「いつの間にか富裕層」がコツコツやっている「資産に大きな差を生む」投資手段

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長期・分散が常識の資産運用は、若いうちから始めるものだと思いがちだ。しかし、退職後の運用で「いつの間にか富裕層」になった人は少なくない。60代ならではの退職金を活かした資産運用を、プロが解説する。※本稿は、コンサルタントの竹中啓貴、荒井匡史、野口幸司『「いつの間にか富裕層」の正体 普通に働き、豊かに暮らす、新しい富裕層』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。
長い運用期間を味方に
つけられる若年層
われわれ生活者が「いつの間にか富裕層」(編集部注/近年の相場上昇の恩恵を受けて保有金融資産が急増した給与所得者)になるためには、どのようなことに目配りをするべきでしょうか。株式市場の上昇の恩恵を受ける上では、一定の金額を資産運用に回している必要があります。
その1つは月々のフロー所得(編集部注/都度発生する単発的な収入)などから、その一部を積み立てていく形です。高額なフロー所得がある、持ち家があり賃貸や住宅ローンにかかるお金を払わなくて済む、会社の持株会や確定拠出年金などの制度を活用するといったことが挙げられます。
もう1つはある程度まとまったお金を運用に回す形です。相続で遺産を受け継ぐ、企業年金(一時金)や退職金の受け取りがある、海外勤務などで集中的にお金が貯まる機会があるといったことが挙げられます。
ここでは、近年普及が進んでいる確定拠出年金(DC)に焦点を当て、ライフステージごとに資産形成のヒントを考えたいと思います。
まず、若い世代が認識しておきたいのは、DCでどの投資商品を選ぶかによって、将来の資産に大きな差を生む可能性があることです。
投資商品次第では、将来の資産額は2000万円から5000万円まで、数千万円単位で差がつくことも考えられます。
「いつの間にか富裕層」は、DC運用をうまく活用できた方々です。今後20、30年と運用期間が残されている若い世代にとっては、時間を味方につけることが強みになります。元本が保証された商品だけでなく、リスク性商品に投資配分を振り分けることも資産を大きく育てるための選択肢の1つとして考えられます。
資産はあるのに
家計が苦しい壮年層
次に、40~50代の壮年層が直面しがちなのは「資産はあるのに、家計が苦しい」という状況です。その最大の要因は、「教育費」と「住宅関連費」です。
教育費については、文部科学省の試算によれば、大学生が2人いる家庭では、可処分所得の半分近く(約44%)を教育費が占めるケースもあるとされています。これに加えて、住宅ローンがのしかかります。国土交通省の公表資料をみると、フラット35利用者の平均的な収入負担率は約23%となっています。
これらを単純に合算すれば、50代の家計は、収入の50%以上が教育費と住宅ローンで消えていく、という計算も成り立ちます。さらに、住宅購入から20年前後が経過すれば、リフォームなどのまとまった修繕費も必要になります。
問題は、こうした支出のピーク時には資産の多くが、すぐに現金化できない資産になっている可能性があることです。例えば、DCは、原則60歳まで引き出すことができませんし、持株会の株式も、相場の状況によっては売りたくても売れない、という事態も起こり得ます。そのためにも若いうちからマネープランをしっかり作っておくことが必要なのです。
子どもの進学、住宅のリフォーム、親の介護、そして自身のセカンドライフを考え、いつ、いくら現金が必要かを把握することが第一歩となります。その上でDCや持株会といった制度に頼るだけでなく、NISAなどを活用し、必要な時にいつでも引き出せる流動性の高い資産を計画的に積み立てておくことが有効です。
その他、DCの前払制度などを活用し、退職後の受け取りではなく、現役時代の給与に上乗せする形で先んじて受け取ることも、将来の選択肢を広げる1つの手段と言えます(注1)。
多くの人は退職金を得ると
資産運用をやめてしまう
壮年期の家計の課題を乗り越えると、次に訪れるのが退職という節目です。
多くの会社員は現役時代、仕事に集中するあまり、退職金というまとまった資産とどう向き合うか、じっくり考える機会が少ないのが実情です。とはいえ、人生100年時代と言われている今日においては退職後も資産運用によって資産を増やしていく期間としては十分と言えるでしょう。退職金を元手に運用することはこれまで以上に重要になってくるのです。
退職金の運用でまず直面するのは、企業年金や退職金の受け取り方の選択です。
一般的に(1)年金として受給する、(2)一時金として受給する、(3)年金と一時金を併給するという3つの受け取り方から選ぶことができます。厚生労働省によると、企業型・個人型DCともに9割程度が一時金を選択しています。これには住宅ローンの一括返済といったニーズや、退職一時金制度が先行して普及・慣行化した経緯があること、年金と一時金に対する社会保障制度や税制の違いがあること等、様々な要因があると指摘されています。
問題は、その後の資産の行方です。一時金としてまとまったお金を手にすると、そこで資産運用を終えてしまう人が少なくありません。
事実、株式・投信の保有率の時系列推移を年代別に見ると、NISAなどの普及により、若年層の保有率は増加傾向にありますが、70代以降の保有率は横ばいになっている傾向が見えます。
退職金を生活費ではなく
運用資金と捉えられるか?

同書より転載
今はまだ60歳定年の企業が多く、殆どの方は60歳というタイミングを一区切りに考えていると思います。そして、退職後は退職金というストックを元手に殖やしてくというのが従来の考え方でした。

『「いつの間にか富裕層」の正体 普通に働き、豊かに暮らす、新しい富裕層』 (竹中啓貴、荒井匡史、野口幸司 日経BP)
一方で、新しいシニア層の姿として、65歳、70歳、更には75歳になっても仕事に従事し、フロー収入を得ている方も少なくありません。もちろん現役時代に比べれば収入は減っているかもしれませんが、子供が独立したり、住宅ローンも完済している方はもしかしたら現役時代以上にフロー収入で資産が増えていくかもしれません。
また、直近は60代の株式・投信保有率は増加しており、60代でも資産を運用する人が増加していることが分かります。このような人はまとまった退職金の運用や、フロー収入をもとにさらに資産を増やすことが可能です。
退職金を得た後で、退職金を少しずつ取り崩して生活していくのか、それとも退職金に加えてセカンドキャリアで得られるフロー収入を元手に資産運用を続けていくのか。後者の選択肢を取ることで、60歳以降に「いつの間にか富裕層」になる可能性は十分にあり得るのです。
(注1)DC前払制では、給与に上乗せしてもらえる金額は課税対象のため、税金分目減りする点に留意(一時金や確定拠出年金は拠出、運用、給付面で税制面の優遇があり、前払い制より一般的な税制面の負担は軽くなる)。