まるで「高市派」の結成 首相を支える議員連盟に色濃く見えるキングメーカー麻生氏の好き嫌い

「この集まりを大きくして、高市派に発展させたいものだ」

 嬉しそうにこう話すのは、旧安倍派の衆院議員A氏。裏金問題にも関与していた人物だ。A氏が見せてくれたのが、「『国力研究会』発足とご参加のお願い」と題されたペーパー。高市首相を支えるための議員連盟「国力研究会」への参加を自民党議員に呼びかける案内文だった。

 案内文によると、5月21日に初会合が開かれ、「トランプ大統領・高市首相による日米黄金時代のビジョン」と題したジョージ・グラス駐日アメリカ大使の記念講演が予定されている。

 案内文はこう呼びかける。

〈国難に際して誕生した高市政権は、「日本列島を、強く豊かに。」という理念のもと、「責任ある積極財政」「安全保障政策の抜本的強化」「政府のインテリジェンス機能の強化」といった重要な政策転換を掲げて国民の信を問い、その力強い信任を得ました。政府与党は一体となって、国民に約束した公約の実現に邁進しなければなりません〉

 今年2月の衆議院選挙で316議席獲得という空前の勝利を収めた自民党が、高市政権をバックアップするための集まりだというのだ。「国力研究会」の略称は「JiB」で、高市首相が総裁選で繰り返し語ったキャッチフレーズ、

〈Japan is Back〉

 にちなんだものだという。

「派閥政治」の復活かと思われるような「国力研究会」。発起人には重厚なメンツが並んでいる。筆頭に名前があるのが麻生太郎自民党副総裁。以下、昨年の総裁選で高市氏と争った茂木敏充外相、小泉進次郎防衛相、小林鷹之政調会長の3人や、加藤勝信元官房長官、萩生田光一幹事長代行、西村康稔選挙対策委員長、中曽根弘文元外相、松山政司参院議員会長、有村治子総務会長、山谷えり子元国家公安委員長といった面々だ。

 自民党の政務調査会調査役を長年務めた政治評論家の田村重信氏はこう評する。

「高市首相にとって申し分ないメンバーが集まっています。ここでも、キングメーカー麻生氏の意向と威光が透けて見えますね」

■「無投票」再選の可能性を高める集まり

 高い支持率を背景に安泰とされる高市首相だが、党内基盤が強固とは言えないことが弱みと言われてきた。任期途中で退任した石破茂前総裁の任期だった2027年9月が高市氏の自民党総裁の任期だが、次の総裁選で「無投票」で勝つというのが高市氏にとって最高のシナリオだ。高市政権誕生を支えた麻生氏や旧安倍派の萩生田氏らが、総裁選で争った小泉氏や茂木氏らを囲い込み、「無投票」再選の可能性を高め、高市長期政権への道を開く集まりといえるのだ。

 もし高市氏が自民党総裁選で無投票再選されれば、2015年9月の安倍晋三首相(当時)以来となる。このときも安倍氏を副総理兼財務相だった麻生氏が支え、「安倍一強」と呼ばれる長期政権に弾みをつけている。

 高市氏の最大の強みは、世論調査で示される高い内閣支持率だ。メディアの調査では、今でも70%台から60%前後の支持率を得ている。自民党の閣僚経験者B氏はこう話す。

「過去の総理は支持率が30%を下回ると“危険水域”とされた。ただ、党内基盤がないに等しい高市首相の場合は、40%を切ると危ない。高市おろしがはじまりかねない。それに世論調査というのはちょっとしたことで一気に数字が変わりかねない。中東情勢や物価高騰など国内外の難しい情勢で、支持率の高さが支えの高市政権は不安定だった。それが、JiBという“高市派”ともいえるような集まりができるのは、大きな力になる。それは麻生氏にとっても同じでしょう」

 今年秋ごろには、内閣改造と自民党の役員人事が見込まれる。昨年の自民党総裁選で高市首相を誕生させた麻生氏は副総裁になり、義弟の鈴木俊一氏は幹事長、麻生派の有村治子氏が総務会長に就任し、麻生派で党の要職を握っている。

「高市首相は『党のことは麻生氏にお任せ』としており、秋の役員人事でもそれは維持されるでしょう」(田村氏)

■「ご機嫌うかがい」で名前を入れる議員も?

 そうなると、高い支持率が維持される限り、高市氏にとって次の大きな政局は2028年夏の参院選となりそうだ。与党の自民党と日本維新の会は衆議院で圧倒的な議席を得ているとはいえ、参議院では少数与党。高市氏が26年度予算の昨年度内成立を目指したとき、参院で予算審議が思うように進まず断念したのは誤算だった。

「高市首相にとって、衆議院に続き参議院でも過半数をとらないと長期政権は実現できない。逆に参議院選挙に勝てば、しばらくは高市氏には『勝てない』と対抗馬は出てこないのでは」(前出・Aさん)

 国力研究会には、2月の衆議院選挙で当選したばかりの1年生議員「高市チルドレン」の入会希望が殺到しているという。また、旧安倍派などの「裏金事件」に関与し、復活した議員の「賛同」も多いそうだ。裏を返せば「高市一強」のおかげで議員バッジをつけている人が多く集まってきそうなのだ。

 一方で、昨年の総裁選に出た候補の一人で次期首相の有力候補とされる林芳正総務相や、岸田文雄元首相、石破茂前首相、武田良太元総務相らの名前は発起人にない。とりわけ武田氏は麻生氏と距離があることで知られる。

 研究会発足を歓迎するA氏だが、こんな見方もしている。

「呼びかけた議員には麻生氏の好き嫌いがにじみ出ていることが、どうなるか。支持率は水物ですから、グループがあるからといって高市首相の党内基盤が盤石になるかどうかはわかりません。議員連盟の会費は月300円なので、とりあえず高市首相と麻生氏のご機嫌うかがいで名前を入れておこうという議員もけっこういるでしょう」

(AERA編集部・今西憲之)

・【写真】首相を支える「国力研究会」への参加を呼び掛ける案内状

・【写真】“麻生太郎と犬猿の仲”と言われているのがこの人

・早くも出てきた高市首相退陣説 キングメーカー麻生副総裁の頭にある「次のタマ」は