名車「RZ250」を感じるカラーに注目…ヤマハの新作ネオレトロバイク「XSR155」が排気量を125ccから30cc増やした理由
近年の二輪車市場における大きな潮流のひとつが「ネオレトロ」と呼ばれるジャンルである。1960~80年代に活躍した名車を想起させるレトロな外観に、現代の技術を融合したモデル群を指し、欧米や日本のみならず、アセアンを中心とする東南アジア市場でも高い支持を集めている。
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そうした中、ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)はネオレトロモデルの新たな一手として「XSR155 ABS(以下、XSR155)」を発表。2026年6月30日に発売することを明らかにした。
同モデルは、シリーズのエントリー機である125ccの原付二種「XSR125」と基本構成を共有しつつ、排気量を155ccへ拡大。軽快な取りまわしを維持しながら、高速道路の走行も可能とした軽二輪モデルである。
2ストスポーツ「RZ250」オマージュのカラーも用意

1980年発売のヤマハ「RZ250」(写真:ヤマハ発動機)
さらに、80年代の名車「RZ250」を想起させるカラーリングも用意。若年層だけでなく、往年のバイクファンにも訴求する1台となっている。
当記事では、ヤマハ主催の発表会で得た情報をもとに、その特徴とともに、155ccモデル投入の背景にあるヤマハの戦略を読み解く。

ヤマハ「XSR900」(写真:ヤマハ発動機)

ヤマハ「XSR700」(写真:ヤマハ発動機)

ヤマハ「XSR125」(写真:ヤマハ発動機)
XSR155は、ネオレトロ(またはネオクラシック)と呼ばれるカテゴリーに属する軽二輪モデルである。レトロな意匠と現代性能を融合していることが特徴で、10年代半ば以降、欧州市場を起点に拡大し、現在では世界的なトレンドとして定着した。
そんな現代のトレンドを取り入れたのが、ヤマハが「スポーツヘリテージ」と呼ぶXSRシリーズだ。16年に「XSR900」を投入。17年には「XSR700」、23年には125ccクラスの需要拡大を受け「XSR125」を導入し、ラインナップを拡充してきた。

ヤマハ「XSR900 GP」(写真:ヤマハ発動機)
加えて24年には、往年のレーサーを想起させるフルカウル仕様の「XSR900 GP」も発売。初心者からベテランまで幅広い層を取り込むシリーズへと成長している。
なぜ原付二種の125ccではなく、155ccなのか

新型として発表されたヤマハ「XSR155」(写真:筆者撮影)
今やヤマハを代表する人気シリーズとして確立したXSRシリーズ。新型XSR155は、そのラインナップをさらに強化するために国内投入された。では、なぜ155ccなのか。それは、日本では、125cc以下の原付二種は、法規により高速道路を走行できないことが関連している。
当初、ヤマハでは、同シリーズのエントリーモデルとして、欧州や日本では、免許制度の関係もあり125ccのXSR125を設定していた。国内で125cc以下の原付二種は、比較的取得するハードルの低い小型限定普通二輪免許でも乗ることができる。また、欧州(EU加盟国)でも排気量125ccまで、最高出力15馬力以下のバイクは「A1」という区分に該当し、17歳以上の若いライダー向けクラスとなっている。
一方、155ccモデルは、アセアンなど東南アジア専売だった。ヤマハとしては、同様の車体などを持ちながら、違う排気量のエンジンを搭載したこれら機種を仕向地別に設定していたのだ。

XSR155のリアビュー(写真:筆者撮影)
ところが、そんなヤマハの戦略に対し、国内市場では「(XSR125は)高速道路を走れないのが残念」といった声が多く上がる。今のトレンドを採り入れたスタイルや軽快な走りがメインターゲットの若者層だけでなく、シニア層のリターンライダー(若い頃に一度バイクを降りたが再び乗りはじめた層)など、想定以上に幅広いユーザーから支持を受けたのだ。
とくに休日にツーリングを楽しみたいライダーたちにとって「高速道路を使えない」のは、行き先が限定され、かなりのマイナス要素。ヤマハの広報担当者は、XSR125を販売開始した23年から「2年間ずっと同様の声をいただいていました」という。そんな国内ユーザーからの要望に応えたのがXSR155なのだ。ちなみに国内では従来の125cc版も併売する予定。155ccと125ccの両方を揃えるのは日本だけの設定となる。
新型XSR155の外観について

