「スマホを取り出さなくてOK!」世界で先行ヒットしたスマートグラス大本命「Ray-Ban Meta」ついに日本上陸の破壊力

メガネに「写真を撮って」と話しかけると、テンプル左右のLEDが瞬時に点灯する。スマートフォンをポケットから取り出すことなく、目の前の風景を一人称視点で記録できる。見えているものについて「これは何?」と問いかければ、AIアシスタントが声で答える。

【写真で見る】会場に並んだRay-Ban Meta(Gen 2)

「AIグラス」の本命が日本上陸

こうしたスマートグラスの新製品「Ray-Ban Meta(Gen 2)」と「Oakley Meta」シリーズを、エシロールルックスオティカとMetaが5月21日から日本で発売する。レイバンとオークリーの2ブランドで、用途の異なる4つの製品ラインを揃える。

Ray-Ban Metaが初代を発売したのは2023年10月。米国を中心に発売し、その後世界各国へ広げ、累計数百万本を販売してきた。日本では初代も前身のRay-Ban Stories(2021年)も発売されていない。

スマートグラスを巡っては、 日本では2026年に入って国内勢の参入が相次いだ。

1月にOWNDAYSがカメラを持たないオーディオグラス「OWNDAYS CONNECT」を1万6000円で発売。2月には眼鏡市場のメガネトップが、カメラを備えつつAI機能は持たないスマートグラス「Linse(リンゼ)」を5万5000円で投入した。4月にはHTC NIPPONが、AIアシスタントを搭載したスマートグラス「VIVE Eagle」を8万2500円から発売している。加熱する国内市場に、ようやく本命が日本上陸する。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

体験会場ではRay-Ban Metaが並び、「Hey Meta」と話しかける操作を試せた(写真:筆者撮影)

本命と呼べる理由は、製品の機能だけではない。Ray-Ban Metaは世界で累計数百万本を売った実績がある。さらに日本では、レイバンとオークリーという通常のメガネブランドとして、全国の店舗で度付きレンズも含めて販売する体制が整う。スマートグラスをガジェットとしてではなく、日常のメガネとして届けられる。この点が、他の参入企業との違いになる。

画面を持たないAIグラス

Ray-Ban Metaの特徴は、ディスプレイを持たないことにある。スマートグラスには、視界に大画面を映して外部モニターとして使うタイプ(XREALなど)や、小型ディスプレイに通知や翻訳字幕を表示するタイプ(Metaの「Meta Ray-Ban Display」やRokidなど)もある。

Ray-Ban MetaとOakley Metaは画面を持たず、カメラとスピーカー、マイクにAIアシスタントを組み合わせたAIグラスだ。AIとの対話は音声で行い、ペアリングしたスマートフォンが頭脳となる。Ray-Ban Metaは、この方式で世界的なヒットを生んだ。

Ray-Ban MetaやOakley Metaでできることは、大きく3つに分けられる。

1つはハンズフリーの撮影だ。声で指示すれば、目の前の風景を写真や動画で残せる。2つ目は音楽再生と通話で、フレームに内蔵したオープンイヤー型のスピーカーが、耳をふさがずに音を届ける。3つ目がAIアシスタント「Meta AI」だ。カメラが捉えた風景や物体について質問したり、外国語の看板を翻訳させたり、調べ物を頼んだりできる。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

発表会では、撮影、オープンイヤー音声、ハンズフリー通話という3つの基本機能を説明した(写真:筆者撮影)

度付きからスポーツまで、4つのライン

Ray-Ban MetaとOakley Metaは、用途に応じて4つのラインに分かれる。

普段使いのサングラス型が「Ray-Ban Meta(Gen 2)」で7万3700円から、度付きレンズに対応する「Ray-Ban Meta Optics(Gen 2)」が8万2500円から(レンズ別売り)。アクティブな屋外向けの「Oakley Meta HSTN(ハウストン)」が7万7220円から、ランニングやサイクリングに特化した「Oakley Meta Vanguard(バンガード)」が9万6580円からだ。

主軸となるRay-Ban Meta(Gen 2)は前世代から大きく進化した。1200万画素の超広角カメラは画素数を2倍以上に高め、動画は3K Ultra HD画質で記録できる。連続駆動で最大8時間、付属の充電ケースで48時間分を追加できる。背景ノイズを約90%カットする5マイクアレイも搭載した。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

Ray-Ban Meta(Gen 2)の仕様。1200万画素カメラと最大8時間駆動のバッテリーを備える(写真:筆者撮影)

Ray-Ban Meta Opticsは、近視や遠視を補正する度数のレンズを入れられるバージョンだ。ニコン・エシロールによれば、こうした単焦点メガネレンズの使用者は日本に約6304万人おり、総人口のおよそ51%にあたる。メガネを日常的にかける層に、AIグラスを「日常のメガネ」として届けられる位置づけだ。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

Ray-Ban Meta Opticsを手に取ると、クリアフレームの内側に電子部品が透けて見えた(写真:筆者撮影)

Oakley Meta Vanguardは、レンズが顔を覆うラップ形状を採用する。視野角122度の1200万画素カメラをノーズパッド付近に中央配置し、IP67の防塵・防水性能を備える。時速48kmまでの風環境でも音声を聞き取れる設計だ。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

ランニングやサイクリング向けのOakley Meta Vanguard。レンズが顔を覆うラップ形状を採用する(写真:筆者撮影)

