終了したことで、医療費や介護費の負担増が家計の赤字幅を突発的に広げる要因にもなりやすくなっています。月々の小さな赤字や想定外の出費の積み重ねが、想定以上のスピードで資産を取り崩す結果につながりかねません。
長寿化が進むいま意識しておきたいのは、「平均額があるから安心」という見方から抜け出すことです。
日々の生活が落ち着きを取り戻したこの初夏のタイミングに、ご自身の「年金などの公的収入」「手元資産」、そして「今後の医療・介護を含む支出」のバランスを総合的に点検してみてはいかがでしょうか。安定した後期高齢期を築くための土台は、現状の正しい把握から始まります。
参考資料
・総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
・総務省「家計調査 家計収支編 2024年〔二人以上の世帯〕」(第3-2表)
・総務省統計局「家計調査 用語の解説」
・総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)3月分(2026年4月24日公表)」
・生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版)」
・厚生労働省年金局「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 2024年 〔二人以上の世帯〕」(第8-10表)
・政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
・厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
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