70歳代・ふたり以上世帯の貯蓄額はいくら? 中央値は1178万円、平均年金月額とリアルな「老後の赤字」を検証
【70歳代の生活実感】約9割が「ゆとりなし」と回答。家計の現状&年金にゆとりがない理由とは?

70歳代・ふたり以上世帯の貯蓄額はいくら?中央値は1178万円、平均年金月額とリアルな「老後の赤字」を検証
リタイア生活が本格化する70歳代。現在の貯蓄額と毎月振り込まれる年金だけで、この先の長い人生を支えきれるかは、多くの方にとって最大の懸念事項です。
物価高騰や社会保険料の負担増など、シニア世帯を取り巻く経済環境は厳しさを増しており、夫婦二人分の年金があっても家計が赤字になりやすいのが実情です。「人生100年時代」が現実味を帯びるなか、資産をどう守り、どう使っていくかが問われています。
本記事では、70歳代のリアルな「生活実感」のデータを出発点に、最新の貯蓄分布や平均年金受給額、家計収支を紐解き、長寿社会を乗り切るためのマネープランのヒントを探ります。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【70歳代の生活実感】約9割が「ゆとりなし」と回答。不安の要因とは?
シニア世代は日々の家計に対して、実際にどのような実感を持っているのでしょうか。まずは、70歳代のリアルな懐事情が浮き彫りになったデータを確認してみましょう。
70歳代《二人以上世帯・単身世帯》家計の現状&年金にゆとりがない理由

70歳代の生活実感
シニア世代は日々の家計に対して、実際にどのような実感を持っているのでしょうか。まずは、70歳代のリアルな懐事情が浮き彫りになったデータを確認してみましょう。
【70歳代世帯の家計の現状】
・年金でさほど不自由なく暮らせる(二人以上世帯:12.3% / 単身世帯:12.3%)
・ゆとりはないが、日常生活費程度はまかなえる(二人以上世帯:61.2% / 単身世帯:52.2%)
・日常生活費程度もまかなうのが難しい(二人以上世帯:26.5% / 単身世帯:35.5%)
データを見ると、「年金でさほど不自由なく暮らせる」と答えた層は、二人以上世帯・単身世帯ともにわずか12.3%にとどまります。
一方で、「ゆとりはない」「生活費をまかなうのも難しい」と感じている世帯を合わせると約9割近くに達しており、特に単身世帯では「まかなうのが難しい(35.5%)」という深刻な声が目立ちます。
では、なぜこれほどまでに生活に「ゆとりがない」と感じているのでしょうか。その理由を見てみます。
【「ゆとりがない」等と回答した理由(※複数回答可)】
・物価上昇等により費用が増えていくとみているから(二人以上世帯:57.7% / 単身世帯:54.1%)
・高齢者への医療費用の個人負担が増えるとみているから(二人以上世帯:30.0% / 単身世帯:22.6%)
・高齢者への介護費用の個人負担が増えるとみているから(二人以上世帯:18.7% / 単身世帯:19.8%)
・年金が支給される金額が切り下げられるとみているから(二人以上世帯:17.2% / 単身世帯:13.2%)
・年金が支給される年齢が引き上げられるとみているから(二人以上世帯:6.5% / 単身世帯:4.8%)
・その他(二人以上世帯:16.0% / 単身世帯:24.0%)
理由のトップは世帯を問わず「物価上昇(50%以上)」です。昨今の止まらないインフレが、年金生活者の家計をダイレクトに圧迫し、将来への不安を増幅させていることがわかります。
次いで、「医療費」や「介護費」といった高齢期特有の出費に対する負担増、さらには「将来の年金減額」への懸念が続いています。
こうした切実な不安を和らげるためには、まず「自分たちと同世代がどのくらい貯蓄を持っているのか」「実際の年金受給額や生活費の平均はいくらなのか」という客観的な事実を知ることが第一歩となります。
次章からは、70歳代のリアルな貯蓄額と年金事情について詳しく見ていきましょう。
70歳代・ふたり以上世帯の「貯蓄額」はいくら?平均値と中央値のリアル
J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」をグラフを交えて確認していきます。
※金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)
「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額は2416万円ですが、この数字は一部の富裕層によって押し上げられており、実際の生活水準とは乖離している可能性があります。
より実態に近いとされる中央値は1178万円であり、多くの世帯の貯蓄額がこの水準に集中していることがうかがえます。
世帯ごとの貯蓄額分布は以下のとおりです。
・金融資産非保有:10.9%
・100万円未満:4.5%
・100~200万円未満:5.1%
・200~300万円未満:3.7%
・300~400万円未満:3.9%
・400~500万円未満:2.9%
・500~700万円未満:6.4%
・700~1000万円未満:6.7%
・1000~1500万円未満:11.1%
・1500~2000万円未満:6.7%
・2000~3000万円未満:12.3%
・3000万円以上:25.2%
・無回答:0.6%
70歳代・二人以上世帯の中で、金融資産を保有していない「貯蓄0円」の世帯は全体の10.9%を占めています。一方で、3000万円以上の貯蓄を持つ世帯も25.2%存在しており、世帯間の資産状況には大きな差があることがわかります。
その他の分布を見ると、100万円未満が4.5%、100~200万円未満が5.1%、200~300万円未満が3.7%と、貯蓄が少ない世帯も一定数存在します。一方で、1000~1500万円未満が11.1%、1500~2000万円未満が6.7%、2000~3000万円未満が12.3%と、まとまった資産を保有する世帯も見られます。
このように、貯蓄額は退職金や収入履歴、相続、健康状態などによって大きく異なり、公的年金の受給額も現役時代の加入状況により個人差があります。貯蓄が少ない世帯にとっては、年金収入だけで生活を維持するのが難しいケースもあるでしょう。
老後の安定には、世帯の状況に応じた生活設計が欠かせません。たとえば、健康なうちはパートなどで収入を得たり、不動産や投資による副収入を検討したりと、早めの準備が安心につながります。
【厚生年金】今のシニア世代は毎月いくら受け取っているのか
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金・国民年金の平均年金月額を確認しましょう。

