【6月支払い分から年金増額】これから65歳に到達する人へ。老後の年金は《請求しないと1円ももらえない》
- 【年金制度の基本】2階建て構造の仕組みと全体像を整理
- 【60〜65歳】受給開始前に生じる空白期間と例外ケースの整理
- 例外ケース①経過措置としての「特別支給の老齢厚生年金」
- 例外ケース② 自ら選ぶ「繰上げ受給」
- 【65歳到達時】請求書が届いた後に必要となる対応の流れ
- ① 初めて年金を請求するとき
- ②「特別支給の老齢厚生年金」を受給中の人が65歳になったとき
- 要注意!提出期限と時効
- 【事前確認】手続き前に押さえておきたい重要なチェックポイント
- 請求書の内容は必ず確認!稀に誤っているケースも……
- ポイント2:記入ミスが支給遅れにつながることも
- ポイント3:不明点は明らかにしておこう
- 【年金請求の注意点】手続き遅れや記入ミスにみられる具体的な事例
- ケース1:提出のタイミングを誤り、受付されない
- ケース2:書類の差し戻しに気づかず手続きが止まる
- ケース3:窓口・郵送・電子申請の違いを理解していない
- ケース4:手続き完了から振込までのタイムラグを想定していない
- ケース5:複数の手続きを同時に進めて混乱する
- 【申請主義の基本】受給の原則と電子申請の進め方
- 老齢年金請求書の「電子申請」が利用できないのはどんなケース?
【手続き前】年金請求で慌てないための確認ポイント。届いた請求書はどうする?「電子申請」が利用できないケースも解説

【6月支払い分から年金増額】これから65歳に到達する人へ。老後の年金は《請求しないと1円ももらえない》
もうすぐ6月15日、2026年度(令和8年度)の改定額が反映された「今年度初めての年金支給日」がやってきます。

出所:日本年金機構「令和8年分からの年金額等について」
今年度の年金額は、昨年度から国民年金が1.9%、厚生年金が2.0%の引き上げ(プラス改定)となり、増額された年金の振り込みを心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。
このように「年金がいくら増えるのか」といった金額の話題には目が行きがちですが、実は年金を受け取るうえで絶対に忘れてはいけない大前提があります。それは、年金は年齢がくれば自動的に振り込まれるものではなく、受給を始めるためには「本人による最初の手続き(年金請求)」が必要だということです。
日本の公的年金は「申請主義」が採用されており、たとえマイナンバーに公金受取口座を登録していても、「年金請求書」を提出しない限り支給は開始されません。とくに65歳は制度上の大きな節目となるため、適切なタイミングで手続きを行うことが重要になります。
また、すでに60歳台前半で「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っている場合でも、65歳到達時に改めて切り替えの請求(はがき等の提出)が必要となるケースがあり、対応を見落とすと年金の支給が一時的に止まってしまう可能性があります。
本記事では、公的年金制度の基本的な構造を整理したうえで、老齢年金の請求時に見落とされがちなポイントや、具体的な手続きの流れについて分かりやすく解説していきます。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【年金制度の基本】2階建て構造の仕組みと全体像を整理

年金制度の「2階建て構造」
日本の公的年金制度は、一般に「2階建て構造」と呼ばれています。まずはその基本を確認しておきましょう。
・1階部分:国民年金 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象です。
・2階部分:厚生年金 会社員や公務員などが、国民年金に上乗せする形で加入します。
いずれも原則として支給開始は65歳です。受給資格(保険料納付済期間が10年以上など)を満たしていれば、
・国民年金のみの加入者 … 「老齢基礎年金」
・厚生年金加入者 … 「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」
という形で受け取ることになります。
【60〜65歳】受給開始前に生じる空白期間と例外ケースの整理
保険料の納付は通常60歳で終了しますが、年金の受給開始は原則65歳です。そのため、60歳から65歳までは年金を受け取らない期間が生じます。この期間は一般に「待機期間」と呼ばれます。
ただし、いくつかの例外があります。
例外ケース①経過措置としての「特別支給の老齢厚生年金」
かつて厚生年金の支給開始は60歳でしたが、制度改正により段階的に65歳へ引き上げられました。現在は原則65歳開始となっています。
その移行措置として、一定の生年月日以前に生まれた人は、65歳まで「特別支給の老齢厚生年金」を受給できます。
・男性:1961(昭和36)年4月1日以前生まれ
(※最後に対象となる昭和36年生もすでに受給開始年齢(64歳)に達しているため、現在では受給期間が終了しています)
・女性:1966(昭和41)年4月1日以前生まれ
(※男性より5年遅れて引き上げが進んでいるため、現在も受給開始の対象者が多く存在します)
さらに、
・老齢基礎年金の受給資格期間(10年以上)を満たすこと
・厚生年金保険等に1年以上加入していること
・生年月日に応じた受給開始年齢に到達していること
といった条件も必要です。
なお、実際の開始年齢は性別と生年月日により異なります。
例外ケース② 自ら選ぶ「繰上げ受給」

