コマツが手がける「電動ショベル」、設計者が見た運転手が笑顔になる意外な理由…電動が持つ価値はまだある
道路工事や建設現場で活躍する機械の設計を担っている。コマツの建設機械設計者、澤田悠貴さん(32)が入社以来携わってきたのは、これからの主力製品として注目される「電動ショベル」。自動車業界で起きているEV(電気自動車)化の流れを、建設機械にも広げられないか――。そんなイノベーションのけん引役だ。

澤田悠貴さん
電動ショベルが建設現場に投入されるようになったのは、ここ数年のことだ。入社当時は試作車が登場したばかりで、普及型の開発計画が動き始めた頃だった。最初に任された設計は、10cm四方の小さな部品。配線を固定するための地味なものだったが、線を切らないか、耐久性は十分か、生産はしやすいかなど、検討項目は山ほどあった。「初めて形となって手元に届いた時の感動は今でも忘れない」と懐かしむ。
電動化に伴い、ショベルに搭載される制御装置も複雑になった。専用ソフトウェアの開発も経験し、プログラムのコードを一から書き上げる技術も身に付けた。現在は部品の設計だけでなく、運搬・交換できるバッテリーの特性を生かしながら、現場に電力をどう届けるかといった課題にも挑んでいる。バッテリーは建設機械以外でも幅広く用いられるため、簡単に届く仕組みができれば市場拡大の可能性が広がる。
設計に欠かせないのは、製品がどのように使われているのかを直接見ること。現場に足を運ぶうちに、オペレーター(操作手)がみんな笑顔で働いていることに気付いた。昔のショベルカーのような騒音がなく、会話が生まれていたのだ。夜間や屋内で使えるだけではない。「電動が持つ価値はきっとまだまだある」。そう信じている。
志したのは「格好いい!」から

澤田悠貴さん
小学生ぐらいの頃、テレビで災害救助用ロボットの特集番組を見て、「格好いい! こういうのを作ってみたい」と憧れを抱いた。もともと絵画や工作などモノ作りが好きだったこともあり、高校、大学は理系(機械)の道に進んだ。ヒト型よりも特殊な形をしたロボットに関心があり、建設・鉱山機械メーカーの募集に心ひかれたという。
少年時代から各地の科学館や博物館にたくさん連れて行ってもらった。その経験が、「知的好奇心の源になっている気がする」と振り返る。社会人になってからも時折、一人で博物館に出かけているという。
HISTORY
1993年 群馬県桐生市で生まれる
2012年 群馬県立桐生高校卒業
2017年 群馬大学理工学部卒業
2019年 群馬大学大学院理工学府修了
コマツに入社。開発本部車両第四開発センタ次世代商品開発グループに配属
2023年 電動化開発センタ第二開発グループに
異動
2025年 次世代商品開発グループに再配属
澤田さんの1日
8:15 出社
9:00 試作車の組み立てに立ち会う
12:15 昼食
13:00 開発プロジェクトの会議
14:00 開発機種の設計
16:00 共同開発を進める企業との打ち合わせ
17:00 性能を検討する資料の作成
18:00 退社
澤田さんに聞く3つの質問
Q.この仕事に向いているのは?
A.新しい技術に興味のある人
入社前に必要な資格はなく、AIやロボットなどの新しい技術に好奇心を持てるクリエイティブな感性が大事。設計職には理系出身者が配属され、大学で電気や機械を専門に学んだ人が多い。修士・博士卒が約8割。学部・高専卒が約2割。
Q.実務デビューまでの期間は?
A.およそ6か月
仕事に必要な知識や資格は入社後の研修で身に付ける。製図の基礎やツールの使い方などを学び、半年後に設計職としての実務が始まる。大学の専攻によっては図面を見たことがない人もいるが、基礎から学ぶので大丈夫。
Q.休日の過ごし方は?
A.社会人になって始めたゴルフ
同僚に誘われたことがきっかけ。月に1回程度は出かけ、最近は会社の上司や仲間と楽しんでいる。電動化が進んでいるフォークリフトの設計者を紹介してもらうなど、交流の幅が広がっている。
マストアイテムは…

アクションカメラ
出張先の建設現場で記録用として使う。作業の様子を広く映せるので便利だ。また、オンラインを使う会議では部屋全体を映すウェブカメラに変身。「二刀流」のアイテムとして手放せない。