『パン屋塩見』(東京/代々木)の薪窯食パン|香りと旨みの力強さが違う。炎がつくり出す、唯一無二の味

麹を使ったバゲットや薪窯で焼く食パンなど、今食べたいパンは、豊かな旨みが広がる、力強い味わい。名店の逸品を紹介します。

香ばしい皮は甘みが際立ち、中はもっちりとした食感で食べごたえもある。1本990円、ハーフ530円。

薪と天気によってパンの表情が変わります

高層ビルが並ぶ東京・西新宿にほど近い場所に、薪窯でパンを焼く『パン屋塩見』がある。パンはカンパーニュと食パンのみという潔さ。というのも、ひとつひとつの生地に目を配るためだ。火を熾すのは1日1回で、まず高温でカンパーニュを1時間焼いた後、50度下がった温度で食パンを1時間焼く。

食パンの生地づくりは、無農薬の玄麦を石臼で挽いたものと製粉会社の国産小麦をブレンドし、主に自家製酵母を使用してひと晩かけて発酵させる。フルフルと揺れる柔らかさの生地にバターを合わせる工程がユニーク。「ミキサーで均一に混ぜたことがありますが、どこを食べても味が単調でバターを重く感じました」と、パン職人の塩見聡史さん。それ以来、あえて手でバターをまだらに混ぜ、焼き上がりにムラをつくるのだ。

沖縄『宗像堂』、東京・富ヶ谷『ルヴァン』で修業後、2020年独立。薪窯で焼くのは「楽しいから」と笑顔の塩見聡史さん。

酵母と同様、窯の炎も天候や薪の乾き状態で日々変わる。このふたつを日頃の経験で調整し、じっくりと焼き上げた食パンは、外はバリッ、中はしっとり。ずっしりと重く、かすかに薪の香りをまとっている。最近は料理との相性を考え、軽さがあって主張しすぎないパンを目指していると塩見さん。おいしさへの追求は続く。

フランス式窯に朝5時に火を熾す。パンを焼いた後の窯は一般開放(無料)し、煮込みの鍋を持参する人も。

●パン屋塩見

住所:東京都渋谷区代々木3-9-5 

電話:03・6276・6310 

営業時間:12時〜18時(売り切れ仕舞い) 

定休日:水曜、木曜 

交通アクセス:小田急線南新宿駅より徒歩約5分

取材・文/石出和香子 撮影/伊藤菜々子

※この記事は『サライ』本誌2026年3月号より転載しました。

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