「地元の先輩に言われた」「知らない人たちと来た」…“闇バイト強盗事件”が続発している裏事情

何か言いたげにカメラを睨む田中容疑者。この後、彼がとった行動は……
「強盗をやるとは知らなかった」
トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の犯行と思われる強盗予備事件が立て続けに発生している。5月28日には東京・江戸川区の路上に強盗を行う目的で集まったとして、強盗予備の疑いで職業不詳・東京都調布市の田中航輝容疑者(20)と、職業・住所不詳の男(19)が逮捕されている。
30日、小岩署から送検された田中容疑者は、鋭い視線を報道陣に送っていた。何か言いたげな表情でカメラを睨み、両手で何かアピールしようとしたが、結局そのまま車に乗り込んだ。
「近隣の住民の話によると、4~5人の男がバールのようなものを持って集まっていたといいます。『不審な車両が停まっている』との110番通報で駆けつけた警察官が職務質問をしたところ、19歳の男が強盗目的であることを認めたため、逮捕されました。
取り調べに対してこの19歳の男は『金塊を盗りに行ってほしいと地元の先輩に言われた。自分が運転する車で知らない人たちと一緒に来た』と話していますが、田中容疑者は『強盗をやるとは知らなかった』と容疑を否認しているようです。
現場付近の防犯カメラには、田中容疑者らとは別の男2人がバイクに乗って逃走する姿も映っていました。警察によればこの日、現場近くの金の搬送業者が金塊を車に積み込む準備をしていたそうです。この金塊を狙った犯行とみて、警察は逃走した2人の行方を追っています」(全国紙社会部記者)
この会社では昨年9月にも従業員の男女3人が催涙スプレーをかけられる傷害事件が起きている。
「’25年9月24日、会社の前の路上で覆面をした2人組にいきなり催涙スプレーのようなものを吹きかけられました。被害に遭ったのはいずれも30代の女性従業員と男性アルバイト2名で、買い出しから戻り、車の中と路上で休憩していたところを襲われています。3人は目の痛みを訴えて病院に運ばれましたが軽傷。2人組は車で逃走したようで、警察が行方を追っています」(同前)
“情報ありき”で犯行を計画
この事件の1週間前、5月21日には東京・四谷(新宿区)で、特殊警棒などを持っていた20代の男2人が貴金属店買い取り業者の事務所から金塊を奪おうとしていたとした強盗予備容疑で逮捕された。
この事務所では2月にも強盗未遂事件が起きており、今回狙われた小岩の金の搬送業者と関係があったことから狙われた可能性があるとみられている。裏社会に詳しいジャーナリストの石原行雄氏が言う。
「金品の運搬計画や保管状況の情報を入手して計画を立てて、実行部隊を結成して現場に走らせるという、近年流行りの手口です。今回のケースはまだ捜査中であり断言できませんが、被害者側に内通者がいるか、被害者側にスパイが送り込まれているケースが多い。
1月に東京・御徒町で4億2000万円の現金が強奪された事件では、被害者側の内通者が情報を漏らしていました。このとき狙われたカネは被害者側の説明によれば『日本の業者に金を売却して得た代金』で、金の密輸ビジネスに絡んだ“表に出せないカネ”だった可能性が高いといいます。“後ろ暗いことに絡んだおカネ”は狙われやすい。裏社会の人間同士の叩き合いなので被害者が警察に駆け込みにくいのをわかっているのです」
ここ1ヵ月の間に闇バイトによる強盗や未遂事件が続発している。なかには複数回狙われたという例もあった。ここまで続発している理由は何なのだろうか。
“闇バイト事件”が続発する理由
「情報屋が複数のグループに情報を売っているから同じ場所が複数回狙われるのだ、と言う人がいますが、私は違うと思います。闇バイト強盗にはケツ持ちのヤクザがいることを情報屋もわかっている。ヤクザに二股をかけて情報を売るようなことをしたら、ただじゃ済まないことを知っていると思うのです。
複数のグループによる犯行であれば、かち合うこともあるはず。襲った(襲おうとした)日時がばらけていることを考えれば、第1陣で盗れなかったから、2陣、3陣を飛ばしている可能性のほうが高いと思います。そこまで執着するのは、最初に入った情報がかなり確度の高いものだったということでしょう」(石原氏)
以前と違うのは、末端だけではなく、その上の人間も逮捕されるようになったことだ。裏社会では「タタキは割に合わない」という認識が主流になっているという。それでも闇バイト強盗が続発する理由を石原氏は次のように推測する。
「栃木・上三川町からこっちの事件は、実は全部、同じグループが仕掛けてる可能性すらあるんじゃないかと私は思っています。急に大金を作らなければならなくなったグループが、事前に緻密に計画を練る余裕もないほど追い込まれてやっているから、未遂も含めた回数も逮捕者も多くなっているのではないでしょうか」
実行役には10代~20代の若者が増えた。先行きのない悪事に身を投じる若者はどこまで増え続けるのだろうか。
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5月30日、小岩署から送検される田中容疑者。姿を現した瞬間から鋭い目つきでカメラを見ていた

「強盗をやるとは知らなかった」と、容疑を否認している

カメラをじっと見たまま、思わず中指を立てるようなポーズをしかけたが……結局立てることはなかった

田中容疑者らが逮捕された現場は文教地区の住宅街。まだパトカーが停まっていた