繰上げ受給の減額イメージ
65歳より前に受給を始める方法として「繰上げ受給」があります。
希望すれば受給開始を前倒しできますが、1カ月早めるごとに0.4%(最大24%)年金額が減額され、その割合は一生続きます(※)。
※1962(昭和37)年4月1日以前生まれの方は、1カ月あたり0.5%(最大30%)の減額。
早く受け取れるというメリットがある一方で、将来にわたって年金額が減る点には注意が必要です。
【65歳到達時】請求書が届いた後に必要となる対応の流れ

年金請求書見本
年金受給の手続きで中心となるのが「年金請求書」です。基礎年金番号や氏名などが印字された状態で、日本年金機構から郵送されます。
① 初めて年金を請求するとき
・届く時期:65歳(または特別支給の開始年齢)に到達する3カ月前
・提出時期: 誕生日の前日(受給権発生日)以降
・提出先: 年金事務所、または「街角の年金相談センター」
提出が完了してはじめて支給手続きが進みます。
②「特別支給の老齢厚生年金」を受給中の人が65歳になったとき
すでに「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っている人は、65歳到達時に「本来の老齢年金」へ切り替わります。そのため、改めて請求手続きが必要です。
・届く時期: 65歳の誕生月の初旬(1日生まれは前月初旬)
・提出時期: 誕生日の前日以降
・提出先: 日本年金機構本部へ郵送(または電子申請)
提出を忘れると、一時的に年金の振り込みが止まることがあるため注意が必要です。
要注意!提出期限と時効
適切なタイミングで受給を開始するためには、誕生月の末日まで(1日生まれの人は前月末日まで)に提出するのが目安とされています。
期限を過ぎても受給権が消えるわけではありませんが、手続きが遅れると支給開始も遅れる可能性があります。
また、年金の受給権には原則5年の時効があります。請求書が届いたまま放置せず、内容を確認して確実に提出することが重要です。
【事前確認】手続き前に押さえておきたい重要なチェックポイント
ここまで見てきたように、公的年金の受給を開始するためには本人による請求手続きが必要ですが、書類の不備や確認不足があると、支給開始が遅れるケースもあります。
請求書の内容は必ず確認!稀に誤っているケースも……
日本年金機構から「年金請求書」が届いた時点では年金の受給はまだ開始していません。請求書を提出して初めて、支給手続きが進みます。
前章でも紹介しましたが、ここに記載の
・氏名
・生年月日
・基礎年金番号
・年金の加入記録
については必ず確認するようにしましょう。とくに転職歴が多い人や、結婚などで姓が変わった経験がある人は、加入期間に漏れがないか丁寧に確認しておきましょう。実際に誤っているケースも報告されているため、「公的書類だから間違いがないはず」という思い込みをせず、自身で確認することが重要です。
もし誤りや不明点がある場合は、提出前に年金事務所で相談することが必要です。
ポイント2:記入ミスが支給遅れにつながることも
年金請求の手続きで意外と多いのが、振込口座の記入ミスです。
金融機関名や支店名、口座番号などに誤りがあると、支給決定後の振り込みに支障が出る場合があります。通帳やキャッシュカードを確認しながら、正確に記入することが重要です。
また、配偶者がいる場合は加給年金の対象になるかどうかも確認しておきたいポイントです。条件を満たしていても、必要な申告が行われなければ年金額に反映されない可能性があります。
ポイント3:不明点は明らかにしておこう
書類の書き方や制度の内容で分からない点がある場合は、年金事務所や「ねんきんダイヤル」に相談することができます。
事前に確認しておくことで、書類不備や再提出を防ぐことにつながります。「よく分からないから」と放置してしまうと、結果的に受給の遅れにつながる可能性があります。
節目の年齢を迎えたら、早めに内容を確認し、余裕を持って手続きを進めることが安心につながります。
【年金請求の注意点】手続き遅れや記入ミスにみられる具体的な事例
事前に確認すべきポイントはご紹介しましたが、「手続きの進め方」や「タイミングの認識」に起因してミスをしてしまいがちなケースも少なくありません。
ここでは、実務の流れの中で起こりやすい典型的な失敗を整理しておきます。
ケース1:提出のタイミングを誤り、受付されない
年金請求書は、提出できるタイミングが決まっています。受給権が発生する前に提出してしまうと、正式な受付とならず、再提出が必要になることがあります。
この場合、本人は「すでに手続きを済ませたつもり」でも、実際には処理が進んでおらず、結果的に支給開始が遅れる要因となります。
ケース2:書類の差し戻しに気づかず手続きが止まる
提出後に不備が見つかった場合、日本年金機構から照会や差し戻しの連絡が行われます。しかし、この通知に気づかなかったり、対応が遅れたりすると、その時点で手続きは止まったままになります。
特に郵送手続きでは、「提出した=完了」と思い込みやすく、進捗確認をしないまま時間が経過するケースも見られます。
ケース3:窓口・郵送・電子申請の違いを理解していない
年金請求は複数の方法で行えますが、それぞれで必要な手順や対応範囲が異なります。
たとえば、窓口ではその場で確認・修正ができる一方、郵送や電子申請では不備があった場合にやり取りの往復が発生します。この違いを理解せずに手続きを選ぶと、結果的に処理が長引く原因になります。
電子申請については次の段落で詳しくご紹介していきます。
ケース4:手続き完了から振込までのタイムラグを想定していない
請求書を提出してから実際に年金が振り込まれるまでには、一定の審査期間があります。
この期間を考慮せずに資金計画を立てていると、「手続きは終わっているのに入金がない」という状態に不安を感じることがあります。特に退職直後などは、資金繰りに影響する場面もあります。
ケース5:複数の手続きを同時に進めて混乱する
年金請求のタイミングでは、健康保険や介護保険、税に関する手続きなども重なることがあります。
これらを並行して進める中で、書類の管理や提出先の整理が不十分になると、どの手続きが完了しているのか分からなくなるケースも見られます。その結果、年金手続きの対応が後回しになってしまうことがあります。
これらの失敗は、内容の理解不足というよりも、「手続きの流れを把握していないこと」から生じるものです。
年金請求は一度の提出で終わる単純な作業ではなく、提出前後の流れも含めて完結する手続きです。全体の進行を意識しながら進めることが、スムーズな受給開始につながります。
【申請主義の基本】受給の原則と電子申請の進め方
受給の流れを理解したら、次に確認しておきたいのが「どの方法で請求するか」です。
近年は、窓口や郵送に加えて、オンラインによる手続きにも対応しています。
日本年金機構から届く老齢年金請求書(事前送付用)に「電子申請のご案内リーフレット」が同封されている場合、マイナポータルを利用した電子申請が可能です。自宅から手続きを完了できる点が大きな特徴です。
電子申請に必要なものは次のとおりです。

