富士通の営業利益がほぼ倍! 生産性が「100倍」に? AIがもたらすSIerの現場革命を元機関投資家が語る
【富士通】売上は微増、しかし利益は「ほぼ倍」という驚異の決算

富士通の営業利益がほぼ倍!生産性が「100倍」に?AIがもたらすSIerの現場革命を元機関投資家が語る
富士通は、企業や官公庁のシステム構築・運用を請け負う「SIer(システムインテグレーター)」と呼ばれる業界の大手企業です。
日立製作所やNECなどと並び、日本のITインフラを支える重要なポジションにあります。
「システム開発」という労働集約型のビジネスモデルを展開する同社ですが、直近の決算では売上高が前年同期比1.8%の微増にとどまったにもかかわらず、営業利益がほぼ倍増するという驚異的な数値を叩き出しました。
一体なぜ、売上が横ばいの中でこれほどまでに利益を激増させることができたのでしょうか。
この秘密について、元機関投資家の泉田良輔氏がYouTubeチャンネル「イズミダイズム」にて解説しました。
富士通の事業構造と財務体質を分析することで、業績好調の本当の理由を見ていきましょう。
ココがポイント
・売上微増の中で営業利益が約2倍に急拡大した「魔法のような」決算のカラクリ
・原価と販管費の削減を両立させた、生成AI活用による劇的な生産性向上の実態
・AI時代におけるSIerのビジネスモデルの変化と、新卒採用停止の背景
・国産半導体メーカー「ラピダス」への出資から読み解く、最終製品の重要性
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【富士通】売上は微増、しかし利益は「ほぼ倍」という驚異の決算
日立製作所やNECと並び、日本のシステムインテグレーター(SIer)の代表格として企業のIT化を支える富士通は、日本のITインフラを支える重要なポジションにあります。
インタビュワーから直近の決算について尋ねられると、泉田氏は2026年3月期第3四半期(9ヶ月累計)の決算数値を提示しました。
これによると、売上収益は2兆4511億円で前年同期比プラス1.8%と、わずかな増収にとどまっています。
一方で、営業利益は2110億円で前年同期比プラス99.4%とほぼ倍増。さらに、最終的な儲けを示す親会社所有者帰属当期利益は3436億円で、前年同期の880億円からプラス290.3%です。
なんと約4倍にまで膨れ上がっていることがわかります。

売上微増・利益倍増の驚異的な決算ハイライト
売上が劇的に伸びているわけではないのに、利益だけが倍増している現象について、泉田氏は損益計算書(PL)の中身を詳しく見ていく必要があると指摘します。
利益倍増のカラクリをPL(損益計算書)から読み解く
企業の利益は、売上から「原価(サービスを提供するための直接的なコスト)」や「販管費(販売費及び一般管理費:人件費や広告宣伝費など)」を差し引いて計算されます。
泉田氏は、富士通の損益計算書に現れた「異変」に注目しました。
「売上が増えてるのに原価が減ってますね。売上が増えて原価下がるって、そんなことなかなかないですよ」
泉田氏が驚きをもって語る通り、前年同期の売上原価が1兆6332億円だったのに対し、今期は1兆5987億円へと減少しています。
通常、売上が増えればそれに伴って原価も増えるはずですが、富士通は原価を抑え込むことに成功しているのです。
その結果、売上から原価を引いた「粗利(売上総利益)」は、前年同期の7747億円から8524億円へと大幅に増加しています。
さらに驚くべきは販管費の動きです。前年同期の6551億円から今期は6441億円へと、こちらも減少しています。この状況について、泉田氏は「相当工夫してるか、テクノロジーの関与か」と推測します。
泉田氏は、原価と販管費が同時に減少しているという事実から、富士通の内部で何らかの劇的な構造変化が起きていると分析しているのです。
このコスト削減効果が積み重なった結果、営業利益が前年同期の1058億円から2110億円へと倍増する結果につながりました。
グロスマージン(粗利率)改善を支える「3つの要因」
では、具体的にどのような「工夫」や「テクノロジーの関与」があったのでしょうか。泉田氏は、富士通の「グロスマージン(粗利率)」が年々改善しているトレンドに注目します。
決算説明会資料によると、富士通のグロスマージンは2023年度の32.0%から、2024年度には35.9%、そして今期(2025年度9ヶ月累計)には37.8%へと、年々着実に上昇しています。
たった1年で1.9%ポイントも改善しているのは、非常に大きな成果です。