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されていますが、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下、記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。
※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれています。
厚生年金《平均年金月額》
・〈全体〉平均年金月額:15万289円
・〈男性〉平均年金月額:16万9967円
・〈女性〉平均年金月額:11万1413円
厚生年金《月額階級別受給権者》
・~1万円:4万3399人
・1万円以上~2万円未満:1万4137人
・2万円以上~3万円未満:3万5397人
・3万円以上~4万円未満:6万8210人
・4万円以上~5万円未満:7万6692人
・5万円以上~6万円未満:10万8447人
・6万円以上~7万円未満:31万5106人
・7万円以上~8万円未満:57万8950人
・8万円以上~9万円未満:80万2179人
・9万円以上~10万円未満:101万1457人
・10万円以上~11万円未満:111万2828人
・11万円以上~12万円未満:107万1485人
・12万円以上~13万円未満:97万9155人
・13万円以上~14万円未満:92万3506人
・14万円以上~15万円未満:92万9264人
・15万円以上~16万円未満:96万5035人
・16万円以上~17万円未満:100万1322人
・17万円以上~18万円未満:103万1951人
・18万円以上~19万円未満:102万6888人
・19万円以上~20万円未満:96万2615人
・20万円以上~21万円未満:85万3591人
・21万円以上~22万円未満:70万4633人
・22万円以上~23万円未満:52万3958人
・23万円以上~24万円未満:35万4人
・24万円以上~25万円未満:23万211人
・25万円以上~26万円未満:15万796人
・26万円以上~27万円未満:9万4667人
・27万円以上~28万円未満:5万5083人
・28万円以上~29万円未満:3万289人
・29万円以上~30万円未満:1万5158人
・30万円以上~:1万9283人
【国民年金】今のシニア世代は毎月いくら受け取っているのか
厚生年金の加入期間がなかった人が受け取る、国民年金(老齢基礎年金)の月額についても見ていきます。

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
国民年金《平均年金月額》
・〈全体〉平均年金月額:5万9310円
・〈男性〉平均年金月額:6万1595円
・〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金《月額階級別受給権者》
・1万円未満:5万1828人
・1万円以上~2万円未満:21万3583人
・2万円以上~3万円未満:68万4559人
・3万円以上~4万円未満:206万1539人
・4万円以上~5万円未満:388万83人
・5万円以上~6万円未満:641万228人
・6万円以上~7万円未満:1715万5059人
・7万円以上~:299万7738人
「厚生年金の男性平均月額を受け取る夫」と「国民年金の女性平均月額を受け取る妻」の夫婦世帯の場合、二人分の年金受給額は月額22万7549円となります。
この「月額約22万円」という年金収入で、シニア夫婦の生活費をカバーできそうか気になる人もいるでしょう。
65歳以上・夫婦無職世帯の「老後の生活費」家計収支の赤字額は?
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の標準的な家計収支を見ていきます。