LEDを覆うと撮影できない仕組み

カメラを内蔵するウェアラブルデバイスにつきまとう懸念はプライバシーだ。Metaの日本法人であるFacebook Japan代表取締役の味澤将宏氏は発表会で、日本市場での発売にあたりプライバシー配慮を重視したと述べた。

撮影中はフレーム前面の白色LEDが点灯し、周囲に撮影中であることを知らせる。Gen 2ではLED自体が大型化され、屋外で約3.7メートル、屋内で約7.3メートル先からでも視認できるとMetaは説明する。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

Ray-Ban Meta(Gen 2)で動画を撮影しているところ。撮影中はフレーム前面のLEDが点灯する(写真:筆者撮影)

さらに踏み込んだのが「タンパー・ディテクション(改ざん検知)」機能だ。テープやシールでLEDを覆った状態で撮影を始めようとすると、Meta AIアプリに「LEDの覆いを外してください」と通知が表示され、撮影が始まらない。LEDを隠して周囲に気づかれず撮影する行為を、仕様レベルで抑止する設計だ。

ただし、米国ではすでにLEDを物理的に取り外す改造キットがオークションで販売されるなど、対策のいたちごっこも始まっている。Meta側はサービス利用ポリシーで改造行為を禁じている。

日本市場向けにLINE対応も予告

味澤氏は、日本市場に合わせた取り組みを生活アプリ、言語、アクセシビリティの3方向で示した。1つ目が、国内で広く使われるアプリ「LINE」との連携だ。提供時期は明言されていないが、現在準備を進めているという。Meta系のWhatsAppやMessengerだけでなく、日本のユーザー基盤に合わせる姿勢を見せた。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

「秋葉原駅への道順を教えて」と話しかけると、AIが経路をスマートフォンに送信した(写真:筆者撮影)

2つ目が言語への対応だ。発売時点では英語の看板を日本語の音声で読み上げるテキスト翻訳に対応する。英語と日本語のリアルタイム音声翻訳は6月頃の提供を予定する。

3つ目がアクセシビリティだ。視覚障害者向けの自律歩行ナビゲーションシステムを開発する国内スタートアップ、AshiraseとMetaが実証実験を進めている。歩行時の周辺情報をAIグラスで補う取り組みで、欧米でも注目される領域だ。

100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」

Ray-Ban MetaとOakley Metaは、Metaとエシロールルックスオティカが共同開発した製品だ。レイバンとオークリーは、ともにエシロールルックスオティカが抱えるアイウェアブランドである。

同社は2018年に伊ルックスオティカと仏エシロールの統合で誕生した世界最大手のアイウェア企業で、150カ国に650拠点、1万8000の店舗を展開し、従業員は20万人を超える。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

発表会に登壇した、左からエシロールルックスオティカのオリヴィエ・シュパン氏、マッテオ・バティストン氏、Meta日本法人の味澤将宏氏(写真:筆者撮影)

日本での事業は1986年に開始。2018年には鯖江市の高級メガネフレーム製造企業、福井めがね工業を傘下に収め、生産拠点とした。2024年には関東中心に約70の直営店を展開する眼鏡小売の和真を完全子会社化。レイバンやオークリーの直営店、百貨店コーナーと合わせて、国内の小売ネットワークは100店舗以上に達する。

販売は5月21日から、レイバンストア、オークリーストア、Meta.comの公式オンラインストア、認定小売店で行う。認定小売店ではオンライン先行が6月4日に始まる。製造から販売までを垂直統合で抱える企業基盤は、新興のAIグラスメーカーには再現が難しい。

「目立たない技術」をどこまで貫けるか

エシロールルックスオティカのチーフデザインオフィサー、マッテオ・バティストン氏は発表会で「インビジブルテクノロジー・ビジブルヒューマニティ」というデザインコンセプトを掲げた。技術を目立たせず、装着者の表情や人間性を前面に出すという考え方だ。

テクノロジーを「目に見えるガジェット」として誇示するのではなく、メガネというフォームファクターに溶け込ませる。Ray-Ban MetaとOakley Metaは、その考え方を、ディスプレイを持たず操作を音声に委ねる形で具体化した。見た目は通常のレイバンやオークリーのメガネに近い。

「AIグラス」の本命が日本上陸, 画面を持たないAIグラス, 度付きからスポーツまで、4つのライン, LEDを覆うと撮影できない仕組み, 日本市場向けにLINE対応も予告, 100店舗以上の流通網を持つ「メガネの巨人」, 「目立たない技術」をどこまで貫けるか

Ray-Ban Meta Optics(Gen 2)。クリアレンズを入れれば、見た目は通常の黒縁メガネに近い(写真:筆者撮影)

ただし、Metaはディスプレイを搭載した「Meta Ray-Ban Display」も並行して展開している。視界に通知やナビを表示するこのモデルは、2025年9月から米国の一部実店舗で先行発売中だ。価格はリストバンド型コントローラとのセットで799ドル。右目の小型ディスプレイを、手首の筋電位で操作する。2026年初頭には欧米の数カ国へ広げる計画だが、日本での発売予定は明らかにされていない。

日本のAIグラス市場には、すでにOWNDAYSやメガネトップ、HTCの製品が並ぶ。そのなかでRay-Ban MetaとOakley Metaが持ち込むのは、機能の多さだけではない。レイバンやオークリーの店舗で通常のメガネと同じように試し、度付きにして持ち帰る。その購入体験ごと、AIグラスを日常のメガネに近づけようとしている。