【全文公開】高市総理事務所が「サナエトークン」「誹謗中傷動画」首謀者と接触していた「動かぬ証拠」を公開する

頑なに事実関係を認めない高市総理。しかし…

「秘書の方は、現代ビジネスの記事には、松井氏との接点を認める回答をしています。これは総理、ご存知ですか?」

6月5日の参院予算委員会で、高市早苗総理にそう切り出したのは、共産党の山添拓氏である。

話題となった「現代ビジネスの記事」とは、筆者が今年3月以降、「週刊現代」で継続的に報じてきた現職総理の名を冠した暗号資産「SANAE TOKEN(サナエトークン)」についての一連の記事である。

このサナエトークンの設計者こそが、合同会社NoBorderDAO幹部の松井健氏である。山添氏が言及した「松井氏」とはこの人物だ。

「NoBorderNews」5月18日放送に出演した松井健氏

「週刊現代」は、松井氏が昨年の自民党総裁選において高市陣営のために、「小泉進次郎氏のネガティブキャンペーン動画をつくっていた」と周囲に吹聴していたことをいち早く報じた。同時に、松井氏の過去の複数の投資トラブルの存在や、サナエトークンを巡る違法な事前販売をしていた疑惑も詳報した。

筆者の取材には一切応じることのなかった松井氏だが、その後「週刊文春」誌上で「誹謗中傷動画問題」の詳細を告発していく。自民党総裁選のみならず、今年の衆院選でも同様の「動画作戦」を展開していたという。「週刊文春」の報道により、この問題が一気に注目度を高めていく。

松井氏は5月中旬に出演したYouTube番組「NoBorderNews」でも、動画作戦にあたって、具体的な指示はなかったものの、高市総理の公設第一秘書の木下剛志氏と連絡を重ねていたと証言した。

こうして、誹謗中傷動画問題が、国会で取り上げられるような問題になったわけだが、高市総理の答弁は常識的なものとは言いがたかった。

週刊文春が報じた昨年12月17日の木下氏と松井氏の面会音声についても、頑なに事実関係を認めない。それどころか、木下氏と松井氏の「接点」すら否定する。「週刊文春」をソースとして追及してきた中道改革連合や立憲民主党の議員も、攻めあぐねていた。

しかし、そもそも木下氏は「週刊現代」の取材に対して、松井氏との接点や12月17日のZOOM会合の存在を認めていたのである。

木下氏によれば、松井氏が勝手連として総裁選を支援していたといい、ライングループでも連絡を取り合う関係だったという。

こちらの記事を参照→『高市総理の「面識のない方」は大間違い!高市事務所所長が認めていた「サナエトークン」「誹謗中傷動画」首謀者との接点』

冒頭の山添氏の質疑はこの点を突いたものだった。

「週刊現代」への回答書は、木下氏が自ら作成し、高市事務所として回答したものである。否定しようのない物証に、高市総理はどのように答えたのだろうか? 質疑の続きを見てみよう。

高市総理に浮上した「虚偽答弁」疑惑

高市総理は、現代ビジネスの記事を「通告があったから読みました」と答えた。そこで山添氏が「つまり秘書と松井氏の接点があることはお認めなんですね」と畳みかける。すると、高市総理は思ってもみない答弁をし出したのだ。

「認めていません」

自身の事務所の回答を否定するとは、一体どういうことだろうか?

さらに高市総理は、立憲民主党の岸真紀子参院議員の質疑でも不可解な答弁を繰り返した。以下、岸氏がこう質問を切り出した。

「『週刊現代』が高市事務所へ照会をしておりまして、4月3日付けで回答があったとされた記事も載っております。高市事務所からの回答に『12月17日のオンライン会議はNoborder側からの求めに応じて行ったもの』とあります。これは高市事務所で回答したもので、そして12月17日のオンライン会議を行ったということでよろしいでしょうか?」

「Noborder側」とは言わずもがな松井氏のことである。するとこれに対し、高市総理はこう答えたのだ。

「週刊誌にうちから回答したと書かれてあるんでしたら、うちから回答したのかと思います。ただ、4月3日付けの回答については内容が事実と違うと今朝聞きました」

筆者はこれを聞いて呆然とした。事務所の「正式回答」を否定するのは、さすがに無理筋だと……。これなら、なんでもアリになってしまう。

photo by gettyimages

週刊文春が報じた音声記録は松井氏が提供したものである。百歩譲って、確認に手間取ることはあるだろう。一方、「週刊現代」への回答書は、高市事務所が作成した正式な文書である。否定しようのない物証だ。