XSR155のヘッドライト(写真:筆者撮影)
そんなXSR155のスタイルは、基本的にXSR125と同様。オーセンティックでレトロな外観を持つ同シリーズのフォルムを継承しつつも、「新たな個性を持たせていること」がポイントだ。
たとえば、ヘッドライトやテールランプ、メーターなどには、丸いデザインを採用することでレトロな雰囲気を演出。横にラインが入ったタックロールタイプのシート、ライトのステーやサイドカバーなど各所にはアルミ製パーツも採り入れ、クラシカルな高級カスタムバイク的テイストも醸し出す。

XSR155のタイヤ&ホイール(写真:筆者撮影)
また、前後17インチのブロックパターンタイヤやエンジンガードなどがタフなイメージを加味。スポーツテイストの強い900cc版や700cc版に対し、60年代などに一斉を風靡した「スクランブラー」と呼ばれるオフロード系スタイルも彷彿させる。
なお、XSR155の車体サイズは以下のとおりだ。
【XSR155の車体サイズ】
全長:2005mm
全幅:805mm
全高:1075mm
ホイールベース:1325mm
XSR125の車体サイズと比べ、意外だが全長が25mmほど短くなっている。全幅や全高、ホイールベースは同じ。810mmというシート高、137kgという軽量な車両重量も共通だ。
排気量を155ccに拡大したエンジン

XSR155のエンジンまわり(写真:筆者撮影)
パワートレインには、排気量155cc・水冷4ストロークSOHC単気筒を搭載する。同様のエンジンで、排気量が124ccとなるXSR125とは、スペックが以下のように異なる。
【XSR155のエンジンスペック】
155cc・水冷4ストロークSOHC単気筒
最高出力:14kW(19PS)/10000rpm
最大トルク:14N・m(1.4kgf・m)/7500rpm
【XSR125のエンジンスペック】
124cc・水冷4ストロークSOHC単気筒
最高出力:11kW(15PS)/10000rpm
最大トルク:12N・m(1.2kgf・m)/8000rpm
排気量の大きいXSR155のほうが、やはり最高出力や最大トルクも大きい。急な上り坂の走行や発進時の加速などに、より余裕を感じられることが予想できる。
また、「VVA」という可変バルブ機構を採用していることも同様だ。VVAとは、「Variable Valve Actuation」の略。エンジン内で燃焼する混合気を採り入れる吸気側バルブを動かすカムに、低速向けと中高速向けを装備した機構のことだ。
2つのカムが7000~7400rpmの回転数で切り替わることで、全域で優れたトルク特性を発揮。小排気量のスポーツバイクにありがちな低速からの加速が物足りない感じや、高回転までまわさないとバイクが走らないといったストレスを解消することが期待できる。

XSR155のシート(写真:筆者撮影)
筆者は、同じVVA機構を持つXSR125に試乗したことがあるが、発進時の低回転域からスムーズな走りを実感。また、レッドゾーン手前の1万回転付近まで一気にスロットルをひねっても、トルクの谷を感じさせず、心地いい加速感を味わえた。おそらく、そうした特性はXSR155も同様だろう。しかも排気量がより大きい。たとえば、峠の登り坂や長距離クルージングなどで、さらに余裕のある走りを楽しめることが予想できる。
XSR155では、ほかにも加減速時にストレスのないシフト操作を実現する「アシスト&スリッパー(R)クラッチ」も採用。この点もXSR125と同様で、クラッチレバーの軽い操作性に寄与するとともに、減速時に過度なエンジンブレーキがかかりにくいことで、より安定した走りも実現する。
フレームやサスペンションについて