65歳以上・夫婦のみの無職世帯「ひと月の生活費はいくら?」
《収入》25万4395円
■うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
《支出》29万6829円
■うち消費支出:26万3979円
・食料:7万8964円
・住居:1万7739円
・光熱・水道:2万3540円
・家具・家事用品:1万1237円
・被服及び履物:5354円
・保健医療:1万7941円
・交通・通信:3万1325円
・教育:0円
・教養娯楽:2万6538円
・その他の消費支出:5万1341円
・うち諸雑費:2万2047円
・うち交際費:2万3257円
・うち仕送り金:1135円
■うち非消費支出:3万2850円
・直接税:1万2547円
・社会保険料:2万296円
《家計収支》
・ひと月の赤字:4万2434円
・エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.9%
・平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):119.2%
この世帯の毎月の収入は25万4395円で、その多くを公的年金などの社会保障給付が占めています。一方、毎月の支出の合計は29万6829円です。
内訳を見てみると、食費や住居費、光熱費など日常的な生活にかかる消費支出が26万3979円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万2850円となっています。
その結果、月々の家計は4万2434円の赤字となっており、不足分は貯蓄を取り崩して補う必要があります。
年間に換算すると、およそ51万円の取り崩しが必要になる計算です。
シニア世代は現役世代と比べて安定した収入を得る機会が限られるため、こうした慢性的な赤字は、長期的に貯蓄を大きく減らす要因となり得ます。
今ある貯蓄額を踏まえ、家計収支の見直しや、健康状態に応じた短時間の就労など、できる範囲で対策していくことが、老後の暮らしを安定させるカギとなります。
「人生100年時代」は現実的?令和最新の平均寿命・平均余命をチェック
平均余命とは、特定の年齢の人々が「あと何年生きられるか」を示す期待値です。
そして、私たちがしばしば使う「平均寿命」という言葉は、「(現時点での)0歳の平均余命」を指します。
2025年7月25日に厚生労働省が公表した「令和6年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.09年、女性が87.13年でした。

出所:厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
また、平均寿命の長期的な推移を見ると、男女ともに着実に延びています。
・昭和30年(1955年) 男63.60 女67.75 男女差4.15
・昭和40年(1965年) 男67.74 女72.92 男女差5.18
・昭和50年(1975年) 男71.73 女76.89 男女差5.16
・昭和60年(1985年) 男74.78 女80.48 男女差5.70
・平成7年(1995年) 男76.38 女82.85 男女差6.47
・平成17年(2005年) 男78.56 女85.52 男女差6.96
・平成27年(2015年) 男80.75 女86.99 男女差6.24
・令和6年(2024年) 男81.09 女87.13 男女差6.03
長くなった老後を豊かに過ごすためには、現役時代からの計画的な貯蓄や資産形成、さらには公的年金制度への理解が大切となってくるでしょう。
まとめにかえて
今回は、70歳代の生活実感のデータを出発点に、貯蓄額、年金受給額、そして毎月の家計収支のリアルな実態を見てきました。
約9割のシニア世帯が生活に「ゆとりがない」と感じている背景には、物価高騰による支出増と、夫婦で年金を受け取ってもなお毎月約3万4000円の赤字が出てしまう厳しい現実があります。
さらに貯蓄額の分布を見ると、「資産3000万円以上」の世帯が約4分の1を占める一方で、「貯蓄ゼロ(非保有)」の世帯も約1割存在しており、世帯間の経済的な格差が顕著になっていることがわかります。
平均寿命が延び、「人生100年時代」が現実のものとなりつつある今、ただ漫然と貯蓄を取り崩すだけでは、いずれ資産寿命が尽きてしまう恐れがあります。老後の安心を確保するためには、以下の3つのステップで対策を講じることが重要です。
家計の「見える化」
・まずは毎月の正確な生活費(支出)と、年金受給額(収入)、現在の貯蓄額を書き出し、現状を把握する。
支出の最適化
・通信費や不要な保険料、サブスクリプションなど、生活満足度を下げずに削れる「固定費」を見直す。
収入・資産の維持
・健康なうちは短時間の就労で「稼働所得」を得たり、無理のない範囲で資産運用を活用したりして、貯蓄の減少ペースを緩やかにする。
「老後のお金への不安」は、自分自身の現状が漠然としていることから大きくなる傾向があります。まずはご自身の世帯の収支と客観的なデータを照らし合わせ、長生きリスクに備えたマネープランを立て直してみてはいかがでしょうか。
参考資料
・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」
・厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
・厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命
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