「修行」重ねて獲得した上級会員の資格をはく奪 ANAの「SFC改悪」に嘆きの声

■キャンセル待ちしていた他の記者より早く搭乗, ■「なんのために修行したのか」, ■「5万に手が届きそうだったのに…」, ■ラウンジの大混雑対策の改定か

 全日本空輸(ANA)が4月に、2028年4月から上級会員の制度を改定すると発表し、特典を満喫してきた会員たちから悲鳴があがっている。

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 上級会員の「象徴」だったのがANAスーパーフライヤーズカード(SFC)だ。SFC会員になると空港のラウンジが無料で利用でき、ANAやグループの航空連合「スターアライアンス」運航便の優先搭乗などのサービスが受けられる特典があり、「VIP気分に浸れる」と人気だった。

 これまではANA搭乗時にたまるプレミアムポイントが年間5万ポイントに到達すればSFCの会員の資格を得られ、一度SFCの会員になるとクレジットカードの年会費を支払うだけでずっと会員資格を維持できた。それが、28年4月以降はANAのクレジットカードの年間決済額によってSFCに「PLUS」と「LITE」の2つの区分ができ、空港のラウンジ利用ができるのは「PLUS」会員だけ。そして「PLUS」会員になるためにはクレジットカードやANA Payで年間300万円以上の利用が必要になったのだ。資格を一度取得した人でも、年間300万円以上の利用がないと「PLUS」の会員資格を失うことになる。

 ANAはこの制度改定について、「ご利用状況に応じたサービス提供」「サービスをより適切に提供していくため」と説明しているが、多くのSFC会員にとってこの改定は受け入れがたく、SNSにはSFC会員たちの辛辣な言葉があふれている。

〈ANAのSFC改悪で裏切られた〉

〈既存顧客を大事にしない企業に明日はない〉

■キャンセル待ちしていた他の記者より早く搭乗

 記者は仕事柄、年中飛行機で移動しており、SFC会員になったのは随分と前のこと。クレジットカードの古い記録を調べたところ1999年ごろだった。当時はSFCも今のように宣伝されておらず、知らないうちにSFCの条件を満たしており、SFCの入会申し込みの書類が送られてきて初めて空港のラウンジ利用や優先搭乗の特典があることを知り、入会した。

 記者にとって最も魅力的だったのは、SFCになると優先して座席の確保ができることだ。事件が突発して現場に駆け付けるときなど、何度もこの特典で助かった。ある事件取材で締め切りが迫り、東京へ急ぐため空港に行くと、先にキャンセル待ちをしていた他の記者が数人いた。だが、私のほうが先に名前が呼ばれ、早いフライトに搭乗できたときはSFCの“威力”を思い知った。

 国際線を利用する際には、チェックインで長い行列に並ばずに済んだ。また、今のように空港の搭乗待ちのスペースに電源のコンセントが整備されていないことが多かったので、ラウンジで携帯電話やパソコンの充電ができたこともありがたかった。ほかにも、政治家はプレミアムクラスに搭乗することが大半だったので、“箱乗り”で取材するとき、付与されたプレミアムポイントを使ってアップグレードでき、高い料金を払わず助かったこともあった。

■キャンセル待ちしていた他の記者より早く搭乗, ■「なんのために修行したのか」, ■「5万に手が届きそうだったのに…」, ■ラウンジの大混雑対策の改定か

■「なんのために修行したのか」

 そんなとき、たまたま空港で一緒になった知り合いのAさんとBさんが、私のSFCの特典を知って、「修行」を始めた。

 これまでは一度取得した会員資格が継続できたので、5万プレミアムポイントを獲得してSFC会員になる目的で搭乗を繰り返す会員たちがいた。その行為が「修行」と呼ばれ、修行を続ける会員たちは「修行僧」と呼ばれるようになった。10年ほど前に生まれた言葉と記憶しているが、SNSで頻繁に見られるようになったのはコロナ禍ごろからだと思う。ちなみに5月20日に、ANAで東京―大阪間をシンプルという運賃制度で、ステイタスがない会員が搭乗すると1072ポイント。5万ポイントを獲得するには50回近くの搭乗が必要となる。

 AさんもBさんも日常的に飛行機を利用しないので、時間とお金をかけてまでSFC会員になるメリットはないと思って、「修行までしなくても」と伝えたのだが、

「ラウンジが使えるし、優越感に浸りたい」

 という趣旨の返事だった。

 東京の自営業Aさんは「修行」によって4年ほど前に年間5万ポイントに達した。コロナ禍のころは、外出が極度に制限され、飛行機もガラガラだった。ANAは当時、搭乗率が国内線で40%台くらい、国際線は20%を切ることもあった。ANAは搭乗を増やそうとプレミアムポイント2倍キャンペーンを何度か実施。Aさんはその時に「修行」していた。

「コロナ禍だったのですが、キャンペーンを知って、自分のように出張もない仕事をしていると、今しかSFCがとれるチャンスがないと頑張ってANAに乗り続けて獲得した。減便されている中で、東京―那覇と東京―札幌をそれぞれ日帰りで20往復くらいしたと思う。SFCになると空港のラウンジが自由に使える、搭乗も優先されるというのが魅力で、当時はテレビのバラエティー番組でも『修行』の特集をしていて、それにも影響された」

 そう言ってAさんはSFCのカードを見せてくれたが、今回の改定で、一度取得したSFC会員資格も、年間300万円以上の決済額がないと維持できなくなった。

「SFCのクレジットカードで年間300万円を使うなんて、まず無理。ほんとガッカリだ。何のために修行して達成したのか」(Aさん)

■キャンセル待ちしていた他の記者より早く搭乗, ■「なんのために修行したのか」, ■「5万に手が届きそうだったのに…」, ■ラウンジの大混雑対策の改定か

■「5万に手が届きそうだったのに…」

 東京の会社員Bさんは、現役の「修行僧」だ。ANAが2、3カ月に一度、国内線と国際線で「バーゲンセール」という座席数を限定した格安のチケットを販売しているタイミングで多くの予約を入れているという。

「どの区間を乗ればポイントがたくさんたまるか普段からスマホで研究して、バーゲンセールが始まる30分前にはパソコンの前でスタンバイして予約をとっています。『修行』のため予算を70万円確保している。最も効果的なルートを使えばあと50万円弱でSFCの資格を得られると思う」

 だが、今回の改定はBさんにもショックだった。

「必死で修行して3万ポイント弱がたまったところ。5万に手が届きそうになってきたときにこの発表。泣きたい……」

■ラウンジの大混雑対策の改定か

 記者も実感していたが、「修行」によってSFC会員が増えたためか、近年はANAのラウンジが大混雑することが多かった。羽田空港や大阪空港などでは国内線で優先搭乗するときにも大行列ができ、優先搭乗の意味がわからなくなることも珍しくなかった。そのあたりが、SFC会員の資格を厳しくすることにつながったのかもしれない。

 今回の改定発表後、ANAを利用した際に、キャビンアテンダントにSFC改定について聞いてみた。

「お客様からよく『ひどい』という感じのご意見をうがいます。何度か同じフライトに乗り合わせて、『修行しているのに、悲しい』『ANAはやめてJALに乗る』と言われた方もいました。総じて、お怒りのお話が多いです」

   丁寧な口調ながら、困惑した表情だった。 

(AERA・今西憲之)

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