「Siri AIはほぼGemini」は大きな間違い。WWDC 26現地で分かったアップルの独自性と社会課題

アップル本社内にあったWWDCのロゴ。

アップルは6月8日(現地時間)、年次開発者会議「WWDC 26」を、アメリカ・カリフォルニア州クパティーノにある本社社屋で開催した。

2026年の基調講演のテーマは、多くの人にとって自明だった。2024年に発表しつつ、多くの機能が公開されないまま再開発に至った「Apple Intelligence」と「改良されたSiri」の再始動である。

開発者に幾度となく「ありがとう」と話す、ティム・クックCEO。

そして今回は、2011年8月以来CEO(最高経営責任者)を務めてきたティム・クック氏の、CEOとしての最後の舞台でもある。

基調講演前に「前説」に登壇したクック氏は、会場にいる多数の開発者たちに、何度も繰り返し「ありがとう」と述べていたのが印象的だ。

そんな、クック氏のCEOとしての最後のテーマとなった「AIの再始動」がどう語られたのか、現地からレポートしてみよう。

WWDC 26・最大の柱は「Siri AI」

毎年、WWDCの発表は「デバイスごとに新OSの特徴を発表する」形で行われてきた。

だが、2026年はそうではない。スタートして早々に「3つの柱」を発表、細かな機能よりもそれらを優先することが明確にされた。

今回の新OSの柱は「プラットフォーム改善」「信頼性と安全」そして「Apple IntelligenceとSiri」だ。

その中でも主軸となったのはApple Intelligenceによって再構築されたAIアシスタント「Siri AI」だ。

技術的な部分ではなくできることに注目すると、話としてはそこまで目新しくはない。

音声で対話してパーティーの準備をしたり、メールの代筆をしてもらったり、という機能は他のスマホにもある。そもそも2年前にApple Intelligenceを発表したとき、「できる」とされていた機能だ。

音声や文章での命令に合わせ、質問に答えたり作業を行ったりする。それ自体は最近では珍しくない。

ただ違うのは「自分の状況を把握し、何を見ながら命令しているのか」という情報を前提にして目的を達成することだ。

例えば、メール代筆なら、過去の対話履歴から、相手が親しい友人なのか会社の上司なのかを把握し、内容を書き分ける。

パーティーの準備なら、友人とのチャットだけでなく、過去に娘との会話で出てきたドリンクについて聞いて、それを準備する。

Siri AIのイメージ。デバイスの周りにAI基盤があり、さらに「社会や個人の理解」、さらに命令調停(オーケストレーション)があり、外縁にSiriとアプリがある。

こういったAIの動作は、iPhoneや自分のMacの中に入っている「個人的な情報」「情報から生まれる個人的文脈」があって、はじめて上手くいくものでもある。そのための機構が、デバイスを中心として構成されている。

グーグルと協力関係にあるが「Geminiではない」

アップルはここで、iPhoneやMac、iPadなど、自分の持っているデバイスの中で処理を完結する「オンデバイス処理」にこだわっている。

ネットワーク上にデータを送ると、それが蓄積されて使われるという、プライバシー上の懸念が払拭し難い、と考えているからだ。

2年前のつまづきは、オンデバイス処理とAIの能力がマッチしていなかったことにある。間違いやハルシネーションが起きやすく、目指す正確さに達しなかった。

開発者が集まるWWDCの基調講演会場。

そこでアップルは、1月にグーグルと提携して「Gemini」(ジェミニ)の使用権を得た。それをベースにApple Intelligenceを作り直すことになった。

「ではGeminiと同じであり、Androidと差がないのではないか」

そう思う人もいそうだが、そうではない。

アップルのソフトウェアエンジニアリング担当シニア・バイスプレジデントであるクレイグ・フェデリギ氏は、基調講演後に記者向けに開催された技術説明会で、次のように明確に答えている。

「グーグルが顧客に展開しているモデルや、モデルを展開するためのインフラストラクチャは一切使用していない」

「iOSを動かす上で、Geminiアプリなどのクライアントコードは全く含まれていない

アップルのソフトウェアエンジニアリング担当シニア・バイスプレジデントであるクレイグ・フェデレギ氏。

すなわち、グーグルと提携はしてGeminiを使っているが、「グーグルがサービスとして提供するGemini」でもなければ、「Androidで使われるGemini」でもないのだ。

では、なぜグーグルと提携したのか? 理由は使い方にある。

アップルは、自社OSの中に独自のオンデバイスAIを搭載している。これの学習にはGeminiが使われ、実質的な技術協力によってAIモデルが作られている。

だが、できあがったAIモデル(Apple Foundation Models、AFM)自体はアップル独自のものだ。