メンバーが脱退しても返金不可? K-POPファンクラブ規約に韓国当局がメス、問われる“ファン軽視”の構図

K-POPファンの多くは、コンサートのチケットを取りやすくしたり、限定コンテンツを見たりするために、有料ファンクラブに加入する。

今回、そのファンクラブのルールに“不公平な内容”が含まれているとして、韓国当局が見直しを求めた。

一見すると、単なる「返金ルールの見直し」にも見える。

だが、問題になった条項を見ていくと、エンタメ企業とファンの関係が、いかに企業側に大きく傾いていたかが浮かび上がる。

ファンはお金を払っている。にもかかわらず、一部のエンタメ企業やファンダムプラットフォームは、「加入から7日が過ぎたら返金不可」「一部でも特典を使えば返金不可」「メンバーの追加・脱退・交代などでコンテンツ提供に変更が生じても返金不可」といった規約を置いていた。

ファンは、対等な“消費者”として扱われていたのか。それとも、「推しのためなら不利益も受け入れる存在」と見なされていたのか。

「7日を過ぎたら返金不可」は通用しない

韓国公正取引委員会は6月10日、K-POPファンクラブの有料メンバーシップを運営する計24社の利用規約を審査し、不公正と判断された約款条項を是正したと明らかにした。

対象となったのは、BIGHIT MUSIC、PLEDISエンターテインメント、SMエンターテインメント、YGエンターテインメント、STARSHIPエンターテインメントなどのエンタメ企業18社と、Weverse Company、カカオエンターテインメント、CJ ENMなどのファンダムプラットフォーム6社だ。

「7日を過ぎたら返金不可」は通用しない, メンバーが変わっても返金不可?, サービス変更や投稿削除も対象に, ファンは“黙って従う存在”ではない

(写真提供=SMエンターテインメント)​​​​​​

今回の措置で最も大きな焦点となったのは、返金をめぐる条項だ。

一部の事業者は、ファンクラブ有料メンバーシップに加入してから7日が過ぎた場合や、メンバーシップ専用コンテンツの閲覧、先行予約の機会など一部の特典を利用した場合、返金を認めない規約を置いていた。

例えば、BIGHIT MUSICの規約には、メンバーシップ加入後7日を超えた場合、またはメンバーシップ利用者にだけ提供される特典を利用した場合には返金できないという趣旨の条項があった。

STARSHIPエンターテインメントも、決済日の翌日から7日間は取り消しができるが、一部でも特典を受けた場合は返金不可とする規約を置いていた。

これに対し、公正取引委員会は、一定期間が過ぎた、または一部サービスを利用したという理由だけで返金を全面的に制限するのは、利用者に過度な負担を負わせるものだと判断した。

ファンクラブの特典は、一般的なサブスクリプションサービスのように、毎月一定量が提供されるとは限らない。アーティストの活動計画や加入時期によって、受けられる特典には差が出る。コンサート先行予約の機会がある時期に加入した人と、活動が少ない時期に加入した人では、実際に得られるメリットが違うこともある。

にもかかわらず、これまでは「入った以上、返金できない」とされるケースがあったわけだ。

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(写真提供=OSEN)

公正取引委員会は、こうした規約が実質的に加入費全額を違約金として徴収する結果を招くと見た。

是正後は、加入日から7日以内で利用履歴がない場合、全額返金が可能になる。7日が過ぎた場合や一部利用履歴がある場合でも、通常加入費の10%程度とされる違約金や、特典別または経過期間に応じた利用金額を差し引いたうえで、残額を返金する方向に変わる。

これは、ファンにとって小さな変化ではない。人気アーティストのファンクラブは、単なる応援の証ではなく、コンサートやファンミーティングの先行予約、メンバーシップ限定コンテンツ、限定グッズ購入などと結びついている。特にK-POPでは、ファンクラブ加入が公演チケットを手に入れるための事実上の入口になることも多い。

つまり、ファンは「入りたいから入る」だけでなく、「入らなければ機会を逃すかもしれない」という状況のなかで加入する。

そのうえで、思ったような特典が受けられなかったり、状況が変わったりしても返金できないとすれば、企業側に大きく傾いた仕組みになってしまう。

メンバーが変わっても返金不可?

