練習場では上手く打てるのにコースでは打てない理由! 脳科学の視点から解き明かす

練習場では上手く打てるのにコースでは打てない理由!脳科学の視点から解き明かす

スマートフォンひとつで世界中のトッププロのスイング動画と最新理論にアクセスできる時代。

熱心なゴルファーほど動画サイトを見漁り、SNSで研究を重ねるものです。

ところが、コースに出るとどうでしょう。

アドレスに入った瞬間「テークバックはシャットに」「顔は残して」など、頭に詰め込んだ大量のチェックポイントが洪水のように溢れ出す。

結果、体はぎこちなく固まり、練習場では絶対に出ないようなミスショットが続出してしまう。

OSを最新版にアップデートする具体的な方法を、脳科学の視点から解き明かしていきましょう。

論理を司る「前頭前野」動作を自動再生する「小脳」

まず、あなたの脳内で何が起きているのかを整理しましょう。反復練習によって身につけたゴルフスイングという複雑な運動プログラムは、脳の奥にある「小脳」に保存されています。小脳は極めて優秀な「オートパイロット」で、これに動作を委ねていれば、体は無意識下でもスムーズに流れるように動いてくれるはずなのです。プロが極限のプレッシャーのもとでも美しいスイングを再現できるのは、この小脳を完全に信頼しているから。

一方、論理的に考え、判断し、未来を予測するのが脳の前方に位置する「前頭前野」の仕事です。コースマネジメントを練ったり、風やライを計算したりするときに大いに活躍する、いわば脳の「司令塔」といえるでしょう。

考える時間が長いと「不安生成モード」に突入する

ゴルフは「圧倒的に考える時間が長い」スポーツです。ラウンドの総時間は約4時間半ですが、実際にスイングしている時間はわずか20分程度。残り4時間以上、プレイヤーはひたすら歩き、待ちます。そして、その間に否応なく「考える時間」を与えられてしまうのです。さらにコース設計者は心理戦のプロ。右のOBが見えるティーイングエリア、錯覚を誘う池など、あらゆる場所に「考えさせるための罠」が仕掛けられているのも、ゴルフというスポーツの特性のひとつといえるでしょう。

この長すぎる思考時間とコースの罠が組み合わさることで、プレイヤーは前頭前野の働きに支配され、徐々に「不安生成モード」に突入してしまう。「右のOBは絶対イヤだ」「ライが悪い、ダフりそう」など、ロジカルな状況判断から生まれる心配と迷いが次々と立ち上がるのです。

次のショットを変えたければ記憶を「編集」しよう

そして致命的なのは、本来小脳の「オートパイロット機能」にまかせるべきスイングという一瞬の運動連鎖に対して、不安に駆られた前頭前野が“マニュアル操作”で介入してくることです。「右に行くな!」「もっと手首を返せ!」と、最後の瞬間に「論理的司令塔」がオートパイロットを乗っ取ろうとしてしまう。

スポーツ心理学ではこの現象を「Paralysis by Analysis(分析による麻痺)」と呼びます。あなたが練習場で打てて、コースで打てない最大の理由は、技術不足ではない。司令塔と自動操縦の役割分担が崩壊しているだけなのです。

では、前頭前野の暴走に対して、私たちはどうアプローチすればよいのでしょうか。「考えないようにしよう」と意識するほど、人は逆に考えてしまいます。だからこそ必要なのは、意志の力に頼らない「仕組みとしての対処法」です。ポイントは「思考より先に体を動かす」こと。前頭前野は暴走しはじめると止めにくい。だからこそ、小脳のオートパイロットを起動させる「きっかけ」を体の動きとしてあらかじめセットしておくのです。

下記のワークで紹介している「軸を1つに絞る」という行動や「息を長く吐く」という身体動作はどれも難しいテクニックではありません。しかし、これらをコースで意識するのではなく、習慣化して自動でできるようになることが重要なのです。

いかがでしたか。メンタルワークをする際はぜひこのレッスンを参考にしてください!

解説=阿部健二

●あべ・けんじ/メンタルパフォーマンスコーチ。合同会社All Days Sports代表。オリンピック選手や日本代表選手など、トップアスリートを多数指導。「メンタルは技術」を信念に、最新の脳神経科学とアドラー心理学を用いた再現性の高いコーチングに定評がある。(2026年5月現在)

構成=石川大祐

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