トランプ氏に同調するドイツ政治家 米軍撤収を歓迎

ドイツの極左政党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟」幹部のセビム・ダーデレン氏
【ベルリン】ドナルド・トランプ米大統領がドイツ首相によるイラン戦争批判の報復として、ドイツ駐留米軍の一部撤収を表明した時、セビム・ダーデレン氏はこう思った。ついに来た、と。
ドイツの極左政治家であるダーデレン氏は「ナチス打倒を支援してくれたことには心から感謝している」とした上で、「しかし、第2次世界大戦終結から81年がたった今、ロシア、英国、フランスに続いて米国の兵士たちも帰国する時が来た」
米国防総省が、ドイツ駐留米軍3万5000人のうち5000人を6~12カ月以内に撤収させるとともに、ドイツに長距離通常ミサイルを配備する2024年の合意を撤回すると決めたことで、ドイツの主流派政治家や安全保障当局者の間に動揺が広がった。
多くは今回の撤収を象徴的なものとみなしつつも、ミサイル配備計画の撤回を受け、ドイツがロシアの攻撃に対して一段と脆弱(ぜいじゃく)になることを懸念している。欧州の安全保障への影響は、他の地域への米軍展開によって緩和される可能性がある。トランプ氏は21日、ポーランドに5000人の部隊を追加派遣すると述べた。
ドイツ当局者によると、フリードリヒ・メルツ首相はトランプ氏と電話会談を行い、自身のイラン戦争批判を巡ってこじれた関係の修復を図った。しかし別の方面では、米軍撤収は長らく待ち望まれていたものとして歓迎されている。

ドイツのラムシュタイン空軍基地に接近する米空軍機
「(ドイツの)主権のためにも、外国部隊を自国領に駐留させるべきではない」。議員歴が20年あり、現在は極左新党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」の幹部であるダーデレン氏はそう語る。
極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」や極左政党「左派党」に加え、中道左派「社会民主党(SPD)」の一部議員も米軍撤収を歓迎した。最近の世論調査によると、米軍撤収を公式に支持する政党は有権者の約3分の1を代表している。
より中道寄りの層が引き続き米国の駐留を支持する一方で、ドイツ人は米欧同盟から徐々に距離を置きつつある。
ドイツのシンクタンク、ベルテルスマン財団が今月実施した有権者調査によると、米国を信頼できないとの回答は約73%、欧州は「独自の道を歩む」時が来たとの回答は76%に達した。
AfDの共同党首であるティノ・クルパラ氏とアリス・ワイデル氏は、トランプ氏が米軍撤収を表明すると早々に歓迎の意を示した。同党の昨年の選挙綱領には、「ドイツ領に駐留する全ての同盟軍、特にその核兵器の撤収」が盛り込まれていた。

ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢」の共同党首であるアリス・ワイデル氏とティノ・クルパラ氏
このような軍事プレゼンスは「われわれの見解では不要だ」とワイデル氏は述べた。
トランプ氏の欧州政策に対する反応は、従来の左右の党派を超えて、思いがけない同士を結びつけている。
クルパラ氏は米国防総省の発表を歓迎するとともに、米軍機がイラン攻撃のためにスペイン国内の米軍基地を使用することを、スペインのペドロ・サンチェス首相(左派)が拒否したことをたたえた。
ダーデレン氏は、自身はトランプ氏のファンではないが「親米派」であるとし、トランプ政権で国家情報長官を務めたトゥルシ・ギャバード氏とともに、内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジ氏の釈放を求めて活動したこともあると話した。
米軍のドイツ駐留支持派と反対派の多くは、ある点では意見が一致している。それは「米軍駐留は、部隊の大半が拠点を置くドイツ南西部を中心とした地域に経済的恩恵をもたらしているが、ドイツ経済全体への恩恵は大きくない」という点だ。
バイエルン州は米軍撤収によって大きな打撃を受けると予想されている。同州を代表する、AfDのシュテファン・プロチュカ議員は、地元の党幹部らは外国軍撤収を求める党方針をおおむね支持していると語る。
プロチュカ氏は「経済的に(米軍)部隊に依存している地域があるのは確かだ。だが有権者の間で、より大きな国家的責任を求める声も高まっている」とし、「われわれはドイツ軍を増強している最中だ。解決策は、ドイツ軍がこれらの兵舎を引き継ぐことかもしれない」と述べた。

ドイツ南部バイエルン州グラーフェンベーアには米軍の大規模な拠点がある
イラク戦争以降、米軍の駐留に反対する論拠として繰り返されてきたことの一つは、米国がドイツから軍事作戦を実施することで、ドイツがこれらの紛争の当事者になるというものだ。
これは、国連の委任や議会の承認など、国外での軍事作戦参加に厳格な憲法上の要件を設けている国にとって問題だ。米国はイランでの作戦の補給拠点としてドイツを利用しており、多くのアナリストはこれを法的に問題があるとみている。
また、特にロシア抑止を目的とする外国軍のプレゼンス(現在は撤回された長距離ミサイル配備計画など)が、逆効果となってロシアからの報復を招く可能性を懸念する声もある。
左派党幹部のゼーレン・ペルマン氏は「われわれは当初から、ドイツへの米長距離ミサイル配備計画に反対してきた」と述べる。「緊張を高めるからというだけでなく、この地域を潜在的な攻撃にさらすことになるからだ(中略)。標的にならなければ、攻撃される可能性は低くなる」
同じ論理に基づき、米軍駐留に批判的な向きの多くは、駐留縮小によって、ドイツが脅威ではないとロシアを説得できると主張している。その結果、欧州の軍事的緊張が緩和され、ウクライナ戦争の終結を早める可能性さえあるという。

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相
この見方は、メルツ政権で連立パートナーを務めるSPDの平和主義的な派閥の間で根強い。SPDのベテラン議員、ロルフ・ ミュッツェニヒ氏とラルフ・シュテーグナー氏はともに、特にミサイル合意撤回を緊張緩和の兆しとして歓迎した。
米国防総省が合意撤回を決めた後、シュテーグナー氏はドイツの週刊誌シュピーゲルに対し、「この配備は新たな軍拡競争を引き起こしたはずであり、ドイツをより安全にしたかどうか非常に疑わしい」と語った。ドイツ政府は今後、ロシアの飛び地カリーニングラードに配備された、核搭載可能なミサイルの撤去についてロシア政府と交渉を始めるべきだと同氏は述べた。
今日の平和主義的な主張は、北大西洋条約機構(NATO)が1979年に、欧州でのソ連の軍備増強に対抗する決定を下した後の議論と一部重なる。その数年後、機密解除されたロシアの公文書によって、ソ連が西側の平和主義団体を積極的に支援していたことが明らかになった。これらの団体は、米国の改良型ミサイルが欧州全域に配備されることに反対していた。
クリントン米政権下で外交官を務めたジェームズ・ビンデナーゲル氏は「軍事的な裏付けなしにロシアと交渉できると考えるのは幻想だ」とし、一例として、ロシアによるウクライナへの全面侵攻を未然に防ごうとした、2014年~22年の西側の外交努力が実を結ばなかったことを挙げた。
「私の哲学は違う」と同氏は述べた。「フリードリヒ大王の言葉を借りれば、武器なき外交は楽器なきオーケストラのようなものだ」