老後に必要な備え=お金、ではなかった?「高齢社会白書」にみるシニアの実態とは?

老後に備えが必要なものといえば「お金」が思い浮かびます。しかし、内閣府が発表した「高齢社会白書」で、シニアが何を「必要な備え」と考えているのかを見ると、お金だけに限らないことが分かります。今回は、シニアの暮らしを支えるために、どんなことが重視されているのかその実態を探ってみましょう。※サムネイル画像:amanaimages

老後に備えが必要なものといえば「お金」が思い浮かびます。実際に「年金だけで暮らせるのか?」「貯金はいくらあれば安心か?」といった金銭面の悩みは、多くの人が抱えているのではないでしょうか。

しかし、内閣府が発表した「高齢社会白書」で、シニアが何を「必要な備え」と考えているのかを見ると、お金だけに限らないことが分かります。今回は、シニアの暮らしを支えるために、どんなことが重視されているのかその実態を探ってみましょう。

約8割が選んだ最優先の老後の備えは……?

内閣府が2025年6月に公表した「令和7年版 高齢社会白書」では、60歳以上の男女2188人に「老後のために必要と思う備え」を複数回答で尋ねており、その結果は以下の通りです。

【老後の備えランキング】

・1位:健康に関する備え(健康維持・増進、介護予防、病気やけがの治療など)80.7%

・2位:終活関係の準備(葬儀やお墓の準備、財産整理・相続など)38.1%

・3位:住まいに関する備え(住宅の確保、リフォーム、修繕など)25.5%

・4位:資産形成(貯蓄・投資など)24.2%

・5位:防災・防犯に関する備え(住宅の防災対策、システムの利用など)21.6%

出所:内閣府「令和7年版 高齢社会白書(老後のために必要だと思う備え・全体)」

最も多く選ばれた「健康に関する備え」は80.7%を占めています。老後において「お金があっても健康を失えば意味がない」という実感が、多くの人の意識に反映されているといえるでしょう。

続くのは「終活関係の準備」が38.1%、「住まいに関する備え」の25.5%。年齢を重ねると「最後まで安心して暮らせる環境」や「死後の整理」に関心が向かうことが分かります。

老後不安といえば「お金」がよく挙げられますが、「資産形成」を選んだのは24.2%と意外に少なく、4位にとどまりました。これより、お金よりもまず健康や生活環境を優先する傾向が明らかになっているといえます。

どの年代でも「健康に関する備え」が最優先

さらに、シニアの年代や性別ごとの詳細を見てみましょう。

出所:内閣府「令和7年版 高齢社会白書(老後のために必要だと思う備え・性・年代別、家族形態別)」

調査結果を年代・性別ごとに見ても、圧倒的に高いのは「健康に関する備え」です。60代前半から80代以降まで、どの年代でも約70%以上、65~69歳から70~74歳にかけては最高で約90%近い割合です。他の項目は年代によって上下する傾向にありますが、健康だけはどの世代でも「老後のために必要だと思う備え」の最優先する課題といえそうです。

一方で「資産形成(貯蓄・投資など)」は年代が上がるにつれて関心が薄れる傾向が出ています。60~64歳男性では44.7%、60~64歳女性では42.1%と高めですが、85歳以上になると男性が8.6%・女性が7.1%と1桁台まで減少するのです。

老後の安心を支えるのは「健康」という土台

今回の調査から見えてくるのは、「健康こそが老後の安心の基本」という意識です。お金の備えももちろん大切ですが、最終的には健康がなければ十分に生かすことはできません。

実際に高齢期を迎えた人々が重視しているのは「健康維持」だけでなく、「住まいの備え」や「防災・防犯への備え」など、生活の質を保つための多様な要素です。また、「地域や職場などで人とのつながりを持つこと」も一定の割合で挙げられており、社会との接点が心身の健康を支える役割を果たしていることがうかがえます。

高齢になるほど人との関わりは減りがちですが、孤立せず社会とつながることが健康の維持にもつながります。つまり「老後の備え=健康」であり、その健康を守るために「社会との関わりを続けること」が重要なのです。

老後の準備というと資産形成など“お金”に注目しがちですが、健康維持、生活環境の整備、人とのつながりといった多面的な視点から備えることこそ、将来の安心を支えるカギといえるでしょう。

文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)

会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。