今回の是正で特に象徴的なのは、アーティストのメンバー変更に関する条項だ。

韓国メディアによると、YGエンターテインメントの規約には、アーティストを構成する個別メンバーの追加、脱退、交代などによって、利用者に変更後のメンバーに関するコンテンツを提供できない場合でも、返金できないという趣旨の条項があった。

公正取引委員会は、これも問題だと判断し、該当条項を削除するよう求めた。

この条項は、K-POPファンクラブの本質を考えるうえで象徴的だ。

「7日を過ぎたら返金不可」は通用しない, メンバーが変わっても返金不可?, サービス変更や投稿削除も対象に, ファンは“黙って従う存在”ではない

(写真提供=OSEN)

ファンは、ただ漠然と会社のサービスにお金を払っているわけではない。特定のグループ、特定のメンバー、特定の活動を応援するために加入している。メンバーシップ限定コンテンツも、先行予約の価値も、ファンにとっては「誰を見られるのか」「どのグループを応援できるのか」と切り離せない。

にもかかわらず、メンバーが脱退したり、構成が変わったりして、当初期待していたコンテンツが提供されなくなっても「返金不可」とするなら、ファンだけが不利益を受けることになる。

もちろん、アーティスト活動には予測できない変化もある。メンバーの脱退や活動中断、契約終了がすべて企業の一方的な責任とは言い切れない場合もある。

それでも、少なくとも企業側の管理領域に関わる可能性がある変化についてまで、一律に「返金不可」とするのは、ファンにとって不公平だという判断が示されたことになる。

ここに、今回の是正措置の本質がある。

ファンは推しを応援したいからこそ、お金を払う。しかし、その愛情を理由に、企業側が一方的な条件を押しつけていいわけではない。

K-POPファンクラブの規約には、これまで「ファンなら受け入れるはず」という前提が少なからずあったのではないか。今回の措置は、その前提を見直すきっかけになりそうだ。

サービス変更や投稿削除も対象に

公正取引委員会が問題にしたのは、返金規定だけではない。

一部の規約では、「経営上の理由」など抽象的な理由だけで、メンバーシップサービスを変更または中断できるようになっていた。これについても、会社の分割・合併、営業譲渡・廃止、事業終了、アーティストの専属契約終了など、変更や中断の理由を具体化するよう是正された。

また、顧客の権利や義務に重大な変更が生じる場合には、事前に個別通知する方向になる。

「7日を過ぎたら返金不可」は通用しない, メンバーが変わっても返金不可?, サービス変更や投稿削除も対象に, ファンは“黙って従う存在”ではない

(写真提供=OSEN)

事業者の責任を過度に免除する条項も問題視された。アーティストのメンバー脱退や交代、第三者による不正アクセス、サービス障害などに関して、事業者が一律に責任を負わないとする規約は、削除または修正される。

さらに、ファンコミュニティの投稿削除に関する条項も見直し対象となった。

事業者が自社の判断だけで投稿を一方的に削除できるような規約については、削除理由を具体化し、違法行為や重大な被害が予想される場合などに限る方向で是正される。事後通知や異議申し立ての手続きも求められる。

つまり今回の措置は、単に「返金できるようになった」という話ではない。ファンクラブの運営、サービス変更、責任の範囲、投稿管理、利用制限まで含めて、エンタメ企業とファンの関係そのものを見直すものといえそうだ。

ファンは“黙って従う存在”ではない

K-POPファンクラブは、かつてのような単純な応援組織ではなく、まぎれもない有料サービスだ。ファンは加入費に加え、アルバム、グッズ、公演チケット、オンラインコンテンツにもお金を使う。

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(写真提供=STARSHIPエンターテインメント)

いわゆる「ファンダム経済」がK-POP産業の大きな柱となるなかで、ファンは企業にとって重要な収益基盤になっている。

だからこそ、企業側がファンを「推しのためなら我慢する存在」として扱うような構図は、もはや見過ごされにくい。

今回の是正措置は、K-POP業界がファンの愛情に甘えてきたとも見える部分を、韓国当局が問題化した出来事に近い。一度加入したら返金しにくく、サービス内容が変わっても企業側の責任が限定される。そうした一方的な関係に、明確な歯止めがかかったといえる。

もちろん、今回の是正措置は韓国での話だ。日本のファンクラブ規約や日本向けメンバーシップが直ちに変わるわけではない。

それでも、K-POPファンクラブは国境を越えて運営され、日本のファンも韓国発のプラットフォームやメンバーシップを利用している。韓国で「ファンだからといって一方的な条件を受け入れなくてよい」という基準が示された意味は小さくないだろう。

推しを応援したい気持ちを理由に、不公平な条件まで受け入れる必要はない。ファンは“黙って従う存在”ではないのだ。

K-POP市場が世界に広がるほど、企業とファンの関係にも、より公正で透明なルールが求められている。

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