老齢年金請求書「事前申請に必要なもの」
・スマートフォン(※またはパソコン)
・マイナンバーカード
・マイナンバーカードのパスワード(2種類)
・マイナポータルアプリ
パソコンを使用する場合は、マイナンバーカードを読み取るための機器が別途必要です。操作手順は日本年金機構のホームページでPDFや動画により確認できます。事前に流れを把握しておくと、手続きがスムーズに進みます。
老齢年金請求書の「電子申請」が利用できないのはどんなケース?
案内リーフレットが同封されていても、すべての人が電子申請を利用できるわけではありません。次のような場合はオンライン申請の対象外となります。
・「公金受取口座」以外の口座で年金の受け取りを希望する方
・別居、内縁または年収が850万円以上の配偶者がいる方
・別居等の18歳以下(障害状態にある場合は20歳未満)の子がいる場合
・住民票住所と異なる住所を通知書等の送付先とする方
・成年後見人等が本人に代わって請求する方
・すでに他の年金を受け取っている方
・年金を本来より早く受け取ること(繰上げ請求)を希望する方
・年金を本来より遅く受け取ること(繰下げ請求)を希望する方
これらに該当する場合は、紙の請求書による手続きが必要です。年金事務所や街角の年金相談センターでの窓口手続き、または郵送で対応します。
なお、電子申請が利用できる期間は受給権が発生する誕生日の前日から10カ月以内です。この期間を過ぎるとオンライン申請は利用できません。
一方、紙の請求書には明確な提出期限は設けられていません。ただし、年金には原則5年の時効があります。請求が遅れると受給漏れにつながる可能性があるため、手続きはできるだけ早めに行うことが大切です。
参考資料
・日本年金機構「令和8年分からの年金額等について」
・日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金を受給するときの手続き」
・日本年金機構「65歳時の年金の手続き(特別支給の老齢厚生年金を受給している方)」
・日本年金機構「これから老齢年金を受給する方へ」
・日本年金機構「老齢年金請求書の記入方法等」
・日本年金機構「年金の繰上げ受給」
・日本年金機構「老齢年金請求書の電子申請ができる期間を教えてください。」
・日本年金機構「電子申請かんたんガイド(老齢年金請求書)」
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