XSR155のリアセクション(写真:筆者撮影)
車体関連では、ヤマハ独自の「デルタボックス型フレーム」を採用。特徴は、硬すぎず、軟らかすぎない、適度な剛性を持つこと。街乗りから郊外のワインディングなど、幅広いシーンで高い操作性の実現に貢献する。
また、サスペンションには、高い剛性を誇る倒立式フロントフォークも採用。インナーチューブ径37mm、ストローク130mmのこのサスペンションにより、優れたショック吸収性や良好なタイヤ接地感などを実現する。
さらに裏面のリブ形状をチューニングし、アーム長とのバランスを図った軽量アルミ製リヤアーム、140/70-17サイズのワイドなリヤタイヤなどとの組み合わせは、軽快で扱いやすいハンドリングに貢献。ニーグリップしやすい形状のスリムな燃料タンク、アップライトなバーハンドル、スリムな車体などにより、コンパクトなライディングポジションも実現し、さまざまなシーンで自由な走りを楽しめるバイクに仕上がっているという。

グリーニッシュグレーメタリック2のボディカラー(写真:筆者撮影)

ライトブルーイッシュグレーメタリック9のボディカラー(写真:筆者撮影)
新型XSR155は、ボディカラーも注目だ。
設定するのは、「ブラックメタリック12(以下、ブラック)」「グリーニッシュグレーメタリック2(以下、グリーン)」「ライトブルーイッシュグレーメタリック9(以下、シルバー)」の3タイプ。
とくに、ブラックは、ヤマハの伝説的名機「RZ250」に採用されていたカラーをオマージュしたものだ。ブラックを基調に、燃料タンクの「YAMAHA」ロゴを赤白、各部にゴールドのラインも入れた配色は、筆者も含め、当時を知る多くのベテランライダーに「刺さる」カラーだといえる。

RZ250を彷彿とさせるブラックのカラーリング(写真:筆者撮影)
80年に登場したRZ250は、軽量な車体に247cc・水冷2ストローク2気筒エンジンを搭載。クラスを超えた圧倒的な動力性能を誇り、高性能バイクの代名詞だった「ナナハン」と呼ばれる、750ccの大排気量車を峠のワインディングなどで追いまわすほどのシャープな走りを実現した。その速さから当時、「ナナハンキラー」の愛称で呼ばれ、多くのファンを虜にした大ヒットモデルだ。
XSR155のブラックカラーは、そんなRZ250をイメージしていることが一目でわかるほどの再現性。ヤマハによれば、「グリーンやシルバー(のボディカラー)は主に若い世代向け」という。一方、ブラックは「(RZ250を知る)シニア層などのベテランライダーにも対応できるカラー」として採用した。
そのため、フロントフォークも、グリーンやシルバーのタイプがブラック仕上げなのに対し、ブラックのタイプではゴールドで差別化。シニア層など、比較的“やんちゃ”な雰囲気を好むユーザーの嗜好にも対応していることがうかがえる。
USインターカラーの外装キットも発売予定

モーターサイクルショーに展示された、USインターカラーの外装キットを装着したXSR155(写真:筆者撮影)
さらにヤマハによれば、イエローとブラックの「USインターカラー」外装キットも純正パーツを扱うワイズギアから発売予定とのこと。このキットを装着した車両は、3~4月に大阪・東京・名古屋で開催された「モーターサイクルショー」に展示。ユーザーから大きな反響があったことで、発売を決めたそうだ(価格や発売時期は未発表)。
ちなみにUSインターカラーとは、70~80年代にかけて、とくにアメリカのレースシーンで活躍したヤマハ製レーシングマシンに採用されていたグラフィック。伝説的なレーシングライダー「ケニー・ロバーツ」氏が、世界最高峰の「WGP(現在のMotoGP)」で3連覇した際に乗った「YZR500」に採用されたことで有名。

