両陛下のオランダ・ベルギー訪問が紡ぐ皇室外交の次世代展望、愛子さまと欧州「未来の女王たち」の新たな時代

2026年6月13日から26日の日程で国賓としてオランダとベルギーを訪問される天皇皇后両陛下(写真:共同通信社)
天皇皇后両陛下は6月13日から26日まで、国賓としてオランダとベルギーを訪問される。両国の国王からの招請を受けて実現する今回のご訪問は、令和の皇室にとって大きな節目となるものだ。
そこには、皇室と両国王室が長年にわたり育んできた友好の歴史があり、さらに愛子さまと欧州王室の次世代が紡いでいく未来への展望も重なっている。
逆風の歴史を越えて──雅子さまを救ったオランダ王室との絆
日本とオランダの交流は江戸時代にまでさかのぼる。長崎・出島を通じて、オランダは日本が西洋の知識に触れる窓口でもあった。
しかし第二次世界大戦中、日本軍は当時オランダ領だったインドネシアを占領し、多くのオランダ人が捕虜となったことから、戦後のオランダ社会には、日本に対する厳しい感情が長く残った。
その空気を変える節目となったのが、2000年、当時の天皇皇后、現在の上皇ご夫妻によるオランダご訪問だった。ご夫妻はアムステルダムの戦没者記念碑を訪れ、長く黙礼された。その真摯なお姿は、戦争で傷ついた人々の心に向き合おうとする、平成の皇室の姿勢を象徴する場面でもあった。

2000年5月、オランダ・アムステルダムのダム広場で戦没者記念碑に供花し、黙とうされる当時の天皇皇后両陛下(写真:共同通信社)
オランダは、皇后雅子さまにとっても忘れがたい場所である。
2006年、当時長期療養中だった雅子さまは、皇太子だった天皇陛下、愛子さまとともに、ベアトリクス女王の招きにより同国で静養されるために渡蘭。国内で厳しい注目を浴び、心身の回復に時間を必要とされていた雅子さまにとって、オランダ王室の心遣いは大きな支えになったことだろう。
当時のベアトリクス女王は、雅子さまを形式的な賓客としてではなく、苦境にある友人を迎えるように温かく招いた。幼い愛子さまも含めたご一家の滞在は、皇室とオランダ王室の交流が、単なる儀礼を超えた「家族ぐるみ」の関係であることを物語っている。
国際派キャリアの共通点、雅子さまとマキシマ王妃の「特別な友情」
そのオランダ王室について、オランダ在住の世界的なハーピスト(ハープ奏者)で、雅子さまとも親交のある長澤真澄さんは、筆者のインタビューに対し、こう語っている。
「オランダ王室は非常に開かれた存在であり、国民にとっても親しみを感じやすい存在として受け止められているように思います。これはオランダ人の国民性とも無関係ではないでしょう。一般にオランダ人は、率直で飾らない気質を持ち、シンプルさを重んじる傾向があるように感じます」
格式を保ちながらも、国民との距離が近いオランダ王室。その開かれた空気が、療養中の雅子さまを迎え入れた際にも、大きな意味を持ったのではないだろうか。
両陛下とオランダ王室の絆をさらに深めた存在が、ウィレム=アレクサンダー国王の妻、マキシマ王妃である。アルゼンチン出身のマキシマ王妃は、結婚前、ニューヨークの銀行に勤務していた。国際的なキャリアを積んでから王室に入った点で、外務省で働いた経験を持つ雅子さまと重なる。

オランダのマキシマ王妃(2023年11月撮影、写真:Utrecht Robin/ABACA/共同通信イメージズ)
2013年、療養中だった雅子さまは、ウィレム=アレクサンダー国王の即位式に出席するかどうか、慎重に考えられていた。
その時、マキシマ王妃が雅子さまに直接電話し、「ぜひオランダにお越しになってください」と伝え、背中を押したとも伝えられている。そうして雅子さまは陛下とともにオランダを訪問し、実に11年ぶりとなる外国への公式訪問を果たされた。

2013年4月30日、オランダのアレクサンダー国王の即位式に出席された、当時の皇太子ご夫妻(写真: ゲッティ/共同通信イメージズ)
1953年から続く深い友情、皇室とベルギー王室の「親密な歩み」
両陛下がオランダとともに訪問されるベルギーもまた、皇室と長年にわたり親密な交流を続けてきた国である。
その始まりの一つは1953年にさかのぼる。当時皇太子だった上皇さまは、英国のエリザベス2世女王の戴冠式に参列された後、欧州各国を巡られ、ベルギーにも滞在された。ラーケン宮では、3歳年上のボードワン国王から、まるで家族の一員のような温かいもてなしを受けられた。
この交流はその後も続き、1993年、ボードワン国王が亡くなった際、上皇ご夫妻は葬儀に参列するためベルギーを訪問された。世界の王族が集う中で、上皇ご夫妻が葬列の前方を歩かれたことは、生前の国王との深い親交を物語る場面だった。

