夜行列車で朝市へ、「深夜の幕回し」にファン興奮…途中駅では行き違いのため1時間以上停車も
JR東海は1日、三重県尾鷲市の尾鷲魚市場で毎月第1土曜に行われる朝市「尾鷲イタダキ市」に合わせ、名古屋駅発の夜行列車を運行した。在来線の乗客増を目指すJR東海と、人口減が進む地域の活性化を図る市側の狙いが重なった企画で、朝市に合わせた夜行列車はJR東海では初めてだった。(吉田悠馬)
「スイッチバック」も

亀山駅で深夜に行われた「幕回し」を撮影する乗客(いずれも1日)
10月31日午後11時54分、「キハ75形」2両編成がエンジンの 轟音(ごうおん) を響かせて名古屋駅に入線した。日頃は伊勢や鳥羽と名古屋を結ぶ快速「みえ」などで使われるエンジン駆動の気動車だ。2028年度以降に順次引退の予定で、乗客はしきりに写真を撮っていた。

日付が変わった1日の午前0時9分、乗客38人を乗せて出発。貨物列車とすれ違いながら関西線を南下し、約1時間後に亀山駅へ到着した。駅では、列車の行き先のほか、急行や区間快速といった表示を変える「幕回し」があった。今は使われていない「急行かすが」などの名称が次々と表示されるのは愛好家にはたまらない。
新潟県上越市から訪れた公務員男性(34)は「『深夜の幕回し』のために参加した。4時間以上かけて来たかいがあった」と大喜びだった。
亀山駅で進行方向を変える「スイッチバック」をした後、紀勢線に入り、乗客は星空や深夜の駅の雰囲気を堪能した。上り列車との行き違いのため1時間以上停車した駅もあったが、名古屋市中村区の会社員男性(48)は「車両の外に出られ、リフレッシュできた」と好意的だった。
列車は熊野市の波田須駅からの風景を眺めるため、目的地をいったん通り過ぎた後、熊野市駅で折り返した。午前8時32分、尾鷲駅へ。約8時間半かけて約250キロの道のりを進む旅だったが、疲れた様子の人は少なかった。
魚市場で朝ごはん

朝市で刺し身の品定め(尾鷲市で)
尾鷲駅では地元関係者ら約50人に出迎えられ、約30分後から尾鷲魚市場で始まる尾鷲イタダキ市に徒歩やバスで向かった。
刺し身や総菜、和菓子などが販売されたほか、「朝ごはんスペシャル」と題して尾鷲商工会議所女性会がご飯とアオサのみそ汁を販売した。干物や貝などを炭火であぶって提供し、舌鼓を打つ姿が見られた。
川崎市の自営業女性(65)は「神奈川の朝市はあまり行かないが、きょうは楽しかった。今度は家族で尾鷲を訪れたい」と満足そうだった。
尾鷲商工会議所プロジェクト室の山本浩之室長は「想像以上の盛り上がり」と喜び、名古屋から同行したJR東海営業課の沖健太担当課長は「お客さまには夜行列車、朝市とも満足いただけたと思う。2回目も検討したい」と話した。
体験乗車し、今回の企画は鉄道が地域活性化に好影響を与えていると感じた。遠方からも人を呼び込み、地元も盛り上がる。今後の展開に期待したい。