なぜ「7割超」は免許証を残したのか? 進むマイナ統合“2枚持ち”が消えない理由
免許証のデジタル統合と選択肢
マイナンバーカードが運転免許証の機能を持つようになり、デジタルと現物の境目は移動の分野でも薄れ始めている。手続きを済ませれば免許証として使えるようになり、カードへの一本化も可能になった。その一方で、これまでの免許証との併用も認められており、利用者は暮らし方に応じて三つの持ち方から選べる。
【画像】「えぇぇぇ!」 これが「ナフサショック」の調査結果です!(計12枚)
こうした複数の選択肢は、社会全体のデジタル化を進める流れの一部といえる。これまで現物の証明書に頼ってきた本人確認は、デジタル基盤への集約が進みつつあり、車両や関連サービスをデータで結びつける環境も整い始めている。
現時点では「一本化」を選ぶ人はまだ多くないとの見方もある。ただ、その動きを詳しく見ていくと、移動を取り巻く環境が次の段階へ進み始めている実態が見えてくる。
一本化層の内訳と移行の実態

静岡県のマイナ免許証保有者(画像:警察庁)
2025年3月に制度が始まって以降、現場での選択はどう広がっているか――。
静岡県の地方紙である静岡新聞は、県内で手続きをした人のうち、マイナ免許証への一本化を選んだ人が約4%の2万4716人(2026年3月末時点)にとどまったと報じている。
免許証保有者の全体を母数としたこの数字は、これまでの慣習が色濃く残る市場の実勢を映し出したものといえる。しかし、警察庁が明かした2026年4月末時点の最新データに目を向けると、変化の兆しは別の側面をのぞかせる。
静岡県でマイナ免許証を持つ10万6933人のうち、従来型を持たずに一本化した人は2万6233人にのぼる。残りの8万700人は従来型との併用を選んでいるが、マイナ免許証を手にした層に限ってみれば、
「約24.53%」
が情報の統合に踏み切っている計算だ。この割合からは、新しい仕組みへの移行が特定の層において着実に進んでいる様子が見て取れる。今後の車社会でデジタル活用がどこまで浸透していくのかを占うひとつの物差しになるはずだ。
若年層がけん引する普及の加速

全国のマイナ免許証保有者数(画像:警察庁)
静岡県内にとどまらず、日本全国の動きを追うと、免許証のあり方が移り変わっていく様子がうかがえる。
全国のマイナ免許証保有者は315万4980人にのぼり、その中で一本化を選んだ人は89万9193人と、全体の約28.5%を占めるまでになった。静岡県でも3月末の2万4716人から4月末には2万6233人へと、ひと月で1517人が増えている。この
「6.14%」
という伸び率は、春先に新しく免許を手にする若年層の動向が反映されたものだろう。
新しい世代が、免許を最初からデジタルの枠組みで捉え始めている。一方で、すでに免許を持つ人たちの間では、更新時の費用の違いが判断を左右する。マイナ免許証のみなら2100円、従来型のみなら2850円、そして両方を持つなら2950円と、手数料にはっきりとした差がある。それにもかかわらず、一番お金がかかる
「2枚持ち」
を選ぶ人は少なくない。社会インフラとしての安定した使い心地や、手元にある確かな安心感を重んじる意識が根強いのだろう。デジタル化の利便性を受け入れつつ、実用的な確実性を手放さない適応の道のりにある。
利用意向と慎重姿勢の共存

2025年2月時点のマイナ免許証の認知度についての調査(画像:ナイル)
運用開始直前の2025年2月、ナイル(東京都品川区)が行った調査の結果は、今の市場の動きを読み解く助けになるだろう。全国の男女2206人を対象とし、1857人から回答を得たデータによれば、マイナ免許証の認知度は「概要も知っている」が30.0%、「聞いたことがある程度」が52.9%、そして「知らない」が17.1%であった。
これから免許証をどう持つかという問いに対しては、「マイナ免許証のみ」が22.5%、「マイナ免許証と従来の免許証の両方を持つ」が37.8%、「従来の免許証のみ」が39.7%という結果が出ている。この時点で全体の約6割がマイナ免許証を持つことを考えており、本人確認のデジタル化は着実に広がりを見せていたといえる。
一方で、7割を超える人々がこれまでの免許証も手元に置きたいと考えた。便利さを求めつつ既存の仕組みとの折り合いを慎重につけようとする利用者の姿が、1年後の実態数値にそのまま表れているのだろう。
現場の運用体制と環境整備の遅れ

「マイナ免許証を保有したい」と考えている人は約6割に達した(画像:ナイル)
マイナ免許証が浸透していく道のりで、現場の運用がまだ追いついていない現実は無視できない。2026年5月のJ-Castニュースでは、一本化を選んだばかりにレンタカー借受時の確認がスムーズにいかなかった事例が話題となった。警察庁は住所変更の手間軽減や更新講習のオンライン化といったメリットを打ち出しているが、受け入れ側の態勢はまだ整い切っていないようだ。
例えば一部の大手レンタカー会社では、専用の読み取り機が全店舗に行き渡っていないのが実情だ。目視による確認からデジタル認証へ。民間サービス全体が歩みを進める中で生じてしまう足踏みといえる。
行政側の整備だけでなく、サービスを提供する側のインフラが足並みを揃えて更新されてこそ、本当の便利さは広く行き渡る。こうした変化の積み重ねが、モビリティ産業全体のデジタル化を後押しする力になっていく。
セキュリティへの理解と信頼構築

情報漏洩に対する不安が調査結果に表れた(画像:ナイル)
マイナ免許証が広まるうえで、情報の扱いに納得感があるかどうかは、データ社会を支える大切な土台となる。ナイルの調査によると、
「情報漏洩や悪用のリスクが大きい」
という声は30.7%にのぼった。2026年1月には農林水産省で職員ら約4500人の個人情報にまつわる事案も起きたが、番号そのものを知られたからといって、すぐにポータルサイト内の詳細な中身まで覗き見られる仕組みにはなっていない。
カードそのものの守りについても、パスワードによる認証が必要なため、他人が勝手に入り込むのは極めて難しい。こうした安全を保つ工夫が正しく伝わっていけば、マイナ免許証を選ぶ人は着実に増えていくはずだ。
車がネットとつながり、自動運転などの高度な連携を目指すなかで、本人確認の技術が高まることは、人と社会を結ぶ情報の道をより確かなものへと変えていく。この積み重ねが、これからのモビリティ社会における信頼を形作っていくことになるだろう。