USインターカラーのXSR900GP(写真:筆者撮影)
同様のカラーは、現在XSR900GPの純正色にも採用されており、昔からのバイクファンから好評を得ている。XSR155でも、純正オプションとはいえ、このカラーを採用したということは、かなりシニア層などを意識していることがわかる。当モデルが、若い世代からベテランまで、幅広いユーザーをターゲットとしていることの証といえよう。
またがった印象/XSR125との比較

XSR155のメーターまわり(写真:筆者撮影)
ちなみに発表会の会場では現車にまたがったが、とてもコンパクトなライディングポジションが印象的だった。アップハンドル、ニーグリップ部分が絞られた燃料タンク、ホールド性に優れるシート、スリムな車体などにより、上体が起きて、かなり自由度の高いポジションだと感じた。
足つき性は、シート高が810mmと高めで、座ってもリアサスがさほど沈まないこともあり、両足を地面に着けようとすると、かなりカカトが浮いてしまう。ただし、137kgという軽い車重だから、車体を支えやすく、バランスを崩して立ちゴケする不安はあまりない。押し歩きの取りまわしも良さそうだ。また、片足の場合は、カカトまで地面にベッタリと着くので、信号待ちなどでも不安なく停車状態を維持できそうだ。
なお、こうした印象もXSR125とほぼ同じ。ヤマハがアピールするように、125ccの軽さや扱いやすさに、155ccエンジンの余裕ある出力を加味した仕様であることがわかる。

XSR155の開発陣。左からMC商品戦略部ストリートG商品企画の小玉 歩さん、SV開発部Sv設計5Gプロジェクトリーダーの上田 匠さん、第1PT設計部ST-PT設計2Gエンジン開発の藤井勇輔さん、クリエイティブ本部プロダクトデザイン部デザイナーの溝越万莉さん(写真:筆者撮影)
XSR155の価格(税込み)は53万9000円。XSR125の50万6000円に対し、3万3000円の上乗せとなる。この差額で高速道路の走行が可能になる点をどう評価するかは、ユーザーの選択を左右するポイントといえそうだ。
ちなみに同クラスの軽二輪モデルとしては、スズキ「ジクサー150」が挙げられる。154ccの空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載し、装備重量139kgと軽量な車体を持つなど、スペック面での共通点も多い。一方で、価格(税込み)は39万6000円と、XSR155より10万円以上安価に設定されており、コストパフォーマンスを重視する層から支持を集めている。
ライバルモデルのジクサー150との違い

XCR155の走行イメージ(写真:ヤマハ発動機)
ただし、両モデルは性格が大きく異なる。ジクサー150はストリートファイターと呼ばれるスポーツモデル。現代風のアグレッシブなデザインが特徴だ。対するXSR155は、ネオレトロというデザイン性や世界観を重視したモデルだ。このため、単純な価格や性能だけで比較できる関係とは言いがたい。
実際、軽二輪クラスにおいてネオレトロスタイルを採用するモデルは限られており、その意味でXSR155は比較対象が少ない“独自ポジション”にあるといえる。
都市部での扱いやすさに加え、高速道路を使ったツーリングにも対応。さらにブロックパターンタイヤによって軽いダート走行もこなすなど、用途の幅広さも特徴だ。こうした多様性こそが、XSR155の大きな魅力といえるだろう。

ビームスとのコラボ車両(写真:筆者撮影)
またヤマハは、今回の発表会でセレクトショップ「ビームス」が展開するプロジェクト「ハッピー・アウトサイド・ビームス」とのコラボ車両も展示した。「外遊び」をテーマに、XSR155をアウトドア仕様にカスタマイズしたもので、ライフスタイル提案型の訴求も進めている。
当車両や装着パーツに関し市販化の予定はないものの、今後は同プロジェクトとのタイアップを通じたプロモーションなどに使っていくという。こうした取り組みも含め、XSR155が国内軽二輪市場にどのような影響を与えるのか、注目される。