筆者の手元にある回答書は6つあるが、そのどれも「高市早苗国会事務所」や奈良の「高市早苗事務所」から送られてきている。担当者は事務所所長の木下氏本人である。

ところが、あろうことか高市総理はその文書を「(秘書が)内容が事実と違うと申しておりました」と答弁したのである。

自身の事務所の正式回答を否定するとは、一体どういうことだろうか? にわかに理解しがたい。しかも、総理事務所が「週刊現代」に寄せた回答は多数ある。

その中で、木下氏は松井氏との接点を繰り返し認めている。さらに、5月20日の最新回答では「これまでの回答に相違はありません」と念押しまでしたのだ。高市総理の「(接点を)認めていない」という発言は、「虚偽答弁」に当たる可能性があるのではないか。

まったく関係のない秘書の病歴を明かした狙い

高市総理の答弁で注目されたのはこれだけではない。参院予算委員会における自民党の生稲晃子参院議員との質疑において、「私どもの事務所にも、膵臓がんステージ4を告知されたのが去年でしたが、今も元気に働いている木下という秘書がおります」と語り出したのだ。

「ネットでは『渦中の木下所長がガンなのか?』と一部で話題になっていましたが、奈良の高市事務所には木下姓の秘書は2人います。木下所長について、そういう話を聞いたことはありません」(地元関係者)

事情を知らない有権者にとっては、ミスリードになりかねなかったが、事情はそういうことなのだ。

それにしても、高市総理はなぜここまで頑なになるのか? 総理周辺は「高市サイドから、木下氏が松井氏に利用されたということは言いにくい」と打ち明ける。

仮想通貨「サナエトークン」を宣伝するホームページ

松井氏の目的は、SNS対策などで高市事務所の信頼を得て、サナエトークンに繋げることだったと見られる。誹謗中傷動画での「貢献」を木下氏にアピールして、食い込もうとしたのだ。この接点を認めれば、木下氏は、松井氏と付き合いを深めていった経緯を詳細に明かす必要がある。そして最終的に、いかがわしいビジネスに総理事務所が利用されたことも認めざるを得ない。

インテリジェンス(情報収集・情報分析)強化を掲げる高市総理としては、この問題を認めるわけにはいかない。そのため、すでに木下氏が「週刊現代」に対して繰り返し認めていた「接点」すら否定するという、無理筋な答弁になっているのだ。

結果として、いまや総理の答弁自体が問題化しはじめている。「虚偽答弁」の疑いのある発言を見過ごすわけにはいかない。ここに「動かぬ証拠」として、総理事務所からの回答書を公開する。

サナエトークンと誹謗中傷動画問題を巡る一連の騒動は、松井氏という複数の投資トラブルが取り沙汰される人物に、高市事務所が入り込まれ、振り回されているインテリジェンスの問題でもある。高市総理は、認めるべきは認め、松井氏の「告発内容」の違うところは違うと、より具体的な説明をするべきだろう。

3月10日、編集部から送った質問は以下。

①高市事務所の木下剛志所長と、NoBorder代表の溝口勇児氏が、面識があることを確認しております。面識を持つようになったきっかけ、そして、暗号資産「SANAE TOKEN」について、木下氏と溝口氏の間でやりとりがあったのかどうかについて教えてください。

②自由民主党奈良県第二支部青年局長のA氏ら、青年局メンバーの名刺には「ST」という高市事務所の公式マークとともに、「内閣総理大臣 衆院議員 高市早苗事務所」との表記があることも確認しており、A氏らが高市事務所の一員であることがわかります。そのA氏は筆者の取材に、SANAE TOKENについて、NoBorder側からチームサナエのXアカウントにDM(ダイレクトメッセージ)があり、やりとりをしており、高市事務所にも了解をとっていた旨を証言しています。高市総理の「私の事務所側も、当該トークンがどのようなものなのかについて知らされておりません。本件について我々が何らかの承認を与えさせて頂いたこともございません」という説明と矛盾しますが、ご見解を教えてください。

③A氏が木下氏の了解をとりながら高市事務所内に立ち上げた「Veanas合同会社」は、2025年12月に設立され、「SANAE TOKEN」の営業活動がはじまった時期と符合しています。同社の会社登記の目的欄には、〈投資及びそれに関するコンサルティング業務〉と記載され、「SANAE TOKEN」との連関を指摘する声もあります。

