【"オルカン生みの親"直伝】1億円に必要な積立額より重要なこと→多くの人が見落としている現実

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資産1億円を目標に投資に励む人は少なくないはずだ。しかし、毎月コツコツ積み立てるだけで、本当に1億円に届くのだろうか。長期投資で最後に笑うための戦略を「オルカンの生みの親」が伝授する。※本稿は、シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ代表の代田秀雄『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(Gakken)の一部を抜粋・編集したものです。
毎月2万8000円の積み立てで
35年後には資産1億円を達成!?
実際に長期でコツコツと積み立てを続けた場合、どれほどの成果が期待できるのか、具体的な数字で見てみましょう。
オルカン(オール・カントリー)が設定されたのは2018年であり、ファンドとしての運用実績はまだ長期とはいえません。ただし、このファンドはMSCI ACWI(全世界株式指数)に連動するものです。
その年次リターンをまとめたのが下のグラフです。
これを見ると、2000~2002年のITバブル崩壊、2008年~のリーマン・ショック、2010~2012年ごろの欧州債務危機といった、世界経済に大きな打撃を与えた局面をすべて含んでいます。
それでも、この期間の年平均リターンは9.72%となっています。

同書より転載
長期で見れば、世界経済の成長が株式市場を押し上げてきたことは、データ上でも確認できるわけです。
たとえば、この9.72%という過去の平均リターンが今後も続くと仮定すれば、25歳から60歳までの35年間、毎月2万8000円を積み立てることで、投資元本約1180万円が、最終的に約1億円に到達する計算になります。
投資とは「将来の成長を期待して
不確実性を引き受ける行為」
しかし、ここで注意すべき点があります。この試算はあくまで「過去の平均値を、そのまま未来に当てはめた」ものであり、現実の投資とは大きく異なります。
実際には、リターンは年ごとに大きくばらつき、平均通りに積み上がることはありません。仮に目標を「1億円」と明確に定めた場合でも、前提とするリターンによって、必要な積立額は大きく変わります。
たとえば、年率7%を想定すれば毎月約5万5000円、5%を前提にすれば約8万8000円が必要になります。つまり、同じ目標額でも、前提次第で負担は大きく変わってしまうのです。
このように、投資とは、将来の成長を期待して「不確実性を引き受ける行為」であり、あらかじめ特定の金額に到達することを約束してくれるものではありません。
にもかかわらず、目標額だけを固定してしまうと、リターンのブレに一喜一憂しやすくなり、投資行動そのものが不安定になります。
もちろん目標額を設定すること自体は悪いことではありませんが、それよりも重要なのは、長期・分散で市場に居続けること、そして無理なく続けられる積立額を設定することです。
結果としてどこまで増えるかは、市場が決めます。その不確実性を受け入れたうえで時間を味方につけることこそが、投資運用の本質だといえるでしょう。
過去のデータでは、20年程度の保有期間を取るとマイナスになりにくい傾向があります。長期投資の期間について問われたときに20年は投資しましょうと答えることが多いのも、そういった背景があります。
市場が大きく下落しても
20年後に回復する期待が持てる
オルカンはMSCI ACWIという指数に連動していると説明しましたが、このデータが取れるのは1998年からです。
1998年から10年のローリングリターン(測定期間を1ヵ月ずつずらして計測したリターン)と20年のローリングリターンを測定すると、10年のローリングリターンはマイナスとなる期間もありますが、20年のローリングリターンはおおよそ4%から10%の間に収まっています。
このことは、市場の大きな下落に遭遇すると、10年という期間では必ずしも回復する余裕はないものの、20年の期間があれば、回復する期待が持てるということを示しています。

