ホンダで出世する人の特徴、昔は「オハイオ帰り」では今は?

Photo:HONDA
ホンダが皮肉にも、巨額赤字でリストラする日産自動車と似たような状況に陥っている。両社の経営統合案は早期に破談したが、まだ火が完全に消えたわけではない。くしくも三部敏宏ホンダ社長は、バトンタッチの時期を迎えつつある。うみを出し切った後、本格立て直しを託すのは、日産との統合推進役だった人物だ。そこでホンダに、真の企業変革として「ある提案」をしたい。(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)
ホンダがEV→HVに大シフト
ガソリン車と計4.4兆円を投資へ
ホンダの2026年3月期決算は、最終損益が4239億円の赤字を計上。1957年の上場以来初となる赤字に転落した。敗因は、三部敏宏社長が21年4月の就任直後に「2040年までにホンダ車を全てBEV(バッテリー式電気自動車)とFCV(燃料電池車)に切り替える」と「ホンダ脱エンジン」を宣言したのが裏目に出てしまったことに起因するだろう。
だが、それだけではない。ソニーとのEV開発を中止したり、米ゼネラル・モーターズとのEVや自動運転の協業を断念したり、いすゞとのFCVトラックを延期したりなど、三部社長が進めた外部との連携戦略も、成果が出ていない。
ホンダの世界販売の4割を占める米国で、トランプ大統領がEV税額控除や環境規制を撤廃し、前提が変わったことは否めない。三部社長は、決算発表とともに行ったビジネスアップデートで、脱エンジン目標を「実現が困難なため取り下げる」と撤回した。
北米EV関連の損失は1兆5778億円にも上る。さらに27年3月期も5000億円規模の関連損失を計上する見込みだ。カナダ・オンタリオ州におけるEVバッテリー工場の建設計画を、無期限で凍結。30年までにEV販売比率を2割に伸ばす目標も取り下げた。29年3月期までのEV投資は大幅に減らし8000億円とする一方で、ハイブリッド車(HV)とICE(内燃機関車)には4兆4000億円を投資する計画だ。
これによりホンダの当面の成長戦略の中心はHVとなる。30年のHV販売目標を250万台(25年比で2.7倍)に据えた。次世代HVシステム搭載車を、北米を中心に15車種、投入するという。
早速、セダンとSUVの2車種を世界初公開(次ページ画像参照)。この新HV戦略により、29年3月期には営業利益1兆4000億円以上を実現するとの青写真も描いた。赤字から一転、過去最高益を狙うと堂々宣言するのだからずいぶんと強気だ。

2年以内に発売予定の次世代ハイブリッド車のプロトタイプ「Honda Hybrid Sedan Prototype」を世界初公開した Photo:HONDA

2年以内に発売予定の次世代ハイブリッド車のプロトタイプ「Acura Hybrid SUV Prototype」を世界初公開した Photo:HONDA
実に、現実的な経営判断をしたと思う。北米は「HV主導」に大きくかじを切る。EV関連は短期にうみを出し切ることで、黒字転換を目指すというのだから。
だがしかし、この計画には大事な点が抜け落ちている。現在のホンダの経営は「二輪車事業の高収益」と「四輪車事業の低収益体質」のいわば両極化だが、そのいびつさからの脱却とはならない点だ。
ホンダは確かに変革を始動させた。が、二輪に「おんぶに抱っこ」から脱却するためには「二輪事業と四輪事業を分社化し、さらに四輪事業を日産自動車と統合する」といった、踏み込んだ企業変革を提言したい。
ホンダは好調の二輪と赤字の四輪を
分社化して日産と統合すべきか
どういうことか、26年3月期の業績をさらに詳しく見ていこう。二輪車事業の世界販売はアジアや南米を主戦場に、2210万1000台(前期比7.4%増)と過去最高を記録。営業利益率は18.2%と、この業界では驚異的といっても過言ではない収益性だ。
対して四輪車事業の世界販売は338万7000台(同8.9%減)で営業利益率はマイナス10%(なお前期は黒字で1.7%)に沈んだ。とにもかくにも二輪車事業と四輪車事業が極端なのである。
四輪車について市場別にブレイクダウンしていこう。まず北米だ。トヨタや日産に先行して、1982年に米国で現地生産を開始。かつて「ホンダは米国一本足打法だ」と揶揄(やゆ)されるほど、北米戦略には重きを置いていた。
しかし、1990年代後半に中国にも本格進出したことで、2000年代以降は北米と中国が二大柱に成長した。
ホンダで出世する人の特徴
昔は「オハイオ帰り」では今は?
「出世するのは、米オハイオ帰りや米国ホンダ帰り――」
ホンダ社内では、かつて社員の間でこうした言葉がささやかれていた時期があった。米オハイオというのは、米国オハイオ州にあるホンダの「生命線」とも言える最重要拠点だ。米国ホンダは現地法人を指す。
しかし近年は、「中国帰りが偉くなる」との見方が強まっていた。現に、前経営陣である八郷隆弘氏や倉石誠司氏は、中国に駐在経験がある。
では最近の中国における業績はどうかというと、販売台数を大幅に減らしピーク時の7割近くとなっている。北米のみならず中国でも立て直しが大きな課題なのだ。
しかし中国メーカーの開発、生産、技術力の進化は目覚ましく、ホンダを含めて日本勢は大きな脅威に感じている。手始めにホンダは、中国対策として開発期間・費用・工数を半減する「トリプルハーフ」戦略をぶち上げた。
「N-BOX依存が強すぎる」
軽の販売比率が高いと収益性も...
翻って日本国内はどうか。ホンダの軽自動車「N-BOX」は、5年連続で国内新車ランキング1位の大ベストセラーである。

日本自動車会議所のHPより
しかし、最近は「N-BOX依存が強すぎる」「他のクルマで魅力的なものがない」との批判が内外から高まっている。
というのもメーカー別の販売台数ランキングでは、トヨタ自動車には遠く及ばず、スズキにも抜かれて3位になったからだ。それに、軽自動車の販売比率が高いことは、収益性の問題にもつながる。

Photo:HONDA
ホンダはかつて「国内で100万台を売る」と狙った時期もあるが、今や70万台にも届かない状況だ。母国市場における抜本的なブランド立て直しも課題となっている。
以上から、EV関連のうみを早期に出し損失を一時的なものにしても、それだけでは四輪事業の低収益体質からの脱却は達成できないと筆者は考える。もっと、相当に本腰を入れていかねばならないと思う。
社長に代わる「企業変革責任者」に
本田技術研究所常務(48歳)が抜擢
会社を変えるには、人事が重要だ。三部社長に代わる「企業変革責任者」というポストに、四竈真人(しかま・まひと)・本田技術研究所常務執行役員(48歳)が抜擢された。6月の株主総会で、ホンダ取締役にも就任する。「ポスト三部」の最有力候補である。
四竈氏は、日産との経営統合を検討する会見にも、推進役として登壇した人物だ。日産が大リストラを成し遂げて縮小均衡ながら黒字転換を果たしたら、次のステップは「売れるクルマ」を出していくほかない。それは、ホンダも同じだろう。
ホンダ、日産とも技術力には定評があった会社だ。強みをうまくリンクさせるには、ホンダは四輪事業の分社化も辞さない覚悟が必要ではないか。そのくらい背水の陣で臨まないと、両社とも将来的に生き残るのは難しい時代だと感じる。

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