中国4社が「上位10」を占める衝撃――BYD首位&イノベ評価47%、揺らぐドイツ勢と再起動する欧州勢

揺らぐ独勢と台頭する中国勢

 メルセデス・ベンツにBMW、そしてフォルクスワーゲン(VW)。ドイツを代表する名門メーカーは、長い間、この業界の進むべき道を示し、その座を守り続けてきた。だが、その力関係が足元から崩れ始めている。これまでの主役を脇へ追い落とすような勢いで中国勢が台頭し、産業の形そのものが歴史的なわかれ目に差し掛かっている。参入を防ぐ壁となっていたエンジンの複雑な作りが、電動化によってその意味を失ったことが大きな理由だろう。2026年4月21日、ドイツの研究機関「Center of Automotive Management(CAM)」が「2026年版世界自動車イノベーションランキング」をまとめた。

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 企業ごとの順位を見ると、前の年にトップだったVWを抑え、中国の比亜迪(BYD)が初めて1位となった。さらに4位に小鵬(Xiaopeng)、6位に吉利(Geely)が入り、上位10社のうち3社を中国勢が占めた。

 一方で日本勢は、8位にトヨタ自動車が顔を出すにとどまっている。欧州勢は2位にVW、3位にベンツ、5位にBMWと上位に踏みとどまってはいるものの、本場ドイツの機関が中国に最も高い評価を与えた。競い合う場所が、機械の出来栄えからデータの扱いへと移り変わった現状を、はっきりと示している。

 ここでは、ドイツが中国の優位を認めた背景を詳しく探り、買い手の目がブランドをどう捉え直しているのか、その中身を見ていく。古い序列に頼り続けることが、企業の儲けを損なう恐れについても触れていきたい。

中国勢の圧倒的な開発スピード

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「2026年版の世界自動車イノベーションランキング(量販ブランド別)」(画像:CAM)

 初めて首位を奪ったBYDの勢いが止まらない。他社を突き放すような開発成果を、矢継ぎ早に繰り出している。コンパクトカーの「ドルフィン」や「シーガル」に載せた「自動運転レベル2+」の支援機能は、市場から高い評価を得た。さらに「アット2」は、充電の速さや航続距離、電費といったあらゆる項目で、同じクラスのなかで最も高い点数をもぎ取っている。

 約400km走る分をたった5分で補う充電網の整備も進めており、使い勝手を重んじる姿勢が評価をさらに高めた。主要な部品を自社で作る仕組みが、性能の向上と開発期間の短縮を一度に成し遂げている。

 量産ブランドの順位に目を向けると、BYDが頂点に立つ一方で、日本勢もトヨタが3位、日産が4位としぶとく上位を守った。トヨタは燃料電池車「ミライ」の技術が認められ、日産も「リーフ」が車種別で10位に食い込むなど、これまでの積み重ねが形になっている。

 上位10ブランドの顔ぶれを国別で見ると、景色は一変する。中国が四つ、日米がそれぞれふたつ、欧州と韓国がひとつずつと並び、ドイツ勢の名前は消えた。グループ全体では2位だったVWも、ブランド別では11位まで順位を下げている。大衆車としての魅力が薄れているという、市場からの厳しい突きつけだろう。車作りが電気やソフトへと移り変わるなか、これまでの部品網や仕事の進め方に頼り切った組織では、もはや立ち行かなくなっている。

 高級車の世界では、首位のメルセデス・ベンツを筆頭にBMWが3位、アウディが4位とドイツ勢が意地を見せた。だが、ここでも中国勢の追い上げは凄まじい。2位の小鵬、5位の仰望(Yangwang)、6位の尊界(Maextro)が上位に名を連ね、ドイツの牙城を脅かしている。自動運転の賢さや車内の情報システムといった、乗り手が違いをはっきりと感じる部分で、中国メーカーは着実に自分たちの優位を固めつつある。

独機関が証明する中国の革新性

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「Center of Automotive Management(CAM)」(画像:CAM)

 CAMは、ドイツ・ケルン近郊のベルギッシュ・グラトバッハ応用科学大学(FHDW)に身を置く独立した研究機関である。2005年から変わらず、この産業の革新性を数字にして測り続けてきた。調査において、中国勢が上位に食い込んできた事実は、これまでの勢力図が塗り替わったことを何よりも雄弁に物語っている。

 同機関がまとめた2019年から2025年にかけての国別の動きを見ると、2020年代に入ってからの中国の強さが際立つ。2019年に28%まで数値を伸ばしてドイツを抜き去ると、2023年以降は約47%という高い水準を保ち、日本や欧州、米国を寄せ付けない。中国とドイツの開きは20ポイント近くにまで達している。他国が3~7%という低い位置でもたつくなか、中国との差は40ポイントまで開いた。かつて脚光を浴びた米国のテスラも24位まで順位を下げ、2013年以降で最も振るわない結果となっている。

 こうした数字は、中国勢が業界の骨組みを根底から作り替えてしまったことを示している。この勢いは、国の手厚い支えや市場の大きさといった理由だけで片付けられるものではない。未完成に近い状態であっても世に出し、売った後に通信を使って機能を高めていく。そんな割り切った手法を利益に繋げる開発の力が、評価を押し上げている。