1993年8月7日、ボードワン国王の国葬に参列するため、各国の王族と並んでサンミシェル大聖堂に入る、当時の天皇皇后両陛下(写真:共同通信社)
現在のフィリップ国王と天皇陛下も、皇太子時代から幾度となく親しく交流され、高校時代の欧州旅行や英国留学中にもベルギーを訪問されている。
1999年には、両陛下が当時皇太子だったフィリップ国王とマチルド王妃の結婚式に出席するため、ベルギーを訪問された。雅子さまとマチルド王妃の関係も、ここから長い年月をかけて育まれていった。
マチルド王妃は2012年、フィリップ国王とともに来日し、東日本大震災の被災地を訪れて人々を励まされた。互いを思いやる心の積み重ねが、皇室とベルギー王室を深く結んできたのである。
オランダとベルギーへの訪問は、両陛下にとって、特別な思い出と確固とした友情を心にとどめる懐かしい再会の旅でもあるのだろう。そして、それは雅子さまにとって、ご回復への出発点となった場所だと言えるのではないだろうか。
欧州は「未来の女王」の時代へ、日本では皇位継承資格なき愛子さま
そして今回のご訪問には、もう一つの未来への視点がある。それは、愛子さまと欧州の同世代の王女たちとの関係だ。
現在、ヨーロッパの王室を見渡すと、オランダのカタリナ=アマリア王女、ベルギーのエリザベート王女、スペインのレオノール王女など、次世代を担う若い女性王族たちの存在感が際立っている。

オランダのアマリア王女(2026年5月撮影、写真:Bruno Press/ABACA/共同通信イメージズ)

ベルギーのエリザベート王女(2025年10月撮影、写真:Niviere David/ABACAPRESS.COM/共同通信イメージズ)

スペインのレオノール王女(2026年1月撮影、写真:Europa Press/ABACA/共同通信イメージズ)
カタリナ=アマリア王女は2003年生まれで、王位継承順位第1位。ベルギーのエリザベート王女は2001年10月生まれで、同じ2001年12月生まれの愛子さまと同世代であり、こちらも王位継承順位第1位である。スペインのレオノール王女もまた、将来の女王として公的な準備を進めている。
つまり欧州では「未来の女王たち」が、すでに次代の王室を担う存在として歩み始めているのだ。
この点は、日本の皇室とは大きく異なる。愛子さまは天皇皇后両陛下の唯一のお子さまであり、国民からの関心も極めて高い。しかし、現行の皇室典範では皇位継承は男系男子に限られているため、愛子さまに皇位継承資格はない。
欧州王室の多くは「国王の長子」が男女お問わず次代の君主として育ち、日本では「天皇の長子」である愛子さまが、皇位継承者ではなく女性皇族として公的活動や国際親善を担われていく。
制度の壁を越えるソフトパワー、愛子さまが担う「新しい親善」
しかし、この制度の違いは、国際親善における愛子さまの存在感を少しも損なうものではないだろう。むしろ、欧州の未来の女王たちと愛子さまが、同じ時代を生きる若い女性皇族・王族として交流を重ねることは、従来の政治や力の論理とは異なる、新しい皇室・王室の友好親善の可能性を示すものとなるはずだ。
愛子さまとオランダ王室の次世代との縁は、幼い頃から始まっている。
2006年、雅子さまの静養のためにご一家がオランダを訪問された際、当時4歳だった愛子さまは、カタリナ=アマリア王女とも時間を共にされた。成長されたお二人が将来、国際親善の場で再会されることがあれば、それは家族ぐるみの交流をさらにつなぐものとして受け止められるはずである。

2006年8月、オランダのアレクサンダー皇太子(当時、右から2人目)一家の案内で、王室馬車庫をご覧になる、当時の皇太子ご夫妻と愛子さま(写真:共同通信社)
ベルギーのエリザベート王女との関係にも、未来の可能性がある。エリザベート王女はオックスフォード大学で歴史・政治学を学んだ後、ハーバード大学のケネディスクールで公共政策を修めるなど研鑽を重ねている。愛子さまも学習院大学文学部日本語日本文学科で学び、日本の古典や文化への理解を育まれてきた。さらに日本赤十字社で勤務される姿は、人道や福祉という価値観にも通じる。
現代の王室や皇室に求められているのは、国民に寄り添う姿勢であり、社会的に弱い立場にある人々へのまなざしや、文化や平和を体現する力である。環境問題、児童福祉、人道支援、文化交流。こうした分野で若い女性皇族・王族たちが連帯を示すことは、国家間の緊張を和らげる大きなソフトパワーとなり得る。
愛子さまは皇位継承者ではない。しかし、日本を代表する若い女性皇族として、欧州の未来の女王たちと心を通わせることのできる存在である。

春の園遊会に出席された愛子さま(2026年4月17日、写真:代表撮影/共同通信社)
そうした意味でも、今回の両陛下のオランダ・ベルギー訪問は、次世代の若き女性皇族と欧州王族に、未来の扉を開く大切な一歩となるはずだ。いつの日か、愛子さまと欧州の未来の女王たちが親密に交流される機会が訪れたら、それは新しい友好の歴史を築く幕開けとなるのではないだろうか。
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