【もう逃げられない】石油不足「6月危機」で日本経済大減速…”世界の潮流に逆行する”政府の愚策に専門家も呆れた
政府はナフサ・原油についてアメリカやペルーからの代替調達を急ぐが、専門家たちの見方は冷ややかだ。
コネクトエネルギー合同会社CEOの境野春彦氏は、日本の精製設備が抱える課題を指摘する。
「日本の化学・石油精製産業は、時代の産業構造の変化に合わせる形で、数十年にわたって中東産原油の処理に適した設備の設計・最適化を行ってきました。
しかし、代替として国がアピールする米国産原油は、中東産に比べてサラサラしており、成分が異なります。これをそのまま国内の設備に投入しても、現在不足しているシンナーや塗料の原料を十分に生産することは容易ではありません」
【前編記事】『石油不足のせいで「日本人の命があぶない」…値上げラッシュより怖い、真夏の日本を襲う《エアコンが使えなくなる》問題』よりつづく。
あまりにも甘すぎる政府の認識

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政府が喧伝する「代替調達」という言葉の響きとは裏腹に、現場のインフラレベルでは、原料の転換に対応しきれないリスクが残されているのだ。
それでも、「日本には国家・民間合わせて大量の石油備蓄があるため問題ない」という見方も永田町や霞が関には根強い。しかし、国際経済の動向を分析してきた慶應義塾大学産業研究所教授の野村浩二氏は、その認識の遅れを指摘する。
「グローバル化した現代経済の下では、一国だけで備蓄を抱え込む効果は相対的に小さくなっています。国は3月に『250日分の備蓄があるから安心だ』と説明しましたが、現場のサプライチェーンを見れば、その数字だけで安心することはできません」
野村氏が指摘するのは、過去20年で網の目のように広がった、アジア圏の相互依存関係だ。
「この20年ほどでサプライチェーンのグローバル化は劇的に進みました。日本と同じように、すべての国が十分な石油備蓄を持っていれば話は別ですが、東南アジアにはエネルギー安全保障が脆弱な国が多くあります。
もしそれらの国々への原油供給が完全に止まればどうなるか。日本が国内で生産せず、東南アジアの工場に依存している部品や素材の供給がストップします。結果として、日本国内にどれだけ石油があっても、製品を組み立てることができず、経済活動全体が停滞してしまうのです」
「世界の潮流に逆行する政策」
すでにその兆候は現れている。ベトナム唯一の巨大石油化学工場(ロンソン・ペトロケミカルズ)がナフサ調達難で一時停止に追い込まれるなど、現地でのプラスチック原料の供給網が遮断されている。
ベトナムに進出している日系企業は調達ルートの再編を迫られているという。日本のサプライチェーンは早くも限界を迎えつつあるのだ。

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これほどのナフサ危機に対し、現政権が打ち出す政策は「ピント外れ」どころか、事態を悪化させている。境野氏は、政府がガソリンに巨額の補助金を出し続けていることを「世界の潮流に逆行する政策」と批判する。
「ガソリンとナフサの生産はトレードオフの関係にあります。ガソリンの生産比率を少し下げて、その分ナフサの生産を増やすよう石油会社に要請すべきなのに、ガソリンに補助金を出すことで、むしろガソリンの消費と生産を促してしまっている。インドなど諸外国では自動車利用の自粛を求めるなどガソリンの消費抑制に努めているのに、日本だけが逆行しています」
こうした石油・ナフサ危機は最終的に、日本経済の大減速を引き起こしかねない。
まず経済の根幹である物流が停止する。軽油やエンジンオイルが不足することで、トラック輸送網が維持できなくなる。境野氏が警告する。
「この業界は零細・中小業者が多いため、廃業した業者は二度と戻ってきません」
あらゆる業種がドミノ倒しのように潰れていく
たとえ数ヵ月後に中東情勢が解決して原油が戻ってきたとしても、そのときには製品を全国へ運ぶ運送会社も運転手も激減しているのだ。
さらに原料高騰を価格に転嫁できない中小企業や町工場が仕入れコストの上昇に耐えかねて、あらゆる業種でドミノ倒しのように潰れていく。帝国データバンクが発表した「『物価高倒産』の動向」によると、4月に物価高倒産が急増。その筆頭が建設業であり、建材高騰の直撃を受け資金繰りに窮した倒産が相次いでいる。次いで製造業(食品・飼料・飲料製造など)、小売業(飲食店など)が続く。

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懸念されているのは、こうした事態が長期化することだ。ニュースサイト「LOGISTICS TODAY」編集長の赤澤裕介氏が語る。
「中東での戦闘が終結したとしても、国内経済への影響が解消されるまでには相当な時間を要します。仮に今日この瞬間に停戦が合意されたとしても、海上物流が正常な状態に戻るまでには、早いもので数週間、通常は数ヵ月、長い場合には半年程度のタイムラグが発生します」
安価なエネルギーを無制限に消費できる「平時」は終わった。私たちは「6月危機」を機に、生活防衛の常識を根底から書き換えなければならない局面に立たされている。
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「週刊現代」2026年6月8日号より