同書より転載
ここで注意したいことは20年の“長期投資”の意味です。20年間の長期投資というのは、オルカンやS&P500といった市場と連動する分散された株式ファンドを一度買ったら、20年間持ち続けるということです。
つまり、利益が出たから売却するとか、急落したから売却するとか、途中でそういうことをしてはいけません。売却するということは、一時的に市場を離れてしまうことになります。
短期的な値動きは無視して
「市場に居続ける」ことが重要
市場を離れたときに、大きな値上がりをすることもあるかもしれません。そして、その大きな値上がりがいつあるのかは、誰も予測できないのです。
「過去30年間(1995~2024)でS&P500に全期間投資していた場合、最も上昇した10日を逃したらリターンがほぼ半分になった」というレポートがあります。
このように、“ほんの数日”を逃すだけで、長期投資の成果が大きく変わる可能性が高いのが株式投資です。
「市場が好調のときだけ市場に入ればいい」「暴落時に逃げて、回復を待てばいい」といった“タイミング重視”の戦略は、実際には成果を出すことが難しい投資手法であるといわざるを得ません。
したがって、私たちは短期的な値動きを予測しようとするより「市場に居続ける(Time in the Market)」ことを重視すべきです。
市場に出たり入ったりを繰り返す行為は、一見するとリスクを避けているようですが、実際には、相場が大きく回復する局面や、リターンの大部分を生み出す限られた「上昇日」を逃してしまうリスクを高めます。
株式市場の長期リターンは、毎日の平均的な上昇の積み重ねで生まれているわけではありません。ごく一部の大きな上昇局面が、全体の成果を左右しています。感情に流されて市場から離れてしまうことは、その最も重要な瞬間に立ち会えない可能性を高めてしまうのです。
せっかくの「安く買える時期」を
逃さないために積み立てを続ける
だからこそ、投資において本当に重要なのは、「当てること」ではなく、「続けること」です。“Time in the market beats timing the market.”(市場のタイミングを計ろうとするよりも、市場に居続ける時間のほうが、はるかに大きな成果をもたらす)という投資の格言があることも、それを証明しているといえるでしょう。
長期投資とは、相場を完璧に予測する技術ではありません。変動を受け入れながらも、市場との関係を断たずに持ち続ける姿勢そのものが、最終的なリターンを決定づけるのです。
また、長期投資で大切なのは、途中でやめずに積み立てを続けることです。これは、相場が下がったときに積み立てをやめてしまうと、せっかくの“安く買える時期”を逃してしまうためです。
毎月一定額を投資する定額積み立てであれば、相場の上下にかかわらず着実に投資を続けられ、長期的な成果につながります。
もちろん、相場が急落すると不安になるのは自然なことです。
「このまま積み立てていて本当に大丈夫だろうか」と感じたことのある人も多いでしょう。
しかし、長期投資では、逆境の時ほど後の成果が大きくなるという逆説的な仕組みがあります。だからこそ、定額積み立てを継続することが重要なのです。
大きな下落を経験したほうが
最終的なリターンは上回る
ここで、2つのシナリオを比較してみましょう(下図参照)。
シナリオA:10年間、相場が一直線に上昇して価格が1.5倍になった場合。
シナリオB:最初の5年間で価格が半分になり、その後5年間かけて元の水準に戻った場合。
この2つのシナリオのもとで、毎月1万円を10年間積み立てることにします。多くの投資家はシナリオAのように、ストレスなく上昇してほしいと考えるでしょう。
しかし、実際にはシナリオBのように大きな下落が起こることもあります。興味深いのは、シナリオBでも毎月定額で積み立てていた場合、価格が安いあいだに多くの口数を手に入れられるため、最終的なリターンはシナリオAを上回るという点です。

同書より転載

同書より転載
相場が荒れても
「続ける人」が最後に笑う
つまり、下落局面でも慌てず、定額で積み立てを続ける――その地味な行動が、知らず知らずのうちに未来の大きな成果につながるのです。そして、相場が下落したときにどのように行動するか、そのことが将来の運用の成果を大きく左右します。

『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』 (代田秀雄、Gakken)
オルカンを通じて世界中の企業の成長に参加するということは、いい換えれば、世界経済と一緒に自分の人生を歩むことです。毎月の積み立てという小さな一歩を重ねるだけで、未来の大きな成果につながります。
世界経済は長期的に成長を続け、その果実は確実に私たちの資産として実を結びます。地味な行動に思える積み立ても、人生の自由やワクワクに直結する――それが、長期投資の最大の魅力です。