そこでお聞きします。Veanas合同会社が「SANAE TOKEN」に関するビジネスを検討していたり、A氏ら青年局メンバー、もしくは木下所長が、「SANAE TOKEN」を保有していたりした事実はありますか? 事実関係を教えてください。

④「SANAE TOKEN」の実務責任者で、株式会社nueの松井健氏は周囲に「総裁選で高市選対のSNS戦略に携わった」旨を周囲に吹聴しているということですが、こうした事実はありますか? 事実関係を教えてください。

⑤筆者は3月4日付の質問状で、高市様が代表の政党支部「奈良県第二選挙区支部」の過去の政治資金収支報告書には「事務所賃料」としての支出が書いてある一方、同住所の「新時代政策研究会」および「高市早苗連合後援会」の過去の収支報告書には、「事務所賃料」が記載されていないという問題を指摘しました。

貴事務所より3月5日に頂いたご回答において、「新時代政策研究会」については、家賃相当分として、コピー機のリース料などを支払っている旨の説明があったものの、「高市早苗連合後援会」についての説明はありませんでした。同団体の収支報告書には、事務所賃料はもちろん、リース料などの支出もありません。政治資金規正法違反(不記載)の疑いがありますが、今後、訂正の意向はありますか?

⑥貴事務所より3月5日に頂いたご回答において、高市事務所内に本店住所を登記しているVeanas合同会社へ、家賃の支払いを求めず、無償提供している旨をお認めになりました。「物理的使用のないことを」根拠にされていましたが、Veanas社代表のA氏は筆者の取材に「高市事務所で勤務している」「グッズ在庫も置かせてもらっている」旨を証言しており、物理的な使用があることを認めています。専門家からは、無償提供による家賃相当分の寄附行為ということになり、公職選挙法および政治資金規正法違反上の問題があるという指摘もありますが、この点についてご見解を教えてください。

以下、高市事務所からの回答。

3月17日、編集部から送った質問は以下。

①高市事務所所長の木下剛志様から3月10日付でいただいたご回答についてお聞きします。木下様が、ノーボーダー幹部で株式会社nue代表の松井健氏が自民党総裁選において、「勝手連」として、SNS対策などにおいて高市総理の支援活動をしていたとご説明されていました。そこでお聞きします。松井氏が「SNS上の高市選対の世論操作を主導していた」「小泉進次郎氏のネガティブ動画をつくっていた」という複数の証言がありますが、こうした事実はあるのでしょうか? 木下様が把握されている松井氏の支援活動の具体的な内容や、勝手連として支援を受けた時期について、事実関係とご見解を教えてください。

②松井氏は周囲に「高市サイドから支援を頼まれた」旨を説明していたと聞いておりますが、こうした事実はありますでしょうか?

③高市総理が代表を務める自由民主党奈良県第二選挙区支部の青年局メンバーは、合同会社ビーナスを運営し、高市事務所公認グッズの販売していました。ノーボーダー側は高市事務所側に「サナエトークンを、Japan is backプロジェクト参加者が、事務所公認グッズとの交換に使えるようにするというアイディア」を高市事務所側に提示していたということですが、これは事実ですか?

以下、高市事務所からの回答。

3月24日、編集部から送った質問は以下。

①ノーボーダー側から高市事務所側に提出された資料の中に、〈SANAE TOKENは変革の熱狂を皆でシェアするためのミームコイン〉〈本トークンをはじめ、暗号資産(特にミームコイン)はボラリティの大きい資産であり、元本保証はなく、その価値が大きく変動したり、または無価値になったりするリスクがございます〉と書かれたサナエトークンの営業資料が入っていたことを確認しております。これについて事実関係とご見解を教えてください。

② 合同会社NoBorderDAO幹部の松井健氏は、3月21日に自身のXで〈私どもが主体となって高市事務所とのやり取りを繰り返してまいりました〉と明かしています。木下剛志所長が主にやりとりしていたのは松井氏でしょうか? 松井氏といつどのように知り合ったのかについても教えてください。

③奈良県第二選挙区支部の幹部が役員を務める「VEANAS 合同会社」の登記の目的欄には「投資及びそれに関するコンサルティング業務」という文言があります。これについて、木下所長が、A氏らから何らかの説明をうけてたことはありますか? 同社がサナエトークンをはじめ、ノーボーダー側と何らかの連携することを検討していた事実はありますか?