 中国勢が遂げた飛躍の裏には、多岐にわたる知見を短期間で形にし、それを安く作り上げる力の両立がある。これまでは高級車にしか載せられなかった最新の機能を、すぐさま大衆車にまで広めてしまう。この足の速さが、他国の追い上げを許さない強みとなっているのだろう。変化の激しい時代を生き抜くために必要な、素早い判断と無駄のない仕組み。それが、彼らの揺るぎない土台となっている。

IT体験を重視する消費者嗜好

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VW「ID.UNYX 09」(画像:VW)

 こうした力の差は、市場で車を選ぶ人たちの目にはっきりとした違いとなって映っている。中国では、最先端の機能をふんだんに盛り込んだ自国ブランドを選ぶ動きが若者の間で当たり前になった。それとは対照的に、ドイツ勢を支えているのは高い年齢層ばかりという図式が鮮明になっている。

 かつて名門と呼ばれた車が大切にしてきた伝統は、画面越しの世界に慣れた世代には、ただの使い勝手の悪さや古臭さとしか映らないのかもしれない。高級な車に求める価値が、手触りや質感から、移動時間をどう楽しく過ごせるかという体験へと大きく入れ替わっている。

 長く市場の頂点に座り続けてきたVWが、2024年にBYDに抜かれ、翌2025年には吉利の後塵を拝して3位にまで順位を下げた。過去の成功を支えてきたはずの、細部まで作り込む品質の基準が、今の市場ではかえって動きの鈍さを招き、力を削ぐ原因になっている。VWのロバート・チセック氏が振り返るように、昔はカタログを眺めて夢を見るだけで満足していた人たちも、今は車を生活を便利にする移動可能な情報拠点として厳しく品定めしている。

 S&Pグローバルモビリティの数字を見ると、ドイツ勢の売れ行きはここ5年で4分の1も減り、2025年には390万台まで落ち込んだ。かつての武器だった高性能なエンジンの輝きが、電動化の激流のなかで、もはや儲けを生み出す源泉ではなくなったことを物語る数字だ。

 さらに中国勢は高級車市場にも深く入り込み、富裕層の関心を格式の高さから使い勝手の良さへと塗り替えている。ブランドへの思い入れが世代によって真っ二つにわかれてしまったことは、これまでの商売の形を守る上で、大きな痛手となるだろう。

VWの再建策とソフト開発の壁

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中国(画像:Pexels)

 追い詰められたVWは、なりふり構わぬ立て直しに乗り出した。2026年までに中国で20もの「新エネルギー車」を投げ込む計画だ。中身を見ると、バッテリー式電気自動車(BEV)はもちろん、プラグインハイブリッド車(PHV)や、エンジンを発電機として使うレンジエクステンダーまで揃え、全方位で市場を埋めにきている。

 北京のショーで披露した、現地の合弁会社が主導して作り上げた四つのモデルからは、イメージを何とか塗り替えようとする執念が透けて見える。とりわけ目を引くのは、中国の小鵬(Xpeng)と手を組んで生み出した大型SUV「ID.UNYX 09」だろう。これら最新のモデルは、中国のデジタル環境に合わせ抜いた電子の土台を採用し、見た目の新しさだけでなく、中身の知能化も一気に推し進めた。自前での開発にこだわりすぎて遅れをとった現実を認め、生き残るために外部の力を借りる。これは、プライドを捨てて実利を取ったギリギリの判断といえる。

 小鵬との協力によって、開発にかかるお金を3割ほど削り、店に並べるまでの時間も大幅に縮めるつもりだ。だが、車の命ともいえるソフトウェアの手綱をライバルに預けることは、将来、自分たちがただの「箱」を作るだけの存在に成り下がる危うさと背中合わせである。

 画面越しに車を操り、声で対話することを当たり前とする若者から見れば、今のドイツ車と中国車が提供する便利さの間には、まだ深い溝がある。彼らの心を動かすには、これまでの品質を守りながら、ソフトの進化の早さを中国勢と同じ歩幅まで引き上げなくてはならない。

体験価値の速さが決める覇権

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ドイツ(画像:Pexels)

 本場ドイツの研究機関が中国メーカーの実力を高く認めた。この事実は、かつての「安かろう悪かろう」という見方が、もはや過去の遺物になった現実を突きつけている。最先端の機能を形にする早さや、乗り手が感じる満足度において、中国勢が既存の勢力を追い抜いている場面は多い。

 伝統あるメーカーと新興の中国勢との間に生まれた実力の差は、市場での評判やブランドへの信頼を、根底から覆しつつある。古い思い込みに浸り続けることは、変わりゆく市場から取り残される事態を招きかねない。

 もはや、どこの国のメーカーかで優劣が決まる時代ではない。今の競り合いは、いかに早く使い手の期待を上回る体験を届けられるか、その一点に絞られている。この激流を正面から受け止め、時代の求めに応じる体制を築いた企業こそが、次なる主役の座を射止めるだろう。

 日本勢がトヨタ1社のみにとどまっている現状は、こうした速さへの戸惑いを隠せていない。壊れにくい車を作るというこれまでの強みに甘んじることなく、中身を常に新しく塗り替え続ける力こそが、生き残るための道標となる。