イラン紛争、危険な新局面に

オマーンから撮影した、ホルムズ海峡に停泊した船舶

米国とイランの紛争は、再び全面衝突することなく双方が圧力を維持して挑発に応じようとする、リスクの高い新たな局面に入りつつある。互いのレッドラインを踏み越えて危険なエスカレーションを引き起こす可能性は常にある。

ここ数日の敵対行為は、双方が軍事行動を抑制しようとしていても、どれほどその瀬戸際に近い状態にあるかを示した。イランはイスラエルを直接攻撃し、ドナルド・トランプ米大統領が抑制を試みたものの、エスカレーションの連鎖につながった。その後、イランのドローン(無人機)が米軍の攻撃型ヘリコプター「アパッチ」を撃墜し、米軍が数時間にわたり報復攻撃を行った。イラン側はヘリ撃墜は事故だったとする一方、米軍の攻撃への報復として、親米の湾岸諸国とヨルダンをミサイルとドローンで攻撃した。

この3日間の戦闘は、トランプ氏が米国とイスラエルによるイランへの爆撃作戦の停戦を宣言した4月以降で、最も深刻なエスカレーションとなった。

「双方は戦争を制御しているが、同時に停戦に境界を設け、動的な攻撃によって影響力を拡大しようとしている」。ブルームバーグ・エコノミクスのイラン問題アナリスト、ディナ・エスファンディアリ氏はこう指摘する。「実際はどちらも継続を望んでいないにもかかわらず、継続する態勢を整えているのだろう」

戦争の外交的解決に向けた交渉は、トランプ氏が数週間にわたり合意は近いと発言してきたにもかかわらず、進展していない。同氏は10日、進展がないことへの不満をソーシャルメディア上であらわにした。「彼らは、自分たちにとって素晴らしいものになっていたはずの合意の交渉に時間をかけすぎた。今や代償を払わなければならない!!!」

その後FOXニュースが報じたところによると、トランプ氏はインタビューで、イラン政府が交渉を無駄に引き延ばしているとして、同国の橋や発電所への新たな攻撃命令を出すことを検討していると述べた。

トランプ氏は、イランが米兵を殺害した場合、停戦終了を検討すると述べている

米当局者によると、8日夜にオマーン沖をパトロール中に墜落した米軍ヘリは、イランのドローンに撃墜された可能性が高い。イラン当局者は、意図的に米軍ヘリを標的にしたわけではないと述べた。ただこれまで、米国と連携してホルムズ海峡を通航しようとした商船にはドローンを発射してきた。

安全保障アナリストらは、この一件がイランの国防政策のリスクを示唆しているかもしれないと指摘した。イランの体制保護と海峡封鎖を担うイラン革命防衛隊(IRGC)は、現地の指揮官に広範な裁量を与えており、指揮官は政府の命令がなくても行動できる。

この一件は、トランプ氏が側近との非公式の会話で示したエスカレーションの境界に極めて近いものだった。同氏はこの時、イランが米兵を殺害すればイランとの停戦終了を検討すると述べていた。ヘリの乗員2人は数時間にわたって海上を漂流した後、海上ドローンによって救助された。

イラン政府は再び米国とイスラエルに対する抑止力を確立したいと考え、また強硬派の有力指導者からの要求もあり、脅威に積極的に対応するというリスクの高い軍事的姿勢に自らを追い込んでいる。一方で、再び全面衝突することは望んでいない。

「非常に脆弱(ぜいじゃく)な状況だ。誤算と意図せぬエスカレーションのリスクがあるため、この均衡は安定していない」。ドイツ国際安全保障問題研究所(SWP)のハミドレザ・アジジ客員研究員はこう述べた。「イランが望んでいるのは、エスカレーションを一定の境界未満に抑えることで、その境界とは停戦中に米国の兵士や要員を殺害することだ」

イランはここ数日、一定の抑制を示した。イスラエルとの応酬停止を先に発表し、アパッチ撃墜について他の米軍機が撃墜された時のように誇示するのを控えた。また、ミサイルとドローンを発射したものの、イスラエルの人口密集地やサウジアラビアなどセンシティブな標的を避け、比較的限定的な規模にとどめた。

イスラエルのシンクタンク、国家安全保障研究所(INSS)のイラン研究プログラム責任者ラズ・ツィンムト氏は、イランのイスラエルへのミサイル攻撃は紛争の広範なエスカレーションを避けるよう調整されていたようだと述べた。

「イランがある種のリスクを取ったのは確かだが、本当にイスラエルとの全面対立を望んでいたようには見えない」と同氏は述べた。

イランの経済と軍は戦争によって打撃を受けている