ロシアの戦況悪化、地上でも空でも ウクライナが優位性確立

ウクライナ、ロシアの進軍を遅らせる, ウクライナ、中距離ドローン戦で優位性, ロシア軍も兵力不足に直面, ウクライナ、ロシア国内深部への攻撃強化, 「ロシアを率いる頑固な男」は戦争目標を堅持

モスクワ郊外でドローン攻撃を受けた共同住宅

【キーウ】ウクライナ軍はここ数カ月、戦術的・技術的な優位性を確立し、はるかに規模の大きいロシア軍をほぼ完全に食い止めることに成功した。

今年の夏は、そのわずかな優位性を戦略的な転換点へと変えることができるかが試される。

ウクライナのドローン能力は急速に向上しており、ロシア軍の兵たんに打撃を与え、国境から離れたロシア国内の奥深くの石油インフラや軍事目標を攻撃している。

ウクライナのミハイロ・フェドロフ国防相は4月、「われわれは戦線を維持しているだけでなく、圧力を強めている」と述べた。ロシアの月間の死傷者数は現在、軍の動員人数を上回っているという。

ロシア国内では、石油精製所で火災が発生し、当局が反体制的な言論を恐れてインターネットを規制する中、もはや遠い出来事とは感じられなくなった戦争への不満が高まっている。ロシア当局は、この戦争でウクライナからの最大規模の攻撃の一つとなった作戦で600機以上のドローンを迎撃したと発表した。モスクワ近郊の標的が被害を受け、少なくとも3人が死亡した。

多くのアナリストは、戦争が変曲点に達したと断言するのは時期尚早だと警告する。ロシアの戦況は悪化しているが、ウラジーミル・プーチン大統領の姿勢を変えさせるほどではない。そして同氏は今のところ、ウクライナを屈服させるという野望を諦める兆しを一切見せていない。

「ウクライナは多くの人が予想していたよりも確かに強い立場にある」と、ウィーンを拠点とする軍事アナリストでガディ・コンサルティングの代表を務めるフランツシュテファン・ガディ氏は指摘する。しかし戦争には適応サイクルがあり、ロシアがウクライナの戦力強化に対応できるかどうかが問題だとし、「この戦争の局面では、自信を持って見通せるのはほんの数週間先に過ぎない」と述べた。

ウクライナ、ロシアの進軍を遅らせる

今年に入ってからのロシアの進軍スピードは過去2年間で最も遅く、アナリストらが月間最大3万5000人と推計する死傷者を出しながらも、ほとんど戦果を上げられていない。

キーウを拠点とする軍事アナリストでフィラデルフィアのシンクタンク「外交政策研究所」フェローのロブ・リー氏によると、ウクライナの部隊はロシア軍の戦術への対処法を習得し、歩兵陣地を突破した敵兵をドローンと掃討部隊で追跡している。

一部のウクライナ部隊は、ドローンと歩兵を組み合わせた新たな反撃戦術を磨いている。ウクライナは慢性的な兵力不足のため、局地的な戦果にとどまり、大きな突破口を開くことは難しい。だが、全長約960キロの前線の一部では現在、激しい攻防が繰り広げられている。2025年には、ウクライナがほぼ全域で守勢に立たされていた。

一部アナリストは、ロシアがここ数週間で失った領土は獲得した領土を上回ると指摘する一方、ロシアの正味の領土獲得はごくわずかだという見方もある。これは、どちらの軍も完全には支配していない地域をどう分類するかに左右される。

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ロシアが占領するウクライナ領土の面積の増減

ウクライナ、中距離ドローン戦で優位性

前線の後方約30~320キロの中距離ドローン戦でのウクライナの優位性確立は、今春における最大の変化と言えるかもしれない。

ウクライナはAI(人工知能)搭載ドローン「ホーネット」や中距離攻撃ドローン「FP2」などの配備を増やし、ロシアのドローン部隊、兵たん、指揮所、防空システム、倉庫などの標的を攻撃している。これにより、ロシアは前線作戦の支援が困難になっている。

スターリンクはAIとの組み合わせも含め、ウクライナのドローンに優位性をもたらしている。集中的な研究開発の取り組みと熟練パイロットの増加も成果を上げているという。ロシアの兵たんへの攻撃動画を公開しているウクライナ国家親衛隊第1アゾフ軍団のドローンシステム責任者が明らかにした。

一方、ウクライナはロシアの中距離ドローンへの対抗措置を強化し、レーダー、電子妨害、迎撃チームを組み合わせた多層システムを構築している。「ロシアはこの射程での攻撃がより困難になっている」とリー氏は言う。

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ドローンからの映像をモニタリングするウクライナ軍兵士

ロシア軍も兵力不足に直面

ウクライナ軍部隊は依然として前線部隊の人員不足に悩まされている。だが人員問題を抱えているのはウクライナだけではない。

ガディ氏によると、2025年後半以降、ロシア人の死傷者数はロシアの動員数と一致しており、部隊の規模はもはや大きくなっていないという。

多額の入隊ボーナスを伴う兵士募集のコストはロシアの財政を圧迫してきた。しかし、米国主導のイラン攻撃が原油価格を押し上げたことに加え、米国によるロシア産石油への制裁が緩和されたことで、その圧力は一部和らいでいる。

カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンター(ベルリン)のアレクサンドル・ガブエフ所長は、「今のところ、金銭目当てで入隊する人の流れは続いている」と述べている。

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ウクライナ、ロシア国内深部への攻撃強化

ウクライナの長距離ドローンと国産ミサイルの増強により、ロシア国内深部の石油インフラや軍事施設への攻撃が続いている。

石油精製所や輸出ターミナルへの攻撃により、原油高に伴う収入増が部分的に相殺されたが、完全には消えた訳ではない。国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアは3~4月の石油輸出収入が大幅に増加した。

ウクライナの防空システムはロシアの長距離ドローンの大半を迎撃している。だがウクライナはロシアの弾道ミサイルに対しては依然としてぜい弱だ。米国とイランの戦争により、パトリオット防空システム用の迎撃ミサイルの不足が深刻化している。

それでも、冬の間にロシアのミサイルで暖房・電力供給が大きな打撃を受けた後、今春はウクライナの都市部で雰囲気が改善している。ロシア政府が期待したような都市からの大規模な避難につながらなかった。

「ロシアを率いる頑固な男」は戦争目標を堅持

大半のウクライナ人は、長年の攻撃による苦しみに疲弊しながらも、ロシアがウクライナの独立を守る条件で停戦に応じるまで侵攻に抵抗する以外に選択肢はないと考えている。

ロシア国内では、戦争が泥沼化しているという認識が広がっているにもかかわらず、プーチン氏が戦争目標を後退させる兆候は見られない。

ガブエフ氏は、「賢明で合理的なプーチン氏」であれば、米国の中間選挙前にトランプ氏から最大限の譲歩(米国の制裁解除やロシアによるクリミア併合承認など)を引き出すべく、年内に状況を落ち着かせる方が得策と判断するかもしれないと指摘する。

「問題は、ロシアを率いているのがウクライナはいずれ崩壊すると今も信じているように見える頑固な男だということだ」と同氏は言う。「そのため、戦争が続く可能性が高い」