富士通のグロスマージン(粗利率)推移
会社側は、この採算性改善の背景として大きく3つの要因を挙げています。
・開発プロセスの標準化による生産性向上
・生成AIの適用によるスピード向上と品質安定化
・人材ポートフォリオの最適化
SI(システムインテグレーション)案件は開発プロセスが長くなりがちですが、それを標準化・短期化するだけでも粗利は大きく改善します。
しかし、泉田氏が最も注目すべきポイントとして挙げたのが、2つ目の「生成AIの適用」です。
富士通は、国内のシステムエンジニア(SE)約3万人と協力会社に対して、「Chat AI for Project」という生成AIツールの利用環境を提供しています。泉田氏が資料を読み解いたところによると、その普及スピードは凄まじいものでした。
「国内プロジェクトのうち、第2四半期末での生成AIの利用は3割だったのに、第3四半期末にはもう6割になってる」
泉田氏はこのように述べ、富士通が開発の現場で急速にAIの実装を進め、それが直接的な粗利の改善につながっている実態を明らかにしました。
生産性が「100倍」に?AIがもたらすSIerの現場革命
AIを使うことで、システム開発の現場はどれほど変わるのでしょうか。泉田氏は、決算説明会におけるCFO(最高財務責任者)の非常に興味深い発言を紹介しました。
それによると、全工程でAIを適用してうまくいっているケースでは、従来「3人月(1人が3ヶ月かかる、あるいは3人が1ヶ月かかる仕事量)」かかっていた開発が、わずか3〜4時間で完了するなど、生産性が100倍近くに向上する結果が出ているというのです。
SIerのビジネスは下請け・孫請けといった多重構造になっていることが多いという指摘に対し、泉田氏もそれに同意します。
富士通は自社の社員だけでなく、協力会社(外注先)の現場にまでAIの利用環境を提供しています。
末端の作業までAIを活用し、フォーマットを統一して開発を進めることで、コミュニケーションロスを減らし、圧倒的な生産性の向上を実現しているのです。

生成AI活用によるSI事業の生産性革命
このAIによる生産性革命は、富士通の人材戦略にも大きな影響を与えています。富士通が新卒採用を停止し、通年採用に切り替えたというニュースが出ているのです。
これまでは、新卒を採用して現場で経験を積ませ、職人のように育てていくプロセスが必要でした。
しかし、AIがプログラミングの実作業を担えるようになった現在、求められるのは「AIに適切な指示(プロンプト)を出し、システム全体を設計できる人材」へと変化しています。
富士通の人材戦略の転換は、AI時代を見据えた合理的な判断だと言えます。
ラピダス出資から考える「最終製品」の重要性
動画の後半では、富士通を取り巻くもう一つの重要なトピックとして、次世代半導体の国産化を目指す「ラピダス」への出資について議論が交わされました。
ラピダスは、台湾のTSMCなどに依存している最先端半導体の製造を、日本国内で行うことを目指す「国策」とも言えるプロジェクトです。
富士通が半導体を設計し、ラピダスが製造するというサプライチェーンの構築が期待されています。
しかし、泉田氏はこのニュースに対して、機関投資家ならではの冷静な視点を提供します。
「やっぱり国内の最終製品で強いものをちゃんと選んで実装していかないと、国内で弱くて世界に持ってっても全然見向きもされない」
泉田氏が強調するのは、「チップを作るだけでは意味がない」ということです。どんなに高性能なAIチップを作っても、それを搭載して世界中で売れる「最終製品」や「サービス」がなければ、ビジネスとしては成り立ちません。
泉田氏は過去の失敗例として、日本の電機メーカー(ソニー、東芝など)とIBMが共同開発した「Cell(セル)」というチップを挙げました。
Cellはゲーム機(プレイステーション)に搭載されましたが、パソコン向けの汎用チップとして圧倒的なシェアと単価を誇ったIntel(インテル)のCPUには勝てませんでした。
ゲーム機はパソコンに比べて本体価格を高く設定しづらく、チップにかけられるコスト(利益率)に限界があったためです。
この教訓から、泉田氏は富士通がラピダスのチップを使って「どのような最終製品を生み出すのか」が重要だと指摘します。
富士通や日立製作所、NECといった国内SIerは、公共機関や自治体、防衛関連といった、海外メーカーが入り込みにくい領域で強みを持っています。
そうした国内の確固たる需要に対して、安全性の高い国産チップをどのように組み込んでいくのかが、今後の評価の分かれ目になりそうです。
まとめ:AIの進化と富士通の次なる一手
今回、泉田氏の分析によって、富士通の「売上微増・利益倍増」という決算の裏側には、生成AIの活用による劇的な生産性向上とコスト削減があることが明らかになりました。
AIの進化はSIerのビジネスモデルを根底から覆す脅威であると同時に、うまく活用すれば利益を爆発的に増やすチャンスでもあります。
富士通は現在、AIを味方につけて業績を大きく伸ばしていますが、今後AIによる自動化がさらに進んだとき、SIerという業態そのものがどう変化していくのか。そして、ラピダスとの協業を通じてどのような価値を生み出していくのか。
単なる決算の数字だけでなく、その背景にあるビジネスモデルの変革を読み解くことで、企業への投資判断はより深みを増していきます。
参考資料
・富士通株式会社「2026年3月期 第3四半期 決算短信」(2026年1月29日)
・富士通株式会社「2026年3月期 第3四半期 決算説明会資料」(2026年1月29日)
・富士通株式会社「2026年3月期 第3四半期 決算説明会 質疑応答」(2026年1月29日)
・Youtubeチャンネル「イズミダイズム」
※リンクは記事作成時点のものです。
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