本当にあった!「6輪のレクサス」走るテストカーを開発の現場で目撃して確信した量産化の可能性

トヨタ自動車は2026年5月8日、愛知県豊田市の郊外にあるトヨタテクニカルセンター下山(以下、TTC-S)を報道陣に公開した。

今年の冬頃に日本にも導入するという3列シートEV「TZ」のワールドプレミアや、6月中旬に発売開始予定の新型「ES」について担当のエンジニアやデザイナーから詳しい話を聞く時間があり、さらにテストコースでTZとESに同乗試乗できるという内容満載の取材会であった。

左が新規導入となる「TZ」、右が新型「ES」(筆者撮影)

この日は終日、TTC-Sでさまざまなプレゼンテーションを受けたり施設の内覧を体験したりしたが、筆者として最もインパクトが強かったのは6輪車「LS CONCEPT」(LSコンセプト)のテストカーを見た瞬間だ。

昨年、発表した新しいフラッグシップの形

LSコンセプトは、「ジャパンモビリティショー2025」でワールドプレミアされたデザインコンセプトモデル。

最大の特徴は少し小ぶりな後輪が左右に2輪あり、前輪と合わせて6輪車である点だ。後輪を4輪化した理由は、より広いスペースを確保することにある。

レクサスのフラッグシップである「LS」を、LSの原点に戻って考えた結果が、セダンにこだわらない極めて高いスペース性を実現するためのカタチ、つまり6輪車だったという。

ジャパンモビリティショー2025公開の「LSコンセプト」以下、特記のない限り写真はすべてこの車両(筆者撮影)

企画の背景については、トヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」で、豊田章男会長が詳しく説明している。

6輪車といえば、1970年代のF1マシン「ティレルP34」が有名で、こちらは操舵輪である前が4輪。そのほかF1では、80年代にはウイリアムズが後輪を4輪化した6輪車のテストカーを仕上げたが、マシンレギュレーション変更の影響で参戦を断念した経緯がある。

また乗用車では、メルセデス・ベンツが2010年代に後輪4輪の6輪車、「G63 AMG 6×6」を少数市販化している。

別の視点では、在りし日のイギリスのテレビ番組『サンダーバード』に登場したロールス・ロイスの前輪4輪の6輪車モデルカーを、後にロールス・ロイスが実車を使ったコンセプトモデルを作成したこともある。

こうしたさまざまな事例があるものの、大手メーカーによって大量生産が行われた6輪車はない。G63 AMG 6×6は世界限定100台(日本国内5台)という特殊なクルマだ。

「G63 AMG 6×6」は日本国内で限定5台、8000万円で販売された(写真:メルセデス・ベンツ日本)

専用サイズのタイヤを量産する必要があるなど、コストが上がることも量産の壁であるが、それ以上に販売戦略で「6輪車の商品価値」が問われてきたのだと思う。

ジャパンモビリティショー2025で登場したLSコンセプトについても、トヨタとレクサスの企画に対する熱い思いがあるにせよ、筆者を含めてあくまでもデザインスタディに過ぎないという見方をした人が多かった。

ところが、今回見た実車は、単なるハリボテではなく実走可能なテストカーだった。

量産への明言は避けるが

あえて、整備用リフトでリフトアップし、車両の下部が見えるように置かれていたが、モーター・インバーター・ギアシステムなどを組み込んだe-アクスルが、後輪の前後2車輪軸それぞれに配置されており、さらにリアステアの機能のような装備も確認できた。

ショーモデルではダミーだったメカニズムの一部も見られた(筆者撮影))

ベースとなった車両はレクサスなので「LM」、あるいはミニバン形状から「アルファード/ヴェルファイア」かもしれない。

レクサス関係者は「どうなるのか、まずは実際に作ってみようということで……」と話すにとどめ、量産に向けた今後の工程については触れなかった。それでも「6輪車LSの量産はあり得る」と筆者は見る。

理由は、TTC-Sが他の日系自動車メーカーとは段違いのアジャイル開発の場であるからだ。

自動車産業界では近年、量産開発において課題の抽出/分析/再検討をより短時間・短期間で行う手法をアジャイル開発と呼び、国内では「スーパー耐久」シリーズのST-Qクラスをアジャイル開発の学びの場として活用している。

そうしたモータースポーツの現場で行われているようなアジャイル開発を、量産車開発に応用しているのがTTC-Sなのだ。

「LSコンセプト」ショーカーの広大な後席空間(筆者撮影)

世界屈指のサーキットであるドイツ・ニュルブルクリンクを参考とした、起伏のある全長5.3kmの第3周回路(通称カントリー路)を筆頭に、全12種類の評価路があり、コースに隣接する実験棟や車両整備棟のみならず、企画・設計・デザイン領域関係者が一堂に会してアジャイル開発を行う車両開発棟によって、今回同乗したTZやESが商品としての精度を上げたという事実がある。

そうした場に置かれた、LSコンセプトのテストカーは今後、さまざまな改良が施され、ユーザーの期待を裏切らない形で世に出ることが十分に考えられる。

ハンフリーズ氏の言葉に期待を寄せて

今回のTTC-S取材の幕開けとなった、レクサスTZのワールドプレミアでのプレゼンテーションで、レクサス・チーフ・ブランディング・オフィサーのサイモン・ハンフリーズ氏は次のように話した。

「下山(TTC-S)で行われているのは、単により良いクルマをつくることではありません。モビリティの未来そのものを探求しているのです」

「センチュリーがブランドとして独立し、スーパー・ラグジュアリーを担うことで、レクサスはラグジュアリーの中心で、さらに自由に進化できるようになりました」

そうした自由な進化を象徴するのが、6輪車の次世代LSになるのかもしれない。自由に進化できるようになったというレクサスに、大いに期待したいと思う。