米国人の気分は最悪、株式市場は絶好調 その理由は?

消費者心理はどれほど悪化しているのか?, 株価は一体どれほど良好なのか?, 2000年当時を振り返る, 2026年がもたらす違和感

米国人の気分は明らかに暗いが、株式市場は間違いなくそうではない。これは通常の姿とは異なる。歴史的に見れば、株価の上昇は消費者の幸福感と結びついており、その逆もまた然(しか)りだった。では、足元で一体何が起きているのだろうか。

消費者心理はどれほど悪化しているのか?

米国人の消費者心理は、ある種の節目を迎えた。5月22日、ミシガン大学が発表した消費者信頼感指数(確報値)は44.8となり、4月の49.8からさらに下落。70年余りに及ぶ調査史上、最低水準に落ち込んだ(4月の数値自体、それまでの過去最低記録だった)。

消費者心理は今年初めの時点ですでに低迷していたが、2月末にイランとの戦争が始まりガソリン価格が急騰したことで、さらに急落した。今年以前の最低水準は、インフレが数十年ぶりの高水準で推移していた2022年6月だったが、今回の消費者信頼感指数はその水準をさらに10%下回っている。

ミシガン大学の消費者調査ディレクター、ジョアン・スー氏は、「物価は依然として極めて高く、労働市場はこの4年間で明らかに悪化しており、現在は戦争の最中にある」と指摘。「2022年6月の水準を下回ったことは、誰にとっても驚きではないだろう」と述べた。

株価は一体どれほど良好なのか?

しかし株式市場を見れば、消費者心理がそこまで冷え込んでいるとは到底想像できないだろう。同じく22日、S&P500種指数は8週連続の上昇を記録し、ダウ工業株30種平均は2日連続で終値の史上最高値を更新した。

株価が高いだけでなく、割高感も際立っている。

S&P500種指数の「景気循環調整後株価収益率(CAPE)」は40.8倍となっている。これはイエール大学の経済学者ロバート・シラー氏が広めた指標で、同氏は資産価格に関する研究で2013年にノーベル経済学賞を受賞した。シラー氏のデータが示す145年間で、この指標が40倍を超えたのは、2000年前半のドットコムバブルのピーク前後の数年間だけだった。

景気循環調整後株価収益率

注:グレー部分は景気後退期

出所:ロバート・シラー氏

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Cyclically adjusted price/earnings ratio

2000年はまた、ミシガン大学の消費者信頼感指数が史上最高値に達した年でもある。それ以降、同指数がその水準に近づいたことは一度もない。

ミシガン大学消費者信頼感指数

注:グレー部分は景気後退期

出所:ミシガン大学

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ミシガン大学の調査によると、多額の株式資産を保有する米国人は、平均的に他の人たちよりも気分が良いと感じている。しかし、過去の株価バリュエーション(投資価値評価)が高かった時期とは異なり、彼らも依然として相対的に不満を抱いているのだ。

上位3分の1の株式資産を保有する米国人の消費者信頼感指数

注:グレー部分は景気後退期

出所:ミシガン大学

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Consumer sentiment for stock owners in the top third by stock wealth

では、なぜ現在はこれほど通常のパターンから外れているのか。経済学者たちにはいくつかの仮説がある。

2000年当時を振り返る

典型的な「株高・好マインド」のパターンが成立していた2000年を例に取ってみよう。この年は、株式市場が好調で消費者の気分も良いという典型的なパターンが成立していた。ジョンズ・ホプキンス大学金融経済センター長のロバート・バルベラ氏は、当時、株式市場と米国人は「共通の楽観論」に反応していたと指摘する。当時は経済が成長して雇用が創出され、インフレは落ち着いていた。冷戦は終結し、中国は市場を開放、米国政府は財政黒字を計上していた。

人工知能(AI)をめぐる今日の状況と非常によく似て、当時は世界を一変させるような新しいテクノロジーであるインターネットが定着しつつあった。しかし、当時の時代精神(ツァイトガイスト)において、インターネットは「世界をつなぎ、人々の生活を向上させるもの」として好意的に受け止められていた。現在のAIはそこまで好意的には見られていない。

2026年がもたらす違和感

バルベラ氏は、2000年と現在の違いを説明し得る3つの要因を指摘する。これらは互いに矛盾するものではなく、同時に起きている可能性がある。

第1に、株価は米国経済の向かう先という実態から大きく懸け離れており、今後急落する危険をはらんでいる可能性がある。言い換えれば、消費者が不満を感じるのは正しいということだ。

第2に、株式市場が多くの米国人がまだ気づいていない「明るい未来」を予見している可能性がある。例えば、イランとの戦争が終結し、インフレが和らぎ、成長が回復するような未来だ。この場合、「株式市場の熱狂のほうが正しい」ことになる。

第3の要因は何か。最近の株式市場で熱狂を後押ししている最大の要因である「AI」が、多くの米国人の間で高まる不安の源でもあるという点だ。企業がAIを活用して人件費を削減し、利益率を劇的に拡大できる世界は株式市場にとって好都合だ。しかしそれはまた、より多くの人々が仕事を見つけるのに苦労する世界でもあるかもしれない。

バルベラ氏は「月まで届きそうなほど高騰する株式市場と、ますます憂鬱(ゆううつ)を深める家計は、実は同じ現実を映し出しているのだ」と語った。