以下、高市事務所からの回答。

4月3日、編集部から送った質問は以下。

①「週刊文春」の報道によると、昨年12月17日に、木下様はチームサナエのA氏らとともに、ノーボーダーDAOの松井健氏らとリモート会議をしたということです。そこで松井氏から「サナエトークンが売却できる暗号資産」という説明を受けた後、木下様は「すごくいい」と発言したと、「文春」は報じていますが、これは事実ですか? 同誌の報道で、事実と異なる点があれば、教えてください。

②同誌では、昨年の総裁選前に、木下様が高市選対のSNS対策のリモート会議を、松井氏と繰り返した旨も証言されています。松井氏の貢献に、木下様は「SNS対策は松井氏がダントツ」と話したということですが、これらは事実ですか?

以下、高市事務所からの回答。

4月7日、編集部から送った質問は以下。

①サナエトークンの発行元である合同会社NoBorderDAO幹部の松井健氏は昨年11月以降、「SANAE DAO PROJECT概要説明書」という営業資料を使用し、サナエトークンへの投資を呼びかける営業活動をしていました。営業資料には、高市総理の直筆サインも使用されていました。こうした営業活動を、高市事務所として承認していた事実はありますか?

②松井氏が、自身の会社である株式会社neuの複数のサービス契約者に対して、「サナエトークンの事前予約権が付与される」と説明し、投資を集めてたことを確認しております。専門家からは、法令違反となる「暗号資産の事前販売」に該当するおそれがあるとの指摘が出ています。これについて、高市事務所として認識していた事実はありますか? また、今後、高市事務所として、本件についてどのように対応されるつもりか、教えてください。

③ノーボーダーは、営業活動の中で、出資により「NoBorder DAO」の非業務執行社員権を取得することにより、リターンとして、サナエトークンが付与されるスキームも提示していました。これについて、高市事務所として把握していた事実はありますか?

④これまでの取材において、高市事務所の木下剛志所長は、ノーボーダー側から受け取った提案書の中に、ビーナス号とのコラボが含まれていた旨を明かされています。これは具体的にどういったものだったのでしょうか? 事実関係を教えてください。

⑤自由民主党奈良県第二選挙区支部の青年局長が代表者であり、高市事務所と同住所にある「ビーナス合同会社」の会社登記の目的欄には、「投資やそれに伴うコンサルティング業務」が第一に掲げられています。設立時期が、松井氏がサナエトークンの営業活動を進めていた時期と符合することから、「ビーナス社がサナエトークン関連の事業を計画していたのではないか」という指摘が耐えません。ビーナス社幹部は、筆者のたびたびの取材に対して「投資やそれに伴うコンサルティング業務」として何を企画していたのかを詳細に明かしませんでした。疑念を払拭する意味でも、高市事務所としてこの点について、調査・公表する意向はありますか?

以下、高市事務所からの回答。

5月20日、編集部から送った質問は以下。

①高市事務所所長の木下剛志様は、今年 3 月以降、当方(=河野)の取材に対して、「松井健氏が総裁選を勝手連として高市陣営を支援していることは承知している」としつつも、「松井氏のアカウントや、(他候補へのネガティブ キャンペーンなど)活動の詳細は承知していない」とご説明されてきました。

しかし、その後、「週刊文春」が報じた、松井氏の告発内容によれば、昨年の総裁選および、今年の衆院選において、木下様の指示のもと、松井氏が他陣営や、他党の候補者のネガティブキャンペーン動画を制作、投稿していたということです。

木下様が、当方にされていたご説明とは、明らかに矛盾する内容です。木下様は、当方に虚偽のご説明をされていたのでしょうか? それとも松井氏の説明が虚偽なのでしょうか?

改めて、昨年の総裁選および、今年の衆院選において、木下様が、松井氏に指示や命令をするかたちで、動画投稿などをおこなっていたのかどうか、 詳細を教えてください。

②木下様は、松井氏はX氏から紹介を受けたということですが、これは事実でしょうか? 知り合った時期や経緯について教えてください。

③週刊文春には、松井氏について「選対スタッフ」との表記がありますが、これは事実でしょうか? 実際に、松井氏が、選対スタッフになっていたのかどうか、事実関係を教えてください。

④松井氏は、当方が報じたように、サナエトークンに乗じて、資金決済法違反の疑いのある資金集めを行っていた人物でもあります。高市事務所として、 松井氏のような人物を、信用し、関わりを持ってしまったこと自体が、不適切だったという指摘も出ています。今後、高市事務所として、木下様の処遇 なども含めて、何らかの責任措置をとることを考えていますか? ご見解を教えてください。

以下、高市事務所からの回答。

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かわの・よしのぶ/'91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、「サンデー毎日」「週刊文春」の記者を経てフリーに。主に政治を取材している