シャープの新スマホ「AQUOS sense10」が示す戦略。「pro」モデルなき年に見えた方向性

シャープが発表したスマートフォン「AQUOS sense10」。

シャープは10月31日、スマートフォンの新モデル「AQUOS sense10」を発表した。直販価格6万2700円~(税込)で、発売日は11月13日。

約6.1インチのディスプレイやミッドレンジチップの「Snapdragon 7s Gen 3」を搭載するなど、スタンダードモデルとしてバランスのいい性能の端末だ。

しかし、先代モデルの「AQUOS sense9」とフラッグシップモデルの「AQUOS R9 pro」が同時に発表された2024年12月とは異なり、今回は「pro」モデルの発表はなかった。

一方、スマートフォン以外ではVRグラス「Xrostella VR1(クロステラ ブイアールワン)」が発表された。VR1は、11月下旬以降にクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」で先行販売される。

VRグラス「Xrostella VR1」も発表された。

シャープ「AQUOS」ブランドの発表会として、スマートフォン以外の製品が同時に発表されるのは珍しい。

そこで、スマートフォンとVRグラスの同時発表から垣間見える、シャープの製品戦略を解説する。

「特別なモデル」を無理に発表しなかった判断

AQUOS sense10はスタンダードモデルに位置づけられる。

シャープ「AQUOS」の現行シリーズは、エントリーモデルの「wish」、スタンダードモデルの「sense」、ミッドハイモデルの「R」、そしてフラッグシップモデルの「R pro」の4つだ。

ミッドレンジモデルとハイエンドモデルのみをラインナップするスマートフォンメーカーもある中で、各価格帯に端末をそろえていることがシャープの強みの1つでもある。

しかし、今回の発表会の質疑応答では、「今年度のAQUOSシリーズ(の発表)はこの端末(sense 10)で最後」との回答があり、「R pro」シリーズの次期モデルは発表されなかった。

2024年に発売されたフラッグシップモデルの「AQUOS R9 pro」。

「R pro」シリーズ新端末の登場を期待していたファンにはやや期待外れの発表会になったが、企業にとってのフラッグシップモデルの存在意義をここでもう一度考えてみたい。

最近ではスマートフォンの性能が底上げされてきており、一般的な使い方であれば、スタンダードモデルやミッドハイモデルでも大半の人が満足できる。だから、「普通に使えればいい」人にとって、あえてフラッグシップモデルを選ぶ理由は薄い。

そして、2024年に発売されたフラッグシップモデルのAQUOS R9 proは、チップセットの「Snapdragon 8s Gen 3」で、最新チップではないが、背面カメラにドイツの老舗カメラメーカー・ライカが監修した「ズミクロンレンズ」を採用するなど、まだまだ現役で活躍できるスペックだ。

シャープの通信事業本部で本部長を務める中江優晃氏は、「R pro」シリーズを「我々にとって非常に特別なモデル」と強調する。

「携帯電話がカメラを搭載して大きく変わっていったように、スマートフォンがまた少し大きな変革の時期を迎えているのではないか(と思っています)。そこに対してふさわしいpro(モデル)というのはどういうものなのかを考えて、目下検討中という状況です」(中江氏)

新モデルを毎年出すことで幅広い人にアプローチしたいスタンダードモデルとは異なり、フラッグシップモデルはいわばシャープの「とっておきの技術」をお披露目するためのモデル。よって、無理をして今回発表する必要はないという判断に至ったのだろう。