長期金利が29年ぶり2.8%!住宅ローンは「まだ変動金利でいい」と信じる人がハマる〈恐ろしすぎる落とし穴〉

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中東情勢の混乱などを背景に、長期金利が上昇している。金利上昇の局面で気になるのが、住宅ローンだ。住宅ローンには、変動金利型と固定金利型があるが、どちらを選べばよいのだろうか。複雑な仕組みをわかりやすく解説するとともに、今注意したいポイントを見ていこう。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

長期金利は29年半ぶりの高水準!

今「住宅ローン選び」で絶対やってはいけないことは?

 5月18日、長期金利の指標となる10年物国債の利回りが2.8%まで上がり、1996年10月以来29年半ぶりの高水準となった。

 

 当日配信のネット記事、夜のテレビ番組などでも比較的大きく取り上げられたので、ニュースを目にした人も多いだろう。「長引く中東情勢の混乱により、原油高によるインフレ懸念が強まり、国債が売られ長期金利は上昇」などと解説されていた。

「経済」の視点で見た解説はその通り。では、長期金利の上昇は実際、私たちの暮らしにどのような影響を与えるのだろう。

 顕著なのは「住宅ローン」だ。特にこれから住宅ローンを組む人にとっては、金利タイプ選びに大きな影響を及ぼす。

 今回は、金利上昇局面の住宅ローン選びで、「やってはいけないこと」をお伝えする。

「ギリギリまで変動金利→固定に乗り換え」は

有効なのか?

 長期金利が上昇すると、連動して住宅ローンの固定金利が上がる。メガバンクの10年固定金利を例にとると、5月の適用金利は3%前後の水準だ。1年前の25年5月は2%前後だったので、1%程度上昇している。

 一方、現在の変動金利は0.95%前後。10年固定との金利差は2ポイントもある。

 このため、新規で住宅ローンを借りる人の中には、毎月の返済額を抑えるために変動金利を選択する人も少なくない。

 住宅価格が高騰している今、少しでも低い金利で借りたい気持ちは十分に理解できる。しかし、変動金利型ローンの仕組みはかなり複雑であることを必ず知っておきたい。

 住宅ローンの金利タイプは、「変動金利タイプ」と「固定金利タイプ」に大別される。

「変動金利タイプ」は、年に2回金利を見直すもので、日銀の「政策金利(短期金利)」に連動する。一方、固定期間が1年以上は全て「固定金利タイプ」で、フラット35や銀行の10年以上の固定金利は、「長期金利(10年物国債の利回り)」に連動する。

 変動金利と固定金利で、金利の動きに影響を与える指標が異なることは、住宅ローン金利を選択する上で重要なポイントとなる。

 さらに金利が上昇する局面では、「長期金利のほうが短期金利よりも先行して上がる」というのが経済の約束事だ。

 短期金利は、日銀の政策金利の動きに連動するため、毎月変化があるわけではない。政策金利が話し合われる日銀の金融政策決定会合は、原則年8回。銀行の変動金利の見直しのタイミングは4月1日と10月1日の年2回のため、政策金利の利上げが行われたとしても、変動金利が上がるのは数カ月後になる。

 一方の固定金利に影響を与える長期金利は、日銀の政策金利と違い、日々動く「生もの」。このため固定金利は毎月見直される。当月1日から適用される金利は、多くの銀行では前月末に決まるため、20日以降に長期金利が上昇すると、翌月の固定金利も上がる傾向にある。

 では、「ギリギリまで金利の低い変動で借りて、本格的に金利が上がる前に固定に切り替える」というプランは有効か。

 前述のように、金利が上昇する局面では、長期金利のほうが短期金利よりも先行して上がるというのが経済の約束事。

 つまり「ギリギリまで変動金利を利用、あとで固定金利に切り替える」プランは現実的ではない。なぜなら、変動金利が上がる頃には、固定金利はすでに高くなってしまい、心情的にも家計的にも、高い金利に切り替えできなくなるからだ。

変動金利型ローン「5年ルール」の

知られざるリスクとは?

 さらに変動金利型ローンには、金利の見直しがあっても返済額は5年間変わらないという「5年ルール」という仕組みもある。これがやっかいなのだ。

 金利が上がると当然、毎月の利息も増えるが、「5年ルール」により返済額は変わらないため、元金に充当する金額が少なくなる。

 図で見るとわかりやすい。

 5000万円を元利均等返済・変動金利0.825%・返済期間35年で借りた場合の試算で、グラフは毎月返済額の利息と元金の内訳だ。金額をもとに作成しているので、ほぼリアルな割合となっている。

 図1は、4年間金利が変わらなかった場合。返済が進むごとに利息が減り、元金に充当する割合が増えていく。

筆者作成

 図2は、1年経過ごとに年0.5%金利が上昇した場合。「5年ルール」により、返済額は変わらないが、利息額は増えるため、元金充当額が減るのが一目瞭然だ。これにより、返済が進んでも、元金が減るペースが鈍くなる。

筆者作成

 変動金利型ローンの返済予定表は、半年分しか表記されていない(約束している金利が半年だから)。適用金利が上がると、返済の内訳のうち、利息額が増えるが、1つ前の返済予定表と照らし合わせないと、利息額の変化には気が付かないだろう。

 返済額が変わらないので、通帳だけ見ていると、金利が上がったことすら気が付かない可能性もある。

仕組みをさらに複雑にする

「1.25倍ルール」とは?

 5年経過すると返済額の見直しがされるが、返済額は前の返済額の最大1.25倍までというルールを設けている銀行が大半だ。これを「1.25倍ルール」という。

 例えば、最初の5年間の返済額が10万円として、見直し時期に金利が上がっており、再計算すると13万円になったとする。しかし、「1.25倍ルール」により、返済額は最大12万5000円に留まる。

 5000円少なくなると喜んではいけない。利息額は通常通り取られるので、元金充当額が減るのだ。これにより、残高の減りがますます鈍くなる。

 つまり、ずっと変動金利で借り、金利上昇が続くと、当初の完済時期までにローンが終了しないということだ。

 しかし、変動金利型ローンの契約書には「最終回で残高がある場合は、一括で返済すること」と明記されている。

 一見、落とし穴のような仕組みだが、銀行には悪気はない。

 この2つのルールができたのは1982年。当時は景気も金利も毎月のように「上がったり、下がったり」していたので、その都度、返済額が変動することを避けるために「サービス」として作られた仕組みなのだ。

 仕組みはシステムによるものなので、ほとんどの銀行は当時のシステムのまま2つのルールを継続しているが、ソニー銀行など一部の銀行では「契約者が金利上昇を実感しにくくなる」と、採用していないところもある。

 変動金利型住宅ローンは、仕組みが複雑すぎるため、金利上昇局面ではリスク制御が難しい。どうしても変動金利で借りたいなら、借入額を少額にするか、夫婦ペアローンで固定と変動を組み合わせるなど工夫をするのが得策だ。

 固定金利の代表といえる、住宅金融支援機構の「フラット35」の金利が割安だ。35年間の固定金利で、5月の最頻金利は2.71%と銀行の10年固定の3%前後の水準よりも低い(融資率9割以下)。

 さらに国の政策により、購入する住宅の性能、家族構成などにより、当初5年間の金利を最大1%引き下げるメニューもあるので、選択肢に入れて